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1クールで終わる異世界冒険  作者: 歩き目です
13/39

第5話「幼女×幼女×幼女」その1

※前回までのあらすじ

北の大陸へ渡るため、関所を調査しに行った俺達が見たものは、

門番をする褐色ロリ、魔王の娘デヴィルラだった。



俺がデヴィルラと戦うと聞き、

プリスが立ち止まり、信じられないといった表情で俺を見る。


「ケインさん、戦うつもりだったんですか!?てっきり逃げるための詭弁だと思ってました!」

「ボス!まじっすかー!?」


流石に戦い大好きのパトルも、これには驚いたらしい。

うん、ここはシッカリ俺の気持ちを伝えておくべきだな。

俺は2人の前に向き直る。


「実はな、あれから色々考えたけど…やっぱり俺、北の大陸に行って神様に会ってみたいんだよ。

どーしても知りたい、分からないコトがあってさ…。」


プリスとパトルは黙って俺の話を聞いてくれる。

俺がこの世界に来た理由、日本の影響がある理由、元の世界に帰れるのか、とかとか。

ハッキリ言えないもどかしさは、本当、スマンと思ってる。


「そこに行くには桁外れに強いモンスターとも戦わないといけないだろうし、何よりまずは

このデヴィルラっていう超難関を突破しなくちゃいけない。正直、見通しすら立たない。

いや、もう負けるイメージしか無い、ってのが今の正直な気持ちだよ。」

「でも、行きたいんですね?」

「あぁ、俺の存在理由…ていうのかな?ゴメン、上手く言えなくて。」


静寂。…俺が言えるコトはもう無い。

プリスはポケットに手を入れると目を瞑り、何かを握るかのように手を動かした。

と思ったら、


「ありがとうございます。」


と、お礼を言われた。


「え?お礼?」

「町を出る時の言葉、覚えていてくれたんですよね?」


町を出る時の言葉。それは、


『ケインさんに付いて行くのも、私の勝手です。私、ケインさんのためなら……どんな危険も厭いませんよ?』

『ボスのいくところがオイラのいくところっす!!』


「今度は置いてけぼりにされずに、ちゃんと連れて行ってくれるんですよね。

ですから『ありがとう』です。」

「どこまでもいっしょっすよー!」


2人がどうしてここまで俺に尽くしてくれるのか、全然分からないけど、

でも、彼女達の誠意には俺も出来る限りの誠意で応えるべきだと思った。

それが例え、女でも、子供でも、区別無く。


「それに…ケインさんの顔、死にに行く時のような顔じゃありません。何か抵抗してやろう!って考えてる顔です。」

「そうっす!おとーとたちがイタズラするときのかおっすー!」


弟いたのか、お前。


「あぁ、やるなら勝ちたいからな。神様に合うまでは死ねない。いや、その後だって生きていたいさ。」


それから先は無言で3人で見つめ合う。

俺達の間には言葉を超えたカッコイイ『何か』が互いの心にあるような気がした。 多分。



冒険者の町に戻って来た俺達。

そのままギルドに直行する。もちろん、関所に行ったコトは秘密だ。

ギルド員には『まだ思案中』とだけ告げてある。


そしてギルドの中の、とある一室。

ここに用があって来たのだ。


「―資料室…ですか?」

「ほんがいっぱいっすねー。オイラ、ほんをよむとねむくなるっすよー。」


やっぱりパトルはそういうキャラか。


「ここで何を?」

「デヴィルラが見せたカードにあった武器や防具、道具やモンスター、覚えているか?」

「え?はい。大体は。見れば思い出せるかと。」

「よし、あのカードの20品、全部ここにある資料で調べるんだ。理由は探しながら話す。」

「…分かりました。」

「りょーかいっす!」


ギルドの資料室には、確認されている限りの古今東西における全ての武器、防具、道具、モンスターが

書物となって記録保存されている。

冒険者ならばここを無料で借りれるのだ。本の持ち出しは厳禁だが。


俺がデヴィルラの提示した『ハンデ』に、何か引っ掛かる気持ちを抱いた理由。

それは3つある。


まず1つ目。

『ハンデ』そのものの存在だ。

関所を通るには、デヴィルラに冒険者としての強さを示さなくてはならない。

それなのに、何故ハンデを用意する必要がある?

ハンデ付けて合格しても、それは本当の強さとは言えないだろ。

強くなければ、北の大陸へ行けたとしても強力極まるモンスターに殺られるだけだ。

まるで『合格したくばハンデを受けろ』と誘ってるかの様だ。


次に2つ目。

カードにあった品々のコトだ。

一見、どれも素晴らしい特級品のものばかりだった。 だが、そこが腑に落ちない。

品物の説明文がどれを見ても、使った時のメリットしか書いていなかったからだ。

まるで、詐欺師が商品を売り付ける時の手口そっくりじゃないか?

