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1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
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第12話「初めての共同作業」その3


『魔導巨人』と聞いて狼狽した顔の魔王様。それを静かに見下ろす神様。

神様が、話しても構わないとばかりに頷く。魔王様は少しホッとした様子で語り出した。


「数百年前の魔導大戦末期。敗戦色濃い人族が、その劣勢を一気に覆すべく作り出した最強・最悪の兵器。

―それが魔導巨人だ。」

「それって、聞いたコトがありません…。」

「当然だ。余りに悲惨な結末を招いた亊で、全ての種族間と神との間で禁忌とされたのだからな。」


この世界の一般知識では

『魔導大戦末期は激化の一途をたどり、人族、魔族、双方に多大な被害を出して、

これ以上の戦いはどちらも絶滅すると判断され、平和協定が結ばれて終結した』

くらいにしか伝えられていない。


その原因は『魔導巨人』とかいうモノだったのか。

魔王様は俺達に言う。


「諸君、南の大陸に『中内海』があるだろう?」


プリスがサッと地図を出す。俺達がいた大陸の西側にある、まん丸い形をした海だ。挿絵(By みてみん)


「それは魔導対戦時には無かった。そこには陸地が広がっていたのだよ。」

「えぇっ!?」

「…まさか、その魔導大戦で?」

「そう。魔導巨人が暴走し、大爆発した時に空いた穴だ。

そしてそこに海水が流れ込み、今の『中内海』を形作ったのだ。」

「そんな…こんな大きなクレーターが出来るほどの爆発…!?」


そこが戦場だったとしたら『人族、魔族双方に多大な被害』ってのも納得過ぎるほど納得だ。

むしろ全滅しなかったコトが不思議なくらいだよ!


「もう1つ。小内海だ。そこの入江が直線的になっているであろう?」


そう言われれば、地図を見るとナナメ上にスパーンと切れ上がってるカンジだ。


「これが魔導巨人の放った攻撃の跡だ。」

「なん…だと…!?」


確かに、この入江の延長線上が中内海になっている。

つまり、魔導巨人が最大出力のビーム砲みたいなモノを発射して、大陸北東部を壊滅させた。

そしてそのままオーバーヒートを起こして自爆した…って展開か?


「…そいつがマーシャの国…エルフの国を滅ぼした…。」

「何たる威力じゃ。この世のモノとは思えぬ。」

「魔導都市の研究員達は、その数百年前の魔導巨人を復活させようとしているのですか!?」

『そうです。異なる世界の文明技術を取り入れ、復元・改修を目論んでいるのです。』

「もっとはやく、おしえてほしかったっすよー!」

『魔導都市の者達が中内海に赴き、魔導巨人の引き上げを始めたのが今朝なのです。』


なるほど。今朝って言ったら、俺達がこの城に来た時だもんな。

それはメチャクチャ最新速報だ。神様じゃ無かったらもっと情報は遅れていたはずだ。


「つまりこの合体したモンスターは、魔導巨人引き上げから修復まで我々を足止めする時間稼ぎであったか。」

「今ならまだ間に合うでしょうか?」

「…連中も、コイツがこんなに早く倒されるとは思っていない、ハズ。」

「どっちにしろ、やるしかないっすよ!!」


あぁ、その通りだ。こういうサルページ物は絶対上手く直らないって、お約束で決まってんだ。

このまま放置してまた爆発したら、今度はどこに新しい内海が出来るか分かったモンじゃ無い。


「これは魔導都市に行くしか無いな…。」

『その前に、貴方達に授けるものがあります。』

「え?神様直々に、ですか?…でも、神様は協力は出来ないって、」

『協力ではありません。…そう、神託という事にしておきましょう。』


神様も色々決まり事があるんだろうな。その中で何とか俺達のためにと、抜け道を探してくれてるワケだ。


『まずはプリス。』

「は、はい!」

『精霊王より1つ、究極神聖魔法を預かって来ました。貴方に授けましょう。』

「あ、ありがとうございます!」

『ですが…そうですね、魔王よ。』

「はっ!」

『この者達に先程述べていた褒美をおあげなさい。最高品質の貴金属と宝石を。』

「承知致しました。直ちに。」


うぉ!これは、その究極神聖魔法の課金のための軍資金か!?

