表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
35/39

第12話「初めての共同作業」その2


俺はここまでの戦局を見て、この巨大モンスター攻略に対して1つの結論に達しようとしていた。

『コイツには馬鹿デカい物理攻撃を連続で叩き込むしか無い』と。

しかし…、


「…ケインさん?」

「デカい攻撃を入れる時間が欲しい…。」


俺の苦虫を噛み潰したような顔を、心配そうに見るプリス。


「時間…ですか?」

「あぁ、その算段はあるんだけど、それにはあの巨体にジッとしてもらわないといけない。

でもそれって、チャンスはあの無属性波動の後しか無いってコトなんだよな…。

あの攻撃は耐えるしか手段は無いし、その後はこっちもダメージからの復帰で手一杯になってしまう。

―これじゃあ攻撃が出来ない…!!」


静かに俺の話を聞いていたプリス。ひとつ息を整えると、おれにこう言った。


「その時間、私が作ります。」

「!?え…、出来るのか!?」

「はい。ですから、みんなにもその旨を。」

「……分かった!信じるよ!」


俺はみんなに呼集を掛ける。

デヴィルラもようやくティータイム(魔力復活)が終わったようだ。…たった数分間だけど長く感じたわ。


「これからヤツに特大の一撃をかます!みんな、協力してくれ!」

「りょーかいっす!」

「あい、分かった。」

「…マスターが言うなら、何でもする。」


俺は手短に作戦を伝える。みんなはそれを聞いて各々頷く。

あとは、プリスがどうやって無属性波動を止めてくれるかに掛かっている。


合体モンスターがこっちを向く。

パトルは装備を全て鎧に戻した。マーシャは汚れた上着を脱ぎ捨てた。

デヴィルラは両手に魔力を集中し、プリスはみんなの先頭に立ってスタッフを構える。


合体モンスターの目が輝く!無属性波動だ!!

プリスがスタッフを突き出して叫ぶ!


「皆さん!すみません!!百万エンほど溶かします!!」


課金宣言キターーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

この手があったかー!!

神殿から脱出して以降、あれから倒した上級、最上級モンスターの金属と鉱石全て投入か!!


無属性波動の衝撃が来る!!

身体が激しい振動に襲われる!!…が、前のように吹っ飛ばされはしない!ダメージも無い!

衝撃波が収まって行く。 俺達は全員無事だった!!


「うぉおおお!!すごいっす!ちっともいたくなかったっすよーーー!」

「プリスよ、これは…回復魔法か?」

「はい。無属性波動はどんな障壁も無駄だと聞いたので、

衝撃波で負うダメージ分と同じ量の回復を、受けるダメージと同速度で全員一度に掛けました。」

「だから一瞬も痛みを感じなかったのか!!」

「…神業。」

「効果はもう暫く続きます。今なら少しくらい無茶な攻撃でも大丈夫です!」


ゲームでも終盤になると覚える『全員に全回復』と『徐々に回復』の複合か!凄ぇ!!

マーシャの言う通り、精霊王の力を借りた神業だな。


「よし!この時間を無駄にしない!行くぞ!!」

「あい、分かった!参るぞ!プリス!!」

「はい!!」


デヴィルラとプリスは同時に風魔法を使い、パトルとマーシャを空高く飛ばした。


「いくっすよー!マーシャ!!」

「…これで、決める。」


パトルは空中で再度パーツを組み合わせハンマーにする。装備の無い身軽なマーシャはさらに上空へ。


「受け取るが良い!パトル!!」


デヴィルラが自分の魔力を全放出して、空中にいるパトルが持つハンマーにブチ当てて充填する!

膨大な魔力がハンマー内で圧縮され、それはとてつもない質量へと変換される。


「マーシャ!行きますよ!!」


プリスが滞空時間を稼いでいるマーシャに、防御魔法を連発して掛ける。

鋼よりも硬くなったその身体は、合体モンスターへと一直線に突っ込んで行く!


「せぇええいりゃああああああーーーーーっっすぅうっ!!」


パトルが超重量と化したハンマーを振り下ろす!

それに気付いた合体モンスターは頭の上で腕をクロスさせ、防御体勢を取る…が!!


どっごぉおおおおおおおおーーーーっっ!!


クリティカルの証の眩しい光が溢れる!

ハンマーは合体モンスターの組んだ腕を砕き、そのまま頭部に炸裂!!

兜となっていたムクロワイトを粉微塵にして、ボディのサイクロプスの頭をひしゃげさせ、更に破壊して行く!!


最上級モンスター4体分を砕いたハンマー、流石にその勢いが衰えてくる。

だが!!その上空からマーシャが来た!


