表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
33/39

第11話「幼女×幼女×幼女×幼女」その3

「えっと…お初にお目に掛かります。魔王様。」

「諸君の亊は配下から聞いている。わしは諸君を第一級の賓客として迎えようと思う。安心せられよ。」

「あ、ありがとうございます。」


歓迎ムードでホッとしたけど、やっぱり凄い存在感のオーラだな。緊張が静まらない。


「…ふむ、そなたが、デヴィルラの言っておった男か。」

「そうじゃ、父上。余は主の奴隷となっておる。」

「ほう、魔族の王女である我が娘を、人間の男が奴隷にとな?」


ちょっ!!それ言っちゃうの!?父親の前で!?折角の賓客待遇がパーになるだろ!!

俺は、服の下に汗がサーッと流れるのを感じた。これは殺られる。

娘を奴隷にした男が目の前にいたら、父親の取る行動なんて決まってるじゃないですか!!


「……フッフッフッフ…ハーッハッハッハッハ!!」


え?魔王様、笑ってますけど!?何がツボ突いたの?何もしてないよね!?


「そうか、デヴィルラ!この男がか!」

「左様じゃ、父上。」

「まだまだ子供だと思っておったが、…そうか、この男を主としたか!」


…あれ?何の話? プリス達も怪訝な表情になる。


「あの、デヴィルラ?何か話が怪しい方向に向かっている気がしますが…?」

「なーんか、あやし-っすねー?」

「…イヤな予感がする。」


魔王様はえらく上機嫌になって、俺を見てとんでも無いコトを仰った。


「勇者殿!我が娘を嫁にもらってくれて礼を言う!」


おい、魔王様。 今、何て言った??

余りのコトに反応出来ない俺に変わって、噛み付いたのはプリスだ。


「ど、どういうコトです!?」

「ん?『主』とは旦那のコトじゃろ?違うのか?」


しれっと言い放つデヴィルラ。


「それ、ずっこいっすーーーーー!!!!!」

「…は、はかったな、デヴィルラ。」


ようやく俺も参戦だ。


「ちょ、ちょっと待って下さい!俺はデヴィルラと主従契約をした…いや、させられただけで!」

「うむ、そうだ。夫に付き従うのが理想の妻である。このジャジャ馬娘を従わせるとは、大した器の男と見た。

流石はウワサに名高い勇者、ロリ・ブレイバーといったトコロか。」


―しまった!これは孔明の罠だ!!


「そういうコトですか…。つまり、デヴィルラはケインさんに負けたあの日、既に気持ちは決まっていたと言うのですね?」

「今頃気付きおったか。パーティーの姑ならば、もっと早う察するかと思っておったのじゃがのう。」

「それはないっすよ!デヴィルラー!!」

「…一度、デヴィルラとは戦わなければならないと思っていた…。」


ちょっと、マーシャ!闘気を出すのはヤメなさい!ってか、ちょっと殺意混じってないか!?

そんな皆をあしらうかのように、掌を『まぁまぁ』とばかりに動かしてデヴィルラは言う。


「皆、慌てるで無い。別に余は、主を独り占めしようなどとは考えておらぬ。正妻、第一婦人の座があれば満足じゃ。」

「待って下さい!それなら、ケインさんと出会ったのは私が最初です!!」

「確かにな。じゃが、第一婦人は身分の高い者がなるのが慣例じゃ。余は魔族の姫なるぞ?」

「うっ…、それは…。」

「ふたりとも…なんのはなし、してっるっすか?」

「…これは、どっちが最初にマスターとの赤ちゃんを産むかという…

絶対に負けられない戦いがここにある…。」


うおおおおーーーーーい!! こら待てぇえええーーーーいい!

俺、置き去りにされてるよね!?俺のコトなのに!

プリスはデヴィルラの言葉に『ぐぬぬ』となっていたが、ハッと何かに気付き、


「そ、それなら、私は精霊王から加護を受けています!!」

「うぬっ!その手で来おったか!!」


2人の言い合いは、言葉での猛烈な殴り合いを呈してきた。

と、俺の服の裾を引っ張る手が2本。


「ボス!あかちゃん、はやくつくったほうがかちなら、オイラとすぐつくるっす!」


お前まで何、言い出すんだ!! 尻尾を振るな!!


「…マスター、もう猶予は無い。…今ここで、赤ちゃん作る。」


サラッと凄いコトを言うな!! 脱ぐんじゃない!!


