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1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
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第8話「求めよ さらば与えられん」その1

※前回までのあらすじ


『神々の住まう場所』に行くのはかなり難しいコトが分かった。

そんな中、俺はダンジョンの落とし穴にはまり、そこで正体不明のヤツに出会う。

俺はヤツに『最強装備シリーズ』の在り処を教えてもらう。

後にはそのシリーズの内の1つ、ブーメランが落ちていた。



「順を追って話すわ。」


中央都市の宿に戻った俺達は、今まで分断されてた間の情報交換をすべく、部屋でテーブルを囲んでいた。

俺はまず、落とし穴の先にあった密室で出会った謎の人物?の話をする。


「こう、ボロボロの麻袋みたいなフードを被っててさ、顔は見えなかったな。」

「うーん、さばくにすんでるれんちゅーっすかねー?」

「砂漠にそんな種族がいるのか?」

「いるっすよー。ぼーけんしゃをおそって、みぐるみはいでくあばれんぼーっす。」

「でも、ケインさんは襲われなかったんですよね?」

「あぁ、敵意は感じなかったな。」

「んー、ふくだけひろったのかもしれないっすねー。」


つまり、他の誰かが砂漠族の服を手に入れて着ていた、と。

あんなボロをわざわざ着る必要があんのかね?よっぽど着るモノが無かったのかなぁ?


「主の話だと、そやつは分厚い石の壁をブチ破ったそうじゃな?魔法か?」

「いや、確認は出来なかった。突然のコトだったんで。」

「パトルはどう思います?パトルならあのダンジョンの石壁を壊せますか?」

「そーっすねー。うーんとおもたいはんまーで、いいあたりがでればいけるかもしれないっすー。」


つまり、重量のあるハンマーでクリティカルが出れば壊せるかも、と。

そんな威力のある一撃を、あいつは何をどうやって出せたんだ?


「それで、ブーメランを拾ったんでしたっけ。」

「あぁ、そう。コレだ。」

「ふむ、確かに剣やロッドと同じ刻印じゃ。相違無かろう。」

「で、コイツがこう、変形するんだ。」


俺はV字のブーメランから、拾った時のM字型の形態にした。


「うほー!おもしろいっすねー!みせてほしーっす!」


M字になったブーメランを渡すと、パトルはそれを横から見たり裏返したりと、嬉しそうに眺めてる。


「でも、変形する意味は何でしょうか?」

「んっと……ロマン?」

「何ですか?それ?」


うっ!プリスたん、そこは突っ込まないでおくれよ!

変形メカは譲るコトの出来ない男のロマンなんだよ!


「…む?、パトル、手を止めい。」

「はえ?」

「どうした?デヴィルラ?」


ついとデヴィルラは、ブーメランを眺めていたパトルの動作を止めさせた。

パトルはブーメランのM字になった両端を指で持って、そのままの格好でフリーズしている。

デヴィルラはしばし顎に手を当てて考えていたが、


「ふむ……よもや…こうか?」


そのM字になったブーメランを指で押し、それを持つパトルの手ごと、彼女の顔に持って行った。

そしてそれは、額にピタリとはまる。

それを見たプリスが、ポンと手を叩く。


「!!これ、ヘッドギアですか!?」

「―だな!!」

「はええー!?」


何と、『最強装備シリーズ』のブーメランは、変形してヘッドギアになるという機能付きだった。

M字になったブーメランは、額と頬を防護する兜でもあったのだ。

加えてこれは、多くの武器を携える時の解決策でもある。

いくら強力な武器だとはいえ、弁慶みたいに背中にごっそりと大量に背負っていくワケにも行かないからな。

これなら使わない時には防具にもなって一石二鳥だ。


「もしかして、『最強装備シリーズ』ってのは…、」

「うむ、全て揃えると防具一揃えにもなるのやも知れぬ。」

「見えて来ました。『最強武器』では無く『最強装備』と銘打ったのも、それが理由なのでしょうか?」

「恐らくな。今まで全貌が掴めず、発見も進まなかったのもこれで合点がいったわ。

誰も彼も『武器』と思い込み探していたのでは、このように『防具』になっていた場合見逃しかねん。

情報も錯綜し、それでは到底揃えるコトは敵わんであろうからのう。」

「確かになぁ。」


剣やロッドのような純粋な武器もあるから、そっちに目が行き、ごまかされるってのもあるだろうしな。

これからは防具っぽいモノにも注意が必要だな。


「でー、これ、どーするっすかー?」

「あぁ、悪い。放ったらかしにしてたな。」


ヘッドギアを付けたパトルが、訴えるような顔で俺を見ていた。


「うん、それはお前が付けてろ。」

「え?これもっすか?でも、オイラばっかりわるいっすよー。」

「いや、今のやり取りで決めた。これから先、『最強装備シリーズ』は基本としてお前に全て渡す。」

「えぇー!?い、いいんすかー!?」

「前衛壁役をガッチガチに固めるのは基礎中の基礎だしな。

今まで通り戦況を見て、その時々でその中から俺達に貸してくれれば良い。」

「み、みんな…プリスやデヴィルラもそれでいいんすかー?」

「はい。元々、重い武器はパトルしか扱えませんし。」

「うむ。異論は無い。」

「あ、ありがとうっす!ボス!みんな!…オイラ、これからもがんばるっすよー!!」


生まれながらの戦士で、どんな武器でも扱える獣人族。

『最強装備シリーズ』は、まるで、そんなパトルのためにあるような装備だよな。


さて、次だ。 これが問題だ。

あいつの言ってた『近くて遠い場所』とは何処ぞや?