『タダより高いモノは無い』

それに普通、ああいうのは伏せたカードから1枚引かせる、とかだろ。

全部オープンにしてジックリ選んで良いとか、条件が良過ぎるんだよなぁ。


そして3つ目。

合格者、つまり北の大陸へ行けた冒険者の数だ。

今まで50人以上が挑戦したのに、デヴィルラは合格はわずか数組と言っていた。

『ハンデ』があったとは思えない惨憺たる結果じゃないか。


これから推測されるコトは2つ。


●あのカードの品々には裏がある。

●デヴィルラにはハンデがあっても無くても勝つコトの出来る、何らかの有利性がある。


これを念頭に作戦を考えないと、俺達ももれなく躯の仲間入りだ。


「ありました!コレですね。」

「こっちもみつけたっすー!」


プリスがカードにあった剣の1本を資料から探し出して来てくれた。

パトルは字を読むと眠くなるそうなので、挿絵を見て該当するモノを探してくれている。


どれどれ…


武器【雷神剣】攻撃が当たると同時に激しい雷撃が敵に落とされる。だが魔族しか装備出来ない。


うわ、やっぱり!! この冒険者の町にいるのは人族と獣人族だけだ。

これをホイホイ喜んで選んでも、無用の長物だ。

で、パトルが探して来たのは…


武器【双撃剣】攻撃力が2倍になる。引き換えに素早さが0になる。


何じゃこりゃー!! これじゃ敵に当てられないだろうが!!

攻撃力2倍だろうと10倍だろうと、当たらなければどうというコトは無い!


その後も、


防具【防魔の鎧】あらゆる属性魔法を完全に封じる。だが3発防ぐと効果は切れる。


道具【奇跡のしずく】一定時間の間、攻撃力と防御力とすばやさと回避率が跳ね上がる。しかし致死の猛毒である。


そんなんばっかや!!


防具【生命の鎧】戦闘中、体力が徐々に回復する。


道具【超エリクサー】パーティー全員の体力と魔力を完全回復させる。


みたいに、フェイクじゃ無いモノもあったが、微々たる回復や1回こっきりの完全回復くらいじゃ

無尽蔵の魔力を誇るデヴィルラの前では、少し寿命が伸びただけってコトか。

つまり、デヴィルラに取ってはコレを選ばれてもハンデでも何でも無い、と。

こういうフェイクじゃ無いモノをいくつか混ぜ込むのも、他のフェイクアイテムをカモフラージュするためか。


どうするよ?本当に現実の無理ゲー&糞ゲーだよ。

ちょっと運営さん、修正パッチありませんか?


後はモンスターだな。


「奴隷獣に関してはデヴィルラが言った通りみたいです。」


奴隷獣、首に掛かったプレートの効果でモンスターを従属させる。これにも何かトリックがあるに違い無い。

だが、プレートの効果には嘘偽りは無いようだ。


あらかた調べ終わったので、ヒマになったパトルは俺の顔を見て尻尾を振っている。

そう言えば、俺はコイツのボスになったんだよなぁ。

プレートでモンスターを従属させると、やっぱりモンスターからボス扱いされるんだろうか…。

…………!!


待てよ!? 待てよ待てよ待てよ!?

ひょっとして…、


「プリス!プレートを掛けられるとモンスターは言うコトを聞く。そうだよな?」

「?はい。そうですね。」

「敵の言うコトでも聞くと思うか?」

「それはあり得ません。敵の言うコトまで聞いていたら、戦闘で使えませんよ。」

「じゃあ、誰の命令を聞く?」

「それはもちろん、モンスターにプレートを掛けた……あっ!!」

「だろ!?」


プレートを掛けられたモンスターは『奴隷』であって、人懐っこい『ペット』では無いのだ。

奴隷が従事する相手は契約で決まるハズだ。


「それは誰だ?」

「モンスターにプレートを掛けてカードに封印した者。…デヴィルラです!」


大した王女様だよ、あの褐色ロリは!!

20枚のカードは実質上どれを選んでもハズレだ!むしろデメリットしか無い!!

言うコトを聞くと思ってたモンスターが攻めてきたら、選んだ奴の不意も付けるし。心理的ショックもでかいハズだ。

デヴィルラ戦を攻略したいのなら、カードは辞退するのが正解だ!


しかし、それは実力が十二分にある冒険者だけに言えるコト。

俺が彼女と戦うなら、絶対に何らかの策を講じないと瞬く間に殺られてしまう。


奴隷獣がこちらの命令を聞くのであれば、壁になってもらって、デヴィルラの魔法を防いでいる間に

攻撃を叩き込むコトも考えたが、それも不可能だ。


ゲームでの名言がある。

『勝負は始まる前に決着がついている。』

勝つための下準備を綿密に、用意周到に行うコト。そして相手にそれを悟られないコト。

デヴィルラはこれまでそれを確実に成し、冒険者を倒して来たのだ。


「子供だと思って油断させ、ハンデが付くからと言って安心させ。見事な罠です。」


デヴィルラは多くの冒険者を殺してきたが、これはこの世界では犯罪にならない。

彼女と冒険者が互いに合意の上で戦闘をしただけだ。

強くない者はデヴィルラに負けて死ぬ。もし北の大陸へ行ったとしても強力なモンスターに殺られて死ぬ。

気を緩め覚悟も無い連中は、遅かれ早かれ同じ運命を辿る。それが冒険者という職業なのだ。いわゆる自己責任だ。

あたかもデヴィルラが、その厳しさを身をもって教えているかの様に。


デヴィルラ攻略の糸口は無いか?

冒険者の油断を突くのが彼女の作戦であれば、この作戦でほぼ完封状態の今の状況は、

逆に考えれば、デヴィルラが唯一油断するであろう可能性を秘めたポイントだ。

ここに一縷の望みがある気がする。 多分。

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