「デヴィルラ!それよりも、俺達は魔導都市のコトを話しに来たんだろ!!」

「―む、そうであったな。済まぬ主よ。余としたコトが、ちと私情に流されたわ。」


4人はハッとなって、一時休戦。

それから魔王様に、これまでの経緯を話した。普通なら信じてもらえそうにないハナシだが、

魔王様も自分の愛娘が証人とあっては、疑う余地も無い。


「―そうか、やはり魔導都市の連中は、あれからずっと愚行を重ねていたか…。」

「それで…その魔導都市に入るのに、えらく難儀すると聞きまして、」

「うむ。話は見えた。特使として入りたいから儂にその手引きをせよ、と言うコトだな?」

「はい。」

「紹介状を書くのはやぶさかでは無い。だが、後々揉め事になっては困る。

こちらも一国を背負う身なのでな、相手は狡猾なだけに付け入られる隙は作りたく無いのだ。」

「父上!何を申されるか!この世界の危機なのじゃぞ!?」

「娘よ、まつりごとというモノは長期的な視点と、短期的な視点、両方から見なければならん。

例え、将来『あれは愚策であった』という非難を受けると判っていても、

民草たみぐさが今を生きるために、国体を維持するコトを優先しなければならぬ時もあるのだ。」


分かる。日本でもどこの国でも結局のトコロ、国民は『今日、明日の生活』が大事だもんな。

税金を上げなきゃ国が立ち行かない。でも上げたら国民が暮らせない。それは国の生産性を低下させる。

だから問題を先送りにしてしまう。そういったコトは古今東西、国家の共通の悩みだ。


「勇者殿、暫く考える時間をくれぬか?」

「―分かりました。」


魔王様は即、断りはしなかった。真剣に取り合ってくれているのは間違い無い。


「諸君。丁度今、コロシアムで祭りを開いている。儂が答えを出す間、暇潰しに見て来ると良いだろう。」

「おぉ!モンスターバトルか!主よ!これは見に行かぬと損をするぞ!」


それを聞いたデヴィルラは途端にテンションが子供のようになり、俺の手を引いてどんどん進んで行く。

…いや、確かに子供なんだけどさ。 こう、お姫様の威厳って言うか、何と言うか…。



そんなこんなで、俺達はコロシアムに来た。第一級の賓客扱いでVIP席だ。

デヴィルラが観覧席に現れると、観客全員が起立して歓声を送る。彼女が手を挙げるとピタリと収まる。

何か、アニメで見た青い肌した総統閣下みたいだぞ。 うーん、王族ってスゲェわ、やっぱ。


「何か私達、場違いのような気が…。」

「なんか、へんなきもっちっす…。」

「…よきにはからえ。」


うん、パトル。それが戦闘時以外での緊張感ってヤツだよ。

マーシャは肝が座ってるなぁ…。マイペースなこの子らしいけど。


モンスターバトルは、文字通りモンスター同士で戦わせる娯楽だ。

モンスターは生物では無いし、いくら倒してもなかなか数が減らない。その大量の『在庫処分』にも一役買っているそうだ。

本来モンスターは対人兵器として作られたので、モンスター同士は普通、争わないのだが

こうして無理矢理一箇所に寄せ集めると、縄張りの確保で戦い始めるらしい。


このモンスターバトルはどのモンスターが生き残るかギャンブルにもなっていて、観客は見るのも賭けるのも自由。

非常に人気の高い娯楽で、今回のような祭りの日には特別プログラムが用意されてるのだそうだ。

よく知らんけど、競馬の有馬記念とか、天皇杯とか、ああいうカンジなのかな…


何試合か前座らしい組み合わせがあり、いよいよメインタイトルだ。

デヴィルラはすっかりはしゃいで、ウキウキワクワク状態だ。こういう彼女も新鮮で良いな。

ゲートが開き、モンスターが入場して来る。


「あれ?数が多いな?1対1じゃないのか?」

「メインはこのバトルロワイヤルじゃ!予想が難しいので、賭けも捗る。大穴もあり得るしのう!」

「えっと、出場モンスターは…、」


【ガンセキゴーレム】動きは鈍いが攻撃力と防御力が高い。(2体)

【タンガンサイクロプス】攻撃力が高く動きも鈍くない。視界が狭いのが弱点。

【ヒリュウワイバーン】この中で唯一飛行可能。素早く、火炎も吐く。

【トウロウマンティウス】両腕の鋭い鎌で何でも切り裂く。スタミナに難あり。(2体)

【ムクロワイト】巨大なドクロから蛇状の背骨が伸びるモンスター。魔法を使う。

【グンタイアント】この中では最弱だが、隙あらば仲間を呼び大軍で制圧する。(5体)


