最終回「魔導都市 大決戦」その3(終)
「主!血迷うたか!?」
「ケインさん!?……え?」
プリスたちは俺がシールド外に出たコトで驚いた。
そして今、そこでも平然としている俺を見て二度ビックリしている。
これで俺は確信した。
「やっぱりな!この賭け、俺の勝ちかも知れない!」
その反対に、所長はこれ以上は無いってくらい驚愕の表情だ。そりゃそうだろうなぁ。
「何故です!?何故、反マナ粒子の中で存在出来る!?」
「あぁ、言って無かったっけ?」
「え?」
「俺、『あっちの世界』の人間なんだよね。だから、この空間は俺に取っちゃ日常。」
「…!!まさか!?」
俺はそのまま魔導巨人に駆け寄り、その半壊した高層ビルのような脚を登る。
反マナ粒子を出している『核』みたいなモノがあるはずだ。
それを壊せば、この光は止まる! 多分!
「やめろ!私の研究成果を壊すな!!」
「アンタのその思い以上に、俺はこの世界を壊したく無いんだよ!!」
ロープを掛けて登れれば楽なんだが、ロープはこの世界の物質なので消えてしまう。
なので、ここは体力勝負のフリークライミングで行くしか無い。
幼女レリーフ満載の俺の鎧は、オリハルコン、アダマンタイト、ミスリル等を使った頑丈なヤツだが、
この消滅の光の中ではいつまで消えずにいてくれるか分からない。
落ちたら、高層ビルからの投身自殺と変わらない結果が待っている。
魔導巨人の頭部が光ってる。あそこが核なのか。
畜生、手に力が入らなくなって来た…。でもここで落ちてたまるか。
俺を慕ってここまで付いて来てくれた幼女4人が、今も下で頑張ってるんだ。
「やめろ!登るな!!」
所長は俺を止めようと歩み出した。
あ、馬鹿。 分厚い研究所の屋根や壁があったから無事でいられたのに、そこから出たら…!
「私の想いが…!わた…し…の……」
光の雨に照らされ、所長は音も無く消滅した。
アイツのこの90年間は、一体何だったんだろう。何を思い、何を追い掛けたんだろう。
あ!!
魔導巨人をさらに登ろうとして手を掛けた部分が、消えた!! 光源に近付いて来たのを忘れていた!!
その伸ばした手が空振りしたのは、俺の身体のバランスを崩すには十分で…
そして足場さえも消えてしまい、俺は魔導巨人の腰辺りから落ちるコトになる。
「ケインさん!!」
「主!!」
「…マスター!!」
「ボスーーーーーーーーーーッ!!」
4人が叫ぶ。マーシャが身の危険を顧みず飛び出そうとして、パトルに止められる。
デヴィルラの魔力が尽きてきたのか、プリスが無い魔力を振り絞って援助している。
うん。良い子達だよ、本当に。 4人だけでも助けたかった…。
………あれ? 落ちない?
浮いてる? …どうなってんだ、コレ!?
『間に合いましたね。』
その声は!? 神様!?
―見ると、俺は虹色の柔らかな光に包まれていて、その横に幼女形態の神様がいた。
「助けてくれたんですか?」
『私もこの世界の存在である以上、ここで長くは持ちません。
あれを止められるのは、貴方だけです。』
「良いんですか?世界のコトに介入しちゃっても…。」
『理が乱されるのなら防がなくてはなりません。 ―それに、』
「それに?」
『御利益がある、と言いましたよね。奇跡1回分の御利益です。』
ありがとう!神様!!
俺はフワリと浮いて、神様に魔導巨人の頭部まで一直線に飛び上がらせてもらう。
頭部に設置された光源に近付く。俺の鎧はパラパラと粉砂糖のように散り出した。
消えて行く鎧の下からは、元の世界で着ていた服が見えている。
だが光源の核を目の前にして、ここで困った。 ―コイツをぶっ叩く武器が無い。
ええい!こうなりゃ素手だ!!
プリス達と神様が見守る中、俺は素手で核を殴り付ける。だが、ビクともしない。
殴っても蹴ってもダメだ。手が血だらけになる。 核は感覚的には防弾ガラス並の硬さだ。
クソッ! 何か、こっちも硬いモノがあれば…!
だが、この世界の武器でこの核を叩こうとすれば、触れる前に消滅してしまう。
もう消滅の光は地上付近まで降りて来ている!このままでは4人も、転送機も消える!
俺の存在も、これまでの思い出も全て消えてしまう!!
諦めるな!考えろ!何か、何かあるハズだ!
この光の中で無事でいられるのは、俺と、俺の世界にあった物質だけ……!!
―そうか! 1つあった!!
俺はポケットから最後のアイテムを出した!
この世界に来た時に止まってしまい、それ以来使えなくなった腕時計だ!!
コイツはビルの屋上から落としても壊れない、最強の時計!! コイツなら!!
俺は服を破き、布と腕時計を拳に巻いて、メリケンサックにする。
「うぉおおおおおおおおおおーーーーーーーっっっっ!!!!!」
俺の拳が光って唸る!! 幼女を守れと、轟き叫ぶ!!!
ガッシャーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
核は粉々に砕けた! 俺の時計も砕け、俺の指も砕けたかも知れない…。
消滅の光は潮が引くように上空へと上がって行き、二度とその輝きは現れなかった。
「―やった…!!………ん?」
ホッとしたのもつかの間、魔導巨人は真っ白な砂とも、塩とも、灰とも言えない粉末になって崩れ始めた。
消滅の光の影響で、物質構造がボロボロになったせいだ。
俺は、山の頂上から雪崩と共に落ちる気分を味わった…。
「ボスー!だいじょーぶっすかー!?」
俺は真っ白な山の中から、パトルに掘り起こされて救出された。
流石、ケモっ子。穴掘りが上手い。
「ケインさん!!」
「主ー!!」
「…マスター!」
4人の幼女が俺の帰還を喜び、出迎えてくれた。 全裸で抱き付いて。
「ロリ・カイザー殿!無事だったか!!」
魔王様だ。魔族と冒険者の混成軍もほとんど損害は無いようだ。
「手助け出来なくて済まなかった。武器も魔法もあの光に当たれば消えてしまい、
諸君を助けようにも、誰も近付く亊さえ出来なかったのだ。」
「仕方無いですよ。お気遣い感謝します。」
この世界の住人じゃ、アレに対抗する手段はそうそう無いもんな。
と、そこに神様が遅れて上空から降りて来た。神様は俺の肩に手を置く。
魔王様を始め、魔族も冒険者達も全員がその場に畏まる。
『皆さん。今回の危機はこの若者によって事無きを得ました。
今後、同じ過ちを犯す者が現れぬよう、全ての種族が手を取り合い正しき道を歩んでいく事を望みます。』
「はっ! ………………。」
『どうかしましたか?』
「い、いえ、畏れながら…これは何とも言えぬ絵面かと…。」
え? ……あぁ!!
世界を救った勇者に、全裸の幼女が神様入れて5人も纏わり付いている!!!
それもこんな大勢の目の前で!! 何たる羞恥プレイ!!
「みんなー!見ないでーーー!!」
俺の必死の声に、周りは笑いに包まれた。
【エピローグ】
結局、俺は帰るアテも失ってしまった。だが微塵も後悔していない。
可愛い幼女に囲まれて、楽しい冒険をして、新たな発見をしてみんなでワイワイ騒ぐ日々。
生活文化は日本のままだし、何も不満は無いさ。
その後、転送機は誰も手が触れられないようにと考えた結果、神様にも協力してもらい、
デヴィルラのカードに封印して『神々の住まう場所』に置いてもらうコトにした。
あそこなら、悪人や邪な野望を持つヤツは間違っても辿り着けないからな。
魔導都市は壊滅。
これを機にマトモな魔導研究が誰でも出来る、オープンな都市に作り変えるそうだ。
プリスはギルドから新しい二つ名『精霊聖女』をもらった。
究極神聖魔法を使える唯一の存在として、全大陸にその名を馳せている。
パトルもギルドから新しく『武装獣士』というカッコイイ二つ名をもらった。
『最強装備シリーズ』を纏い戦うその姿は、獣人族の誇りだと賞賛されている。
デヴィルラもまた『暴魔姫』という物騒な新しい二つ名をギルドからもらった。
常に新しい魔導の研究に余念の無い、魔導の生き神様みたいに扱われている。
マーシャがギルドからもらった二つ名は『妖精拳士』だ。
彼女がエルフという事実も公表され、晴れてエルフの地はマーシャを迎え入れるとのコト。
―だが、
「ケインさん!ここのダンジョンに金の鉱脈があるそうです!」
「ボスー!きょうのおひるは、なにたべるっすかー?」
「主よ、もっと余を構うのじゃ。ほれほれ。」
「…マスター。ヒマならマーシャと子作りする。」
今日も今日とて、このメンバーは元気で通常営業中だ。
いや、何でお前ら昼間っから全員真っ裸なんだよ!?
「あれ以来、何だか裸の方が落ち着いてしまいまして…。」
「はだかは、うごきやすいっすから!!」
「古今東西、主に奉仕する奴隷は裸だと相場が決まっておろう?」
「…これがマーシャの最強フォーム。他に選択の余地無し。」
一応、今のトコロは部屋の中だけにしてくれているが、このままだと街の中まで全裸で行進とか
…無いよな? 無いと信じたい。 無いに違いない。 多分。
『変わり無いようですね。』
そこへ神様が窓の外にやって来た。 もちろん全裸で。
ええい!!お前ら、揃いも揃って裸族幼女協定でも結んでるのか!!
『皆さんにお願いしたい案件があります。』
神様は平然と話し続ける。
俺達が泊まっている宿屋の外で、冒険者達が騒ぎ出している。
「神様がまたロリ・カイザーのトコロに降臨された!」
「あの、昼間っから全裸の幼女達とヨロシクやってるロリ・カイザーのトコロにか!?」
「まさか、ロリ・カイザーは神様までたらし込んだんじゃないだろうねぇ!?」
「こりゃあ、神様さえ全裸幼女にして侍らせる存在ともなると…、」
「「「「『ロリ・ゴッド』と呼ぶしか!!!!」」」」
やーーーめーーーてーーー!!!!!!
(END)
最後までお付き合い、ありがとうございました。
※続編の「1クールからはみ出した異世界冒険」もヨロシクです。
https://ncode.syosetu.com/n7718eu/




