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1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
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第2話「ケモっぽい幼女」その1

※前回のあらすじ

異世界に来た俺は可愛いロリ僧侶と出会い、調子に乗って冒険者になるコトを決意してしまった。



そして翌日から、俺の冒険者ブートキャンプが始まった。

早く上達したい。時間が惜しい。そこで俺が望んだのは実戦での訓練。

剣の振り方や戦い方は身体で覚えろ!というハードモードだ。


ちなみに、魔法の修行は無しだ。

俺には、この世界の住人なら多かれ少なかれ必ず持っている魔力が全然無いらしい。

やっぱりこういうトコが、生まれ育った世界が違うハンデなんだなぁ。

プリスは何故かそこにはそんなにツッコまなかった。

きっと、俺が気を落とすと思って触れないでいてくれたのだろう。ううっ…ええ子や……。



プリスにモンスターの特徴や習性を教えてもらい、危なくなったらフォローしてもらう。

怪我したら僧侶の十八番、回復魔法で治してもらってまた戦闘。そんなカンジで行ってみよう。


そして俺達は草原に来た。ここで出るモンスターは…、


「最初はクズスライムですね。」

「あ、昨日プリスが戦ったアレか。」

「はい。特殊な攻撃もしませんし、入門編には最適です。でも気を付けて下さい。

一応は最弱に位置しているモンスターですが、体当たり攻撃はかなり重くキツイですよ。」

「当たったらヤバイ?」

「成人男性なら単独で1発の体当たりは十分耐えられます。でも、敵が複数だと徐々に態勢を崩され、体力を奪われます。」

「なるほど。そうしてジリ貧になったら最弱相手でも危ない、ってワケか。」

「はい。最後まで油断は禁物です。」


草原を歩くことしばし。手前の草むらからクズスライムが飛び出してきた!

うわ、もう引くに引けない。やるしか無い。


出て来たのは1匹だけだ。初心者の俺にはおあつらえ向きだな。

後ろにはプリスも付いているし、怪我を恐れずに向かって行ける。


剣を振り回すが、かすりはするもののなかなか当たらない。意外に小回り効くな、コイツ。

体当たりも何とかかわせた。こりゃ確かに複数で来られたら、今の俺ではよけきれないわ。


グフッ!体当たりボディーブロー当たった!転んだ俺にすかさずプリスが回復魔法をかけてくれる。

そして苦闘数分。ついに俺の一撃がクズスライムにブチ当たる!

ボトッと落ちたクズスライムは光となって消え、……ん?何だコレ?


クズスライムの消えた跡に何か落ちていた。


「おめでとうございます!初陣、勝利ですね!」

「おう!ありがとう!…てか、この落ちてるヤツって、何?」

「あ、それは金属の鉱石です。モンスターは倒すと金属や宝石の鉱石になるんです。」

「何と!?」

「と言うよりも、これがモンスターの正体です。」


拾い上げたそれは、小石程度のクズ鉄の塊に見えた。



モンスターを倒したら、鉱石になる?

むしろこれがモンスターの正体?


「モンスターって生き物じゃ無いの?」

「食事をしたり、繁殖したりをしないという面からすると、生物ではありませんね。」

「えっと、無知ですまない。モンスターって、とどのつまり何なの?」

「兵器です。今から数百年の昔、魔導大戦時に魔族が自分達の数の少なさを補うために生み出した戦力です。」


昨日聞いた『魔導大戦』か。やっぱり結構重要なワードっぽいな。


「ふむふむ、そうやって魔族はモンスターを作り続けてる、ってワケか。」

「いえ、違いますよ?」

「え?違うの?」

「魔導大戦は激化の一途をたどり、人族、魔族、双方に多大な被害を出して、

これ以上の戦いはどちらも絶滅すると判断され、平和協定が結ばれて終結しました。

今、こうして見るモンスター達は、当時配備されていた残り。いわば残存兵なんです。」

「すると、つまり、冒険者がモンスター討伐してるのは、数百年前の戦争の…戦後処理ってコト?」

「正解です。和平後、人族、魔族が協力してずっと駆除を続けていますが、あまりに膨大な数でしたので、

完全駆逐にはまだ百年以上はかかる見通しだとか…。」

「うへぇ。」

「モンスターは鉱石を核にして魔力で生み出されました。こうして倒して手に入れた鉱石は、

ギルドや鍛冶屋、宝石商で売って、駆除代金代わりにその人の収入とするコトが認められているのです。

強いモンスター、巨大なモンスターほど貴重で質の良い鉱石が使われているので、倒せば高収入です!」


あれ?何かプリスたん、お目々がキラキラしていない?そんな顔、初めて見たよ?