どれも上級から最上級のモンスターだ。自分だったら、どの相手もお断りしたい曲者揃いだな。


「あの複数いるヤツらは?」

「あれがこの賭けの面白さじゃ。単純にモンスター名で掛ければ、どちらか1体でも生き残れば当たりとなる。

2体いれば当たる確率2倍というワケじゃ。無論、高配当を狙って、各番号でどれか単騎に絞っても良い。」


モンスター達にはそれぞれ番号が振られている。

なるほど、格下のモンスターは数を多くして、賭ける醍醐味を増やしてるってワケか。

グンタイアントはどんどん増えるから、そこはどうなるのか?と聞いたら、

番号のある最初にいたヤツが1体でも残らないと、どれだけ仲間を呼んで勝っても無効になるそうだ。

この場合、主催の総取りになる。こりゃ上手く考えられてるなぁ…。


「さぁ!試合開始じゃ!!」


そばにある飲み物の氷が溶けているのにも気付かない程の興奮っぷりで、デヴィルラは開始の宣誓をする。

割れんばかりの大歓声に包まれるコロシアム。


モンスター達の足枷が外される。さらに興奮度は上がり大きくなる歓声。

―だが、モンスター達は戦おうとしない。

グンタイアントだけがグルグルと辺りを徘徊し、警戒音を出している。


「ふむ、高レベル同士、まずは様子見かのう?」

「…それにしては変。戦う意思が感じられない。」

「そーっすよねー。あれは、たってるだけっすよ。」

「何かおかしいですね…。」


余りにも見合ってる時間が長い。

魔族のトレーナーがモンスター達に発破を掛けるが、連中はびくとも動かない。

興奮していた観客も、この異様さにザワ付き始める。


―と、止まってるモンスター達の目が、一斉に赤く光った!

咆哮一声!!次の瞬間、信じられないような光景が目の前に広がる!!


ガンセキゴーレムは2体ともしゃがんでブロック状態になり、その上にタンガンサイクロプスが飛び乗る。

その両腕にトウロウマンティウスが取り付いて、背中にはヒリュウワイバーンが留まる。

そして兜のようにムクロワイトが頭部に被さり、7体のモンスターは1対の巨大モンスターに姿を変えた!!


「合体!?」

「何じゃ、これは!?」


まるで合体ロボット玩具だ。合体した巨大モンスター、いや、合体モンスターは複合した叫び声を上げると、

トレーナーとグンタイアントを弾き飛ばし、コロシアム会場を破壊し始めた。

逃げ惑う悲鳴が響く。


「馬鹿な!?モンスターは我等魔族を襲わんはずじゃぞ!?」


身を乗り出して驚くデヴィルラ。

合体モンスターは、さらに壁を、柱を粉々にし、逃げる魔族の観衆を襲っている。


そこに一陣の風のように舞った影があった。

その影は巨大モンスターに一撃を加えると、宙で回転してフィールドに着地した。

―マーシャだ!!


それを見て、パトルも飛び出す。


「デヴィルラ!みんなの避難の誘導を頼む!」

「任せよ!」


俺とプリスもフィールドへ向かい、パニック状態の観客席を降りて行く。

デヴィルラは会場に詰めている兵士を統率して、避難指示を出している。


マーシャがもう数発の攻撃を入れてる最中に、パトルが武器をメイスにして参戦する。

だが、ガンセキゴーレムで出来た強固な脚は砕けず、微小な石の破片を飛ばす程度だ。

俺は取り敢えず残ったグンタイアントのトドメを刺す。ここで仲間を呼ばれて増えられてたら面倒だしな。

プリスは、兜になったムクロワイトが魔法を放って来るのに備えている。


マーシャが蹴りを見舞おうとする。

が、合体モンスターはその巨体で空を飛んだ!マーシャの蹴りは届かない!

背中のヒリュウワイバーンの翼だけで、あの超重量級のボディを浮かせられるのか!?

空振りで着地したマーシャが、無表情ながらムッとしている。


「…ズルい。」

「プリス!オイラにやったみたいに、かぜのまほーでとばせないっすか?

「駄目です。相手は自由に飛べるので、簡単に避けられてしまいます。」


人形を取り返しに行ったダンジョンでやった、アレか。

あれは、相手が飛べないボスゴブリンだったからなぁ。場所も狭くて避けられ難かったし。


そこへ、観客の避難もほぼ終わったのか、デヴィルラが勇んでフィールドに飛び込んで来た。


「待たせたな、主よ。真打ち登場じゃ!」


これでパーティーは全員集合だ。

合体モンスターはゆっくりと着陸する。鈍い地響きがコロシアムを振動させる。


「ケインさん!私達に指示を!!」


プリス、パトル、デヴィルラ、マーシャ、4人一緒の初めての戦いだ!!

…一応、俺もいれて5人ね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