鉱石じゃ無くて、地金インゴットや純度の高い宝石を使う前提とか、どんだけ凄い魔法なんだろう…?


『次に、パトル。』

「はいっす!」

『もっと自由に戦いなさい。貴方が抱いている構想は間違ってはいません。』

「ほえ?…わ、わかりましたっすー!!」


ん?これは意味が分らん。パトル本人には理解出来ているようだけど…。


『そしてデヴィルラ。』

「うむ。」

『貴方もまた、この戦いで思うところがあったはずです。試すべき時でしょう。』

「おぉ!そうであったか!神のお墨付きならば躊躇は要らぬな!」


何を恐ろしいコトを考えてるんだろうな、アイツは。神様にも上からタメ口とか、親父さんですら敬語なのに。


『最後にマーシャ。』

「…うん。」

『貴方の呪いは、最早貴方を縛るものではありません。より貴方を強くすると心得る亊です。』

「…呪いは、強くなるため…。」


マーシャはジッと自分の手を見つめる。やはり彼女の中では何らかの答えが見えているようだった。

あれ?マーシャで最後? 俺は?俺には無いんですか?


『そうでしたね。それでは貴方にも。』


やっぱ、めっちゃ心読まれてますやん!


『貴方は自分が考えているよりも、ずっと強いのです。ですから4人も貴方を慕ってここまで来たのですよ。』

「俺が…強い?」

『知恵の強さ、魔法の強さ、武器の強さ、身体の強さ。それ以外の強さを貴方は持っています。』

「まだ良く分からないけど…考えてみます。」


何か上手くはぐらかされた雰囲気だけど、神様のご神託だ。嘘はあるまい。肝に銘じておこう。


『そして、人、魔族、獣人族、エルフという異種族をまとめ、ここまで戦ってきた貴方に、

私から『ロリ・カイザー』の称号を贈りましょう。』


ち ょ っ と 待 っ て 神 様 。


「おぉう!主も遂に皇帝の名を冠するまでになったか!余は鼻が高いぞ!!」

「神様から二つ名を賜るなんて!おめでとうございます、ケインさん!」

「ボスー!めっちゃかっこいいっすよーーー!!」

「…皇帝の子供を産めるマーシャは、幸せ者。」


神の後光が注ぐ下で、4人の幼女が俺を囲んで讃えている。 何?この絵面。

アニメや漫画だったら、俺は今、間違いなく真っ白になっている。風化して飛べる。どこまでも。

一応、俺は神様に聞いた。


「何で、そんな二つ名を…?」

『貴方に今まで付いて来た二つ名を参考にしました。私が言うのも何ですが、必ずや御利益があるでしょう。』


そりゃあ神様が直々に命名されたワケですから、そうなんでしょうけど!!!

俺、泣いて良いですかね?


「ロリ・カイザー殿。」


魔王様が早速その二つ名を使って俺を呼んだ。


「神より皇帝の名を賜ったのだ。これでそなたは、一国の王である儂と同格であるな。」

「え?そうなんですか!?」

「これがどういう意味を持つか、分かるか?」


え?皇帝の名の意味…? 何だろ?なったコト無いからなぁ…。

そこでプリスがポン!と手を叩く。


「あ!これでケインさんは、どの国からの紹介状も要らずに魔導都市に入れる、というコトですか!?」

「そうだ。神が与えし国王と同格の二つ名とあっては、連中も首を縦に振るしかあるまい。」

「うむ!魔導を研究する者にとって、神に出会い、加護を受けた主を蔑ろには出来ぬじゃろうなぁ。」


魔王様とデヴィルラは『ざまあみろ』とばかりに親子してクックックと笑う。

うーむ、これが御利益か。神の七光、恐るべし!!