まさか、守銭奴って本当なのかな…?


「あれ?そう言えば、昨日プリスが倒した時はこの鉱石、出なかったよね?」

「はい。あの神聖魔法は攻撃では無く、退魔です。レベルの低いモンスターを神聖の光で追い払う魔法です。

ですから倒したコトにはなりません。あの時は戦闘すると、丸腰のケインさんを巻き込んでしまうおそれもありましたから…。」


うわ、すっげぇ!ちゃんと状況把握してたんだ!流石だよプリスたん!

倒せば儲かったハズなのに。…うん、やっぱこの子は守銭奴なんかじゃ無いよな!



引き続き草むらでクズスライム退治を続行。ここからは俺の活躍をダイジェストでお送りします。


初日終了。結果、何に付け不慣れなコトで手間取ってしまい、クズスライムを数匹倒したトコロで日が暮れてしまった。


3日目辺りからは倒した数も増え、受けるダメージも減った。プリスの回復魔法の世話になる回数も減った。


4日目にもなると、草原から森の入口に場所を変え、初級モンスターの中でもやや強い奴と戦えるようになった。


「やりましたね!凄いです!」

「プリスのお陰だよ。回復魔法が無かったら、怪我と筋肉痛で次の日に立てなかっただろうからなぁ。」


そして5日目。ダンジョンの練習にと少し遠出をして、冒険者の町から南に行ったトコロにある遺跡にチャレンジ。

ここはエンカウントがそんなに高くないので、ダンジョンの雰囲気と対処法を覚えるのにピッタリだ。挿絵(By みてみん)


6日目。遺跡の近くに到着。『ここをキャンプ地とする!』

早速遺跡に入る。宝箱から前の冒険者が置いていった薬草や保存食が出て来たので、キャンプ生活としては助かる。


7日目。再び遺跡に行くと、昨日まで無かった剣が遺跡の奥に落ちていた。

で、これが『業物』で、兎に角切れ味が良い。

さぁ、TVの前の皆様、御覧下さい!この様に固いモンスターでもスッパリ切れます!もちろん刃こぼれもありません!

何だか、一気に自分のレベルがハネ上がったかとカン違いしそうになるわー。


「この剣、スゲーよ。何でこんなのが落ちてたんだろ?昨日は無かったよね?」

「こういう場合、前の冒険者がモンスターにやられて残された、というのが一般的なんですが、

こんな攻撃力の高い武器を持っていて、ここの低級モンスターにやられるとはとても考えられません…。」

「だよなぁ。俺でさえ無双出来ちゃいそうだもんなぁ。…で、これ、どうしようか?」

「冒険者のルールで、落ちていたモノは次に見つけた人にその所有権が移ります。

つまり、遺失物の報告が無い限りケインさんの物です。」

「おぉ!良いのか!ラッキー!!」


これでサンピンゴブリンのいるダンジョンに挑戦出来るだろうか?

いや、過信は禁物だって分かってはいるさ。

でも、1日過ぎる度にあの女の子の泣き顔が強く思い出されて来てツライんだ。

とりあえず、挑んでみるだけ挑んでみても良いんじゃないか?