「…砕く。」


マーシャは数回空中で回転する!そして右足を高く掲げて、パトルのハンマーに全力のカカト落としを炸裂させる!

再びクリティカルの閃光が走る!!

防御魔法で硬化した身体が落下の勢いと回転の遠心力を加え、そのパワーを1%の無駄も無くハンマーに注ぎ込む!


その瞬間、合体モンスターの身体全体にに亀裂が走る!!

強固な脚となっていたガンセキゴーレムにまで無数のヒビが入り、そして―、


ぐばぁあああああーーーーーーーんんん!!!!


合体モンスターは粉々に砕け散った!!!


「やった!!」

「やりましたー!!」

「うむ、見事じゃ!!」


パトルとマーシャが落下して来た。攻撃に全振りするために一切の受け身を放棄したからだ。

俺達は駆け寄って、2人を助け起こす。


「大丈夫ですか?パトル。」

「お、おなかぺこぺこっす…。もうだめっす…。」

「辛抱せい。後で腹一杯、食わせてやるわ。」


「マーシャ、しっかりしろ!」

「…マスターがマーシャを抱っこ…。分かった、今脱ぐ…。」

「うん、平常運転だコイツ。」


どうやら落下するまでプリスの課金回復魔法が効いていたらしく、怪我は無かったようだ。


「御苦労じゃった。プリス、ほれ。」


デヴィルラはそう言って、プリスに茶を出す。

パトルの歯形と、マーシャの血痕、そしてデヴィルラのルージュが付いたティーカップ。

カップを受け取ったプリスは、それが何を意味するかを悟る。

彼女は微笑んでその茶を口にした。そして静かにカップをデヴィルラに返す。


デヴィルラはいたく満足そうな表情で言う。


「うむ!これで我々4人は、今この場から永遠の友にして姉妹じゃ。」


どうやらアレは彼女流の『契の杯』だったらしい。

プリスもパトルも、マーシャも微笑んでそれに応える。

全員がそれぞれの全力で協力した、最初の共同作業。みんなが力を合わせれば、こんなに凄いコトが起こせるのだ。


「―む?父上か?」


見ると、コロシアムに魔王様と魔族の兵士がぞろぞろと入って来た。


「遅かったのう、父上。もう主と我々で倒したトコロじゃ。」

「そうか。民衆の避難と城の守りを固めた後だったので遅れたが、何も手伝う亊は無かったようだな。」

「恐れ入ります。」


プリスがペコリと頭を下げる。 こういうTPOは彼女に任せて安心だな。


「魔王様、アレは何だったんですか?」

「勇者殿か。まずは騒ぎを沈めてくれた亊に感謝する。礼は追って後ほどな。

―今回の件だが、恐らくは魔導都市の一党が噛んでいると儂は見た。」


魔導都市の連中が!?


「魔導対戦時にモンスターを作った時、あのような機構は組み込んでおらん事は確認済みだ。

明らかに、高度な魔導の知識と技術を持つ者が改修を加えたと見て良いだろう。」

「何のためにあんなモノを?」

「我等、魔族に対する意趣返しであろう。

我が国は魔導都市に怪しげな研究を止めるよう、再三に渡り勧告していたからな。」


つまり逆恨みからの犯行ってワケか。

まさかこのモンスターを合体させるアイデアも、日本文化からパクったモノじゃないだろうな?



と、ふいに上空が煌めき出した。虹色の雲が空一面に広がる。

この異変に、魔王様と兵士達は戦闘陣形を取ろうと構え出す。 が、


「ケインさん、これって…、」

「うん、多分そうだと思う。」

「じゃな。―父上、心配は要らぬ。敵では無い。」

「知っているのか?娘よ。」

「うぬ。 これは、神じゃ。」

「―何!?」


魔王様がごく当然の反応を見せたのと同時に、空から一条の光が降りて来た。

そして、そこから厳かに現れたのは…幼女だった。


うぉおーーい!?


真っ白な肌に虹色の髪。しかも全裸。一糸纏わず、…いや、

その足元まである長い髪で大事な部分が隠れている程度だ。


「何ですか?その格好…。」

『人の姿で現れるならばと、貴方の趣向に合わせたつもりでしたが…。』

「…お心遣い感謝します。」


やっぱ神様、俺の心読み切ってるでしょ!?ねぇ!?


「かみさま、てきはもうたおしたっすよ?」

「…魔導都市のヤツらの仕業だった。」

『それについて話があって来たのです。』


見ると、魔王様と兵士が膝を付いて畏まっている。

俺達は知人と会うかのようなフランクさ溢れる応対をしてるが、うん、本来コレが正しいんだよな。


『魔導都市の目的が分かりました。 魔導巨人の復活です。』

「魔導巨人ですと!?」

「父上、何じゃそれは?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