その後のコトだが、俺は魔王様から国家機密レベルの記録書を借りるコトが出来た。

魔導巨人に関して、何か分かれば役立てて欲しいとの御好意だ。


そして、神様の力で中央都市へと送られた。

てっきりあのまま魔導都市に突撃するかと思ったが、準備が何も出来ていないコトに気が付いた。

確かに時間は逼迫してるけど、『急いては事を仕損じる』って言うもんな。


そうそう。街に戻った時には、既に俺の新しい二つ名のコトが知れ渡っていて、

神から与えられたというハクも付き、幾つもの横断幕と大歓声で『ロリ・カイザー』コールを受けた。

まるでプロ野球の優勝パレードのような騒ぎの中を、俺以外の4人は胸を張り明るく手を振って応えて歩いていた。


さて、それから数日。

俺は宿屋の部屋に篭って、魔王様から借りた記録書に何か有益な情報が無いか調べている。

一方、プリス達は神様からもらったアドバイスを生かすべく、銘々に練習に打ち込んでいるらしい。


「でも、やっぱ何も詳細が無いなぁ~。予想はしていたけど…。」


各種族間でタブー扱いされ、歴史から抹消された魔導巨人。やはり先日聞いた以上の記事はどこにも無い。

弱点どころか、その構造や概要さえ掴めないんじゃ作戦の立てようも無いぞ…。

そう思い悩んでいると、ドカドカと五月蝿い足音が近付いて来た。


「お、おぉう、こ、ここにおられましたな!ロリ・カイザー殿!デュフフフッ!」

「え?あ、うん。早かったねぇ…。」


武器屋のニート息子だ。

この街で俺と最初に会って売買をし、迷いの森への情報を伝え、西の関所の代行をした、という

数々の俺との付き合いがあったお陰で、今じゃすっかりヤリ手の武器屋主人、というウワサになったそうだ。


「ご、ご所望の品、揃えて来ましたぞぉ!ヌフッ…ヌフフフッ!」

「おう!見せて見せて!」


彼に頼んだのは、俺の新しい武器と防具一式だ。

最終決戦になりかねないこの戦い、俺は徹頭徹尾みんなの指揮官となるコトに決めた。

4人に戦いに集中してもらうためにも、自分の身は極力自分で守ろうと思ったのだ。

だから、値は張っても防御力の高い装備品をオーダーメイドした、ってワケ。


「こっ、こりぇが、最強のカイザーアーマーで、ござる!!っふ!」


ニート息子は後ろにあった布を掛けた背丈ほどもあるマネキンを出して来る。

そして、自信たっぷりにその布を外した。


「うぉっ!!こっ…これが…!!」


そこには、全身を強化パーツで覆った特撮ヒーローのような鎧が立っていた。

銀メッキのように光輝くボディは、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトをふんだんに使った複合装甲だ。


―だが、

だが、である。


胸にも、肩にも、腕にも、腰にも、腿にも、脛にも、全てのパーツに

幼女の萌えレリーフが付けられているじゃねぇかぁあああああああああ!!!!!!


見れば、ヘッドギアにも、剣にも、盾にも、半裸の可愛エロい萌えレリーフが!!


「何じゃぁああああ、こりゃぁあああああ!!!」

「かっ、カイザーアーマー、カイザーギア、カイザーソード、そ、そしてカイザーシールド、でござるよ!」

「こんなの着て歩けってのかよ!?」

「おっと、ご、ご心配は無用ですぞ。ま、マントもお付けしました故ぇ。」


そう言ってニート息子は、袋からマントを取り出し、バッと広げた。

そこには刺繍ででっかく、プリス、パトル、デヴィルラ、マーシャの4人が描かれていた。


「 」

「こっ、この刺繍はミスリル、オリハルコン、アダマンタイトを細く糸にしたモノで編まれておりぃ、

これだけでも並の魔法は、か、完全にシャットアウト!ですぞ。デュフッ、デュフフフフフッ!」


俺はどこかのアイドルの親衛隊々長か!! 何かの痛いコスプレか!! 傾奇者か!!

呆然とする俺の前で、その最強の鎧は光を放ち続けていた…。


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