そこに『最強装備シリーズ』があると言っていたが…。


プリスが地図を広げ、一点を指差す。


「それって、多分ここなのではないかと。」挿絵(By みてみん)


それはこの中央都市のすぐそば。俺が落とし穴にハマったダンジョンからも近い場所だ。

但し、それはあくまで二点間の直線距離。

実際にそこへ行くには、まず延々と北西に進む。そこからヘアピンカーブのように曲がって、

今度は延々と南東に戻るという長大なUターンコースを描く。

ここに1つの神殿があるらしい。


何、このすっげぇイヤらしい地形!!この世界を作ったのが神様だとしたら、

その神様、間違いなくゲーム制作スタッフ向きだよ!!

こりゃ確かに『近くて遠い場所』だわ…。


「でも、この場所に行くのはとても困難ですよ。」

「だろうな。距離が長過ぎる。」

「歩いて行けば順調に行って片道で一週間、往復二週間ほどだと思います。」

「うむ、その時点で攻略は不可能じゃな。」

「え?もうダメ出し!?」


デヴィルラが取り付く島もない断言をする。


「水と食糧の問題じゃ。この工程、途中に町も村も川も無い。補給が利かぬ。

加えて神殿に近付くと一面砂漠と来ておる。消耗も激しくなり、神殿に篭もる時間がひり出せぬわ。」

「ただ行って戻って来るだけでも難しい、ってコトか…。」

「にばしゃでいくのはどーっすかねー?」

「あぁ、それなら食糧と水はたくさん持って行けるな。」

「駄目じゃな。砂漠に入ってからは、その馬の分の水と食糧は全てこっち持ちになろう?あっという間に底を突く。」


う、そうか。ゲームと違って馬にも水とエサが必要なんだった。


「馬を潰す覚悟だったとしても、帰りは徒歩じゃぞ?一週間分の水と食糧を背負うか?」

「うん、無理!!」

「ケインさん…この場所、ギルドでも攻略難度は最高のSクラスだそうです。」


それ、先に言ってよ!プリスたん!

…まぁ、そういう難攻不落の場所にあるから『最強装備シリーズ』が世に広まらなかったんだろうなぁ。


「どーにかしていくほーほーは、ないっすかねー?」

「そうじゃな、有るには有る。」

「本当か!?」

「荷馬車を何両も連れて行く。そして次々に馬ごと使い潰し、肉にして食糧の消費を抑える。

帰りは仲間も1人づつ見捨てて行けば、その分の水と食糧で最後の1人くらいは帰還出来るじゃろうな。」

「却下だ!!!!」

「で、あろう? あるじ向きでは無いわな。」


デヴィルラは肩をすくめて苦笑する。


俺は地図を見つめる。何か上手いやり方は無いだろうか?

―ふと、工程の途中にある変な場所に目が行った。


「あのさ、ここって何かあるのか?」

「え?…あ、魔導都市ですか…。そこは、気にしないで下さい。」

「いや、そんなサラッと言われてもさ。…何なの?その魔導都市って?」

「魔法に関する研究施設です。数百年前の魔導大戦以前から存在する唯一の街で、最古の都市です。」

「ここで補給とか出来ないのか?」

「まず無理です。」

「即答!?」


そう語るプリスの様子は、いつもと違って素っ気無く冷たい。

まるで、これに関する話題はスルーしたいと言わんばかりで。


「ここは研究施設ですからね。研究員以外は街に入れません。」

「そんなに閉鎖的なの?エルフもそうだったけど、外交をしないんだな。」

「いえ、エルフは交流を断絶してるだけ人畜無害と言えますが、

ここは研究目的と称して、色々と良からぬウワサしか入ってこないトコロなんです。」

「悪の秘密結社か!?」

「近いのう。魔導対戦時に対魔族用の兵器を作っていたのも、ここだと聞く。」

「そうなのか…。触らぬ神に祟り無し、ってヤツか。」

「そういうコトです。」


あぁ、プリスのように神聖魔法を真面目に使う僧侶にしてみりゃ、

ここはマッドサイエンティストの巣窟みたいな場所なんだろうな。


「ここって、なにがあるんすかー?」


地図の一点を指してパトルが言う。

中央都市の西側にある、切り立った崖に囲まれた山だ。


「そこですか?そこは関所ですよ。」

「え?関所って…デヴィルラが居た…?あれは中央都市の南だろ?」

「いえ、私達がデヴィルラと会って通って来たのは南大陸の関所で、この地点は南西の大陸を管轄する関所です。」


え!?関所っていくつもあるの!?

俺が驚いてると、デヴィルラが待ってましたとばかりに語り出した。


「うむ、ならば説明せんとな。この世界は、今我々がいる北の大きな大陸と、その南側にある3つの大陸で出来ておる。

その3つの大陸の北端に、それぞれ余がいたような関所が設けられており、

そこで同様に『ふるい』を掛け、弱い冒険者共が不用意にこの北の大陸へ渡って来ぬようにしておるのじゃ。」

「じゃ、ここにも魔族がいるのか。」

「左様。確かここには今…余のメイドがおるはずじゃのう。」

「メイドが関所の番人なのか!?」

「メイドと言っても侮る無かれ。奴は余の近衛兵を務めておったでの。実力は折り紙付きじゃ。」


戦闘系のSPメイドかよ!!

そんなのアニメや漫画だけの代物かと思ってたけど、いるトコロにはいるもんだ…。


「む?」

「どうしました?デヴィルラ?」

「…これは…使えるやも知れぬ。」

「なにがっすか?」


途端、デヴィルラは俺に向かいニヤッと笑うと、


「主よ。難攻不落の神殿への道、僭越ながら余が開こうぞ。」

「え!?」


自慢気に、無い胸を張って言い放つのであった。

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