9日目。そんな決意を胸にして、俺達は冒険者の町に帰って来た。

さぁ、今夜もプリスたんと裸のお付き合い(背中の拭き合い)ですよ!ムフフ。


と、往来で冒険者達が何か言い合ってる。まぁ、ここでは日常茶飯事だぜ。

声がデカイので、イヤでもこっちにまで聞こえて来る。


「どーしてっすかー!たのむっすよー!はずさないでほしいっすー!」

「しつこいな!お前は役立たずだって言ってんだろ!」

「そんなー!オイラ、がんばるっすからー!」

「いくら頑張ろうが、駄目なモノは駄目です。アナタは我々のパーティーの足を引っ張ってばかりですからね。」

「そうそう。もうこっちも我慢の限界だ!」

「ふええええー…」


何か、1人を寄ってたかってディスってる。あまり良い光景じゃ無い。

この世界、余計なコトには首を突っ込まないのが長生き出来る秘訣ではあるが、目に余る。

まぁ、話を聞くくらいなら大丈夫だろ。 多分。


「あのー、往来で何やってんのかな?」

「何だテメェは?関係無いヤツはすっこんでろ!」

「アッ、ハイ。」


情無いぞ俺。ここで引いたら駄目でしょ。

と、プリスが参戦した。


「失礼します。往来での騒ぎは皆さんの迷惑になりませんか?冒険者の品格を落としますよ?」

「ゲッ!『守銭奴プリス』!!」


言っちゃったよ!守銭奴って言っちゃったよ!

でも、プリスは動じた様子も見せず、毅然と立ちはだかる。

…どうやらプリスは、自分の二つ名、いや、悪名を知ってたみたいだな。

すると、揉めてたパーティーの中の背の高いインテリっぽい魔法使い系のメガネ君が、中指でメガネをクイッと上げて応対した。


「これは失敬。確かに、少しお見苦しいモノでしたね。」

「一体、何があったんですか?」

「いえね、この獣人族の戦士さんを我々のパーティーから解雇させていただこうと思いまして。」


見ると、その子は犬とも猫ともつかないカンジの獣人族の女の子だった。

ケモミミがあって、フワフワバサバサしたケモ尻尾。手足には毛が生えてて爪が出てる。

で、これまた幼女だ。プリスよりちょっと背があるけど、戦士って聞いた通りのガッシリと引き締まった身体のケモ幼女だ。


「解雇って、どうして?この子が何かしたのか?」


このタイミングを逃さず、すかさず俺も加わる。

「『何かしたのか?』じゃ無ぇ。何もしねーし出来ねーんだよ。兎に角、使えねぇんだコイツは。」

「いや、本人目の前にしてずいぶんヒドイ言い方じゃね?」

「事実だからな。戦闘じゃ俺達の周りをウロチョロするばっかで、必要な時に離れていて、要らねぇ時に側に来る。

お陰で攻撃を畳み掛けられねぇわ、大技の時に邪魔になるわ、もう散々だぜ。」

「えーっと…」


それが事実なら、確かにお邪魔だよなぁ。


「でもでもー!オイラだっていっしょーけんめーにー!」


必死に取りすがるケモ幼女。だが、パーティーの連中は相変わらずの冷ややかな目だ。


「ボクも獣人族は戦闘力が高いと聞いたのでパーティーに加えたのですが…、ま、とんだ期待外れだったというワケです。」


メガネクイッ。透過光キラーン。

くっそ、このメガネ君、メガネだけでキャラ立ってやがる。メガネが本体だろコイツ。

コイツと対決したら、


『フフフ…あなたの技は全て調べさせてもらいました。ま、このボクの前では無力ですがね…。(メガネクイッ)』


とか絶対に言うんだろうな。

そして負ける時も


『ば、馬鹿な!このボクの完璧なる計算で導いた戦法が通じないだなんて!あり得ない!あり得ません!(メガネピシッ)』


これだな。間違いない。このパターンだ。

そんなアホな想像してたら、冒険者達は俺達との話も途中にその場を離れて歩き出した。


「そんなワケでオサラバだ。じゃあな。」

「厳しいとは思いますが、ボク達も仕事ですのでね。失礼。(メガネキラーン)」


冒険者達は雑踏の中に消えていった。

残されたのはロリケモっ子ただ1人。


「う~~~~~~………」


今にも泣きそうな顔だ。それでも泣くまいと必死に我慢してるカンジだ。

…ヤバイ。空気が重い。気まずい。

こういう時、何て声かけりゃ良いんだろう?

なぐさめるのも逆効果っぽいし、笑い飛ばすのも如何にも他人事で冷たい気がする。

俺がそうして悩んでいると、プリスが助け舟を出してくれた。


「…良かったら、ご飯ご一緒にどうですか?」


ホント、高スペックだよプリスたん!!

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