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蛮勇の勇者

 勇者ダンのパーティに移籍したマヤは、ダンのパーティの末席として活動を開始することとなった。


 勇者パーティともなると、自ら探さなくても指名依頼に囲まれている状況だ。

言い方を変えると、こなさなけれないけないクエストに事欠かないとも言える。

クエストを探す手間はなくなるだろうが、責務は今までと比べ物にならない。


 しばらくして、帝都から少し離れたビッグウッドの森で魔物の討伐が行われることとなった。これから苦楽を共にしていく仲間について把握できるよい機会だ。それぞれの能力等を把握しておこう。


「このパーティでの約束だが、僕が前衛に立ち戦闘指示を出す。マヤは僕の指示に従って動けばいい」


「わかったわ。後方で支援を行いながら、ダンからの指示に従えばいいのね?」


「そういうことだ。これからよろしく頼む!」


「そうやで。ご主人さまはめっちゃ強いで」


「そうだがや。ご主人さまはどえりゃあすごいでいかんわ」


「ほうじゃ。ご主人さまはばりすげぇー」


 作戦会議と言える雰囲気ではないが、今までもずっとこの形で進撃を続けてきたようだ。ともかく、まずは各メンバーの能力を把握することにしよう。


――――


 ビッグウッドの森に入ったダン達一行は、ダンが先陣を切り魔物と対峙する。


ダンは勇者と呼ばれるだけあって、戦闘において比類のない圧倒的な才能を持っているようだ。相手が普通の魔物程度であれば戦闘において一切苦戦する様子がなく、常に先陣に立ち対峙する魔物はなすすべもなく屠られていく。


「私の前に立ちふさがるとは愚かな!愚かな魔物には死を!」


 まさに殲滅といった状況だ。他のメンバーは、倒した魔物の処理やドロップアイテム回収を進めていく。


「ご主人様、さすがやで。ごっついわぁ!」


 しかし、パーティ戦にも関わらずあまりパーティメンバーで協力している感じとは言えないようだ。何というか、気安く会話や相談などをするのが躊躇われる雰囲気というのか…。


 雑務や応援だけでは性に合わないマヤは、ついダンに対して上申してしまう。


「ところで、こんなハイペースな戦闘で大丈夫なの?ペース配分を考えて、戦闘も分担した方がよかったりしない?」


 そうしたところ、ダンの表情がにわかに不機嫌なものへと変化する。


「パーティのリーダーは僕だ。人に指図をする余裕があるなら、他にすべきことがあるんじゃないか?」


 これはまずいと思ったのか、フランソワーズがフォローのため割り込む。


「なに言っとるだで、マヤ。ご主人様、お許しください。後でマヤにちゃんと言っときますので」


「(ちょっ、そんなおかしなこと言ってないでしょう!まじですか…)」


 ダンのことだが、先ほどの戦闘スタイルから推測する限り、戦闘に特化したユニークスキル(神の祝福)を持っていると見受けられる。仮にマヤがダンと同じLVに辿りついたとしても、ここまで効率のよい戦闘は無理だろう。


 しかし、マヤは違和感が離れない。ダンは、自分の戦闘能力の高さに増長してしまっているようだ。つまり、他人を見下し仲間の話を聞かないで()()()()()()()()()に見受けられる。

仲間とはいえ、他人から指図をされることを非常に不愉快に感じているようだ。


 当然、他のパーティメンバーはダンの性格を知っている。おそらく、過去にいろいろなことがあったのだろう。今では、ダンに対して誰も意見をすることなく意見に従うことが当然の事となってしまっている。


 もしかすると、ダンはマヤと同じく異世界からの転生者、もしくは転移者なのではないか?ユニークスキル(神の祝福)に物を言わせて好き放題やってきて、増長しまくっているのかもしれない。


 勇者パーティに入ったことで少し浮かれていたが、このままではよくない。何か対策を考えないと。


――――


 ビッグウッドの魔物討伐から戻ったダン達一行は、しばしの休養期間となった。


しかし、冒険メンバーの顔色は優れないようだ。何か悩みがあるのかもしれない。訊ねてみよう。


「これから休養なのに、何だか顔色がすぐれないようね。何かあったの?」


「なんや。マヤはまだ知らへんのか。休養期間ちゅうても、うちらに仕事がない訳じゃあらへん」


「勇者パーティが羨ましいって言われとるけど、実態を知ったらがっかりよね…」


「休養期間の方がたいぎいけぇ…辛いのぅ」


 アイドルに憧れたファンと同じく、勇者のパーティに入りたい冒険者は山のように存在する。勇者パーティに加入して活躍すれば知名度はうなぎのぼりになり、一財産作ることも夢ではない。そんな買い手有利の状況なため、能力を重視してパーティメンバーを選んで行けば男性も混じるはずだ。

()()()()()()()()()になることはまず考えられないだろう。


 それなのに、ダンのパーティはダンを除き妙齢の女性ばかりが集まっている。そして、ダン自らがメンバーの勧誘を行っていた。その理由をちゃんと調べていなかったのはマヤの失敗と言えるだろう。


 もちろん、本人の能力を無視してメンバーを選んではいないだろう。

しかし、()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()ということだ。


「つまり、ダンのパーティは()()()()()()()()で、それ相応のことを期待されているってこと?」


「まぁ、そういうことや。別に奴隷のような扱いを受ける事はあらへんけど、ぎょうさんストレスがたまるわ」


 そんな話は初耳だ。なんでパーティ加入前に教えてくれなかったのだろうか。

いや、もう既にダンのDVに支配されていて、まともな意見を言うことができなかったのかもしれない。


「そんな話は聞いていないわよ。嫌ならパーティから脱退すればいいじゃない!」


「自分の意思だけで脱退できるんやったら、とっくに逃げ出したるわ」


「マヤも知っとると思うけど、パーティから離脱するためには、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』だがや。ダンは絶対認めん」


「うちらみんな騙されたけぇ。もう、やっとれんのぅ」


 このままではいろいろとまずい。勇者パーティ加入とは一体なんだったのか。

マヤは知略を巡らせ、現状の打破について考える必要に迫られることとなった。


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