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1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
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第2話「ケモっぽい幼女」その2

冒険者連中からハブられたケモロリっ子。何かワケありみたいだった。


そんなワケで俺達は町外れの大衆食堂に来た。

ギルド2階の食堂じゃ、さっきの騒ぎが早速ウワサになってるかも知れないからなぁ。

この子のコトを考えたら、この判断は正しいよな。


ここの大衆食堂にはラーメンもある。牛丼もある。カレーもある。

つまり残念だが、異世界モノ鉄板の『日本料理を食わせて感動させ尊敬される』イベントは

ここでは発動しない、というコトだ。


だが、ラーメンはあっても日◯屋や天◯一品は無い。

牛丼はあっても◯野家や◯き家は無い。

カレーはあってもココ◯チや◯ーゴーは無い。

この世界の食文化は、いわゆる『一品特化』をしていない様だ。

うむ、この辺りに異世界スキマ産業としての可能性がある気がしないでも無いな…。


「ご紹介しますね。こちらはケインさん。私はプリスといいます。」

「あ、ども。」

「…パトルっす…。」


しょーもないコトを考えてたら、プリスたんが仕切ってくれた。

しかも俺を最初に紹介して、シッカリと男を立ててくれている。

くぅ~~~~!!良い奥さんになれるぜ!プリスたん!


しばらくすると注文した料理が運ばれて来た。

俺は焼き魚定食、プリスはチャーハンセット。で、パトルは豚足だ。

コイツ…面白いチョイスだな。確かに獣人っぽいけどさ。


焼き魚定食にした理由は、最初はラーメンにしようとした俺をプリスが目配せで止めたのだ。

話が長くなりそうなのを見越して、伸びる麺類はやめとけというコトなのだろう。

どこまでも気配りが出来る幼女だ。逆にそこまで気が回らないオトナの俺。恥ずかしい…。


よし!ここまで来たら、もうプリスに丸投げしよう。

俺なんかよりよっぽど良いメンタルケアをしてくれるに違いない。何と言っても僧侶だしな。


ところが、食べ出してからもプリスはパトルに何も聞かない。

ただ黙々と食べ続け、時折、


「あ、これ美味しいですね。」

「こちらの餃子、おひとつどうですか?」


とか、そんな会話…にもならない言葉ばっかりだ。

大丈夫ですかプリスさん?良いんですかプリスさん?俺、信じてるんですけど?

パトルはパトルで、しょげた顔で豚足をかじり続ける。

…獣人のロリっ子がしょげた顔で豚足食う光景とか、初めて見たわ。


「……あのヒトたちのいってたこと、ホントなんす…。」


俺が不安に思ってソワソワしてきた時、パトルがポツリと語り出した。


「オイラ、なにやってもダメダメなんす…。」


あぁ、そうか!プリスはこうして向こうから切り出すまで待ってたのか!

かたくなに羽織った沈黙のコートを自分から脱ぐまで、何も言わず見守って優しく照らし続ける太陽!

これは『北風と太陽』的な作戦だったのか!


「詳しく聞かせて下さい。話せばそれだけでも気が楽になるかも知れません。」


そしてすかさず切り込む!くぅ~~~~!!プリスたん、スキが無い!


「オイラ、ぱーてぃーのみんながなにしてほしいのか、ぜんぜんわからなくてー。」

「…パーティーの皆さんに、何をして欲しいのか聞いたコトはありますか?」

「もちろんっす。なんどもきいたっす。でも

『それぐらい、じぶんでかんがえろ!いわれなきゃわかんねーのか!』っていわれてー…。」

「それで?」

「いっしょーけんめーにーかんがえたっす。でもオイラ、やっぱりわからなくてー、はやすぎたり、おそすぎたりー…。」


むむ? 何か、聞いてたら違和感出て来たな…。ちょっと俺も質問してみるか。


「えーっと、あの連中とはどれくらいの間、パーティー組んでたの?」

「きょうでみっかめだったっす…。」

「短かっ!何だそれ!?それで『言われなきゃ分かんねーのか!』とか無いだろ!

そんなんじゃ考えても分からないの、当たり前じゃないか!」

「はい。これは由々しき問題ですね。」


俺もMMORPGとかで痛感したけど、パーティーバトルはプレイヤー間の連携が肝だ。

互いの役割を事前にシッカリ決めて、作戦を立ててそれに従って行動する。

そしてイレギュラーが起きたら、すぐに報告して対処する。

攻撃して欲しいならその指示を出し、危なくなったら助けを呼ぶ。

基本中の基本だ。


それをあのパーティーはしてなかった。

多分、中途半端に慣れたメンバー同士だったんだろう。

カッコ付けて『ツーと言えばカー』『目と目を合わせれば分かる』とか、プロ振ってたんじゃないか?


会社の愚痴でもよくある、新入社員に『言われなきゃ何も出来ないのか?自分でそれくらい考えろ!』って言う上司だな。

あ、言っとくけど、俺はこういう上司の言葉が全て間違ってるとは思わない。

だけど、そういう高レベルなやり取りをこなすには、仲間の性格やクセを熟知した相当の『慣れ』が必要だ。

それを参入して間もない、右も左も判らないヤツに強要するのは間違ってる。


「パーティーってのは、互いをより深く知ってこそ本当の力が出せるんだ。それを…、」

「ケインさん…。」


いや、どれだけ慣れてたって、むしろ慣れていればこそ綿密なコミュニケーションは大切にするモンだ。

恐らく連中はパトルが望んでいる『ほう・れん・そう』が出来ていなかったんだろう。

くそう、何かムカッ腹立って来たぞ。


「パトル、俺達のパーティーに入ってみないか?」


俺は立ち上がってパトルにそう言った。

俺の予想が当たっていれば、パトルは決して役立たずじゃ無い。


「…いいんすか?で、でもオイラ、まためーわくかけちゃうかもっす…。」

「そんなの、やってみなけりゃ分かんないだろ?少なくとも俺は君を迷惑だとは思わない。」

「…う…うぅっ……、」


パトルの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。


「オイラ…オイラでいいんすね?」

「あぁ、お前を捨てた連中を見返してやろうぜ!」

「……あ、ありがとうっす!…ありがとうっすーー!!!」


パトルはブンブンと首がもげてすっ飛んで行くんじゃないかと思うぐらいに何度も頭を下げてくれた。

と、横を見るとプリスが満面の笑顔で俺を見ていた。


「え?何?」

「いえ、ケインさんならこうするだろうな、って思ってました。」


そう言ってプリスは、今度はハッキリと分かるほどに頬をピンクのブラシに染めていた。

うひゃ!胸にずっきゅーんて来るから!その顔、可愛い過ぎて危険だから!


「あらためて、オイラ、パトルってゆーっす!ぶきをつかったたたかいなら、まかせてほしーっす!」

「おぉ!自信タップリだな!」

「じゅーじんぞくは、どんなぶきでもつかえるっすよー!」

「マジか!」

「はい。聞いたコトがあります。獣人族は五感と運動神経が優れていて、

生まれた時から戦士として武器をオモチャ代わりにして遊び、育つんだそうです。」

「何それ、こわい。」

「野生のカンでダンジョンの中でも方向感覚を失わず、モンスターの気配にも敏感だと聞きます。

正に、これからの私達にピッタリのメンバーではないでしょうか。」

「獣人族、すっげー!」


俺が感心してパトルを見ると、さっき泣いてたカラスがもう笑ったみたいに、

パトルは豚足を勢い良く、骨ごとバリバリ食いまくっていた。


「これからよろしくっすー!おかわりー!!」


プリスがちょっと苦笑して付け加えた。


「…ただ、ちょっと食費がかさむのと、かしこさが低いのが難点だ…そうです。」

「はははは……。」


俺も引きつった笑いしか出ない。

うん、ロリケモがニコニコと山盛りの豚足を貪り食う光景も初めて見たわ。

でも、こっちの方が良い。女の子は笑顔が一番だ。


「では、宿に戻りましょう。今日からはパトルさんも一緒ですね。」

「え?プリスさん、何言ってんの?」

「パーティーに参加して最初のお仕事は、ケインさんのお身体をパトルさんと私の2人で拭いてあげるコトです。」

「おおおぉー!わかったっすー!どこもかしこもきれいにするっすよー!」

「待って、君達!」

「ケインさんも言ってました。互いをより深く知ってこそのパーティーだと。」

「いや、そのりくつはおかしい」


―理性が持たねぇ!!!!

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