決勝の前に
話しかけてきたのは見覚えのある人だった。それは学校で、だった。
「えーっと、誰だっけ。」
「え!?私だよ!山坂だよ!委員長してたんだけど、覚えてないの!?」
悪いが全く覚えてない。そもそも、そうだとして何で俺に話しかけてきたんだ?
「あ、うん。そうだったね。覚えてるよ?山坂さん?」
「絶対覚えてないでしょ!なぜ名前まで疑問系なの!?」
「それで、何のよう?」
「何のようって、私が聞きたいことあるのよ!何であの国から出ていったのよ!」
「面白くなかったから。」
それ以外にもあるけど、一番はそうだな。
「面白くないって、そんな理由が通じると思ってるの!?残された私がどんな気持ちだったか!」
え!?私の気持ちって知らないよ!そんなに話したこともないし、ここに来てからも接点なんてほとんどなかったのに。
「いや、知らないよ。残されたって他のクラスメートも残ってたでしょ?」
「みんな国のために、って感じだし。私とみんなで思ってること違ってるし。」
「違う?何が?」
「あなたが出ていった時、私は残ってたよね。その時もクラスメートのことを心配するんじゃなくて、国を裏切ったことに怒ってたんだから。私はそれが理解できなくてみんなに話したんだけど、聞いてくれないし。」
ふーん。つまり洗脳でも受けてるのか。まあ、そうだったとして、俺には聞いてないしこの人にも聞いてないみたいだから、そこまで強いものじゃないみたいだな。
「大変だったね。で、何でここにいるの?」
「それは、私がこのイベントを勝ち残ったからよ!Eブロックを勝ち残ったの。」
あー、他の人が言ってたな。Eブロックは女の人が勝ち残ったって。それがこの人だったのか。
「じゃあ、敵だな。よろしくね。」
「あなたの試合見てたわよ。すごい強かったわね。けど、私も強くなったんだから。あなたが出ていった後、ダンジョンに行って特訓したんだから!私はあなたに勝つわ。」
「ふーん。頑張ってね。まあ、無理だろうけど。」
俺はニヤニヤとうざい笑顔を山坂さんにかましてやった。山坂さんは一瞬イラついていたが、すぐに戻して、
「そんな挑発には乗らないわよ!試合で覚えときなさい!」
そう言って、ステージに立ち去っていった。カッコつけてたけどまだ時間じゃないしな。あ、それに気づいて戻ってきた。
「べ、別に勘違いしてた訳じゃないんだから!」
「はいはい、天然だね。」
「うー。もう、バカ!」
顔を真っ赤にして、プンプンって音が出てると思うぐらい怒ってたけど、怖くはなかった。
俺たちが話していたら、他の決勝進出者がコロシアムに入ってきた。Aブロックの奴は、
「あ、Bブロックの人、今日はよろしく。」
って言ってきた。俺も「ああ。」と返しといた。Cブロックの奴は何も喋らずに壁にもたれ掛かってる。けど、Dブロックの勝者である鈴木に関しては、
「お前だけは必ず潰す」
といきなり言ってきた。俺としては何でここまで嫌われてるのか分からないんだけど。まあ、俺としても来るなら叩き潰すだけだ。
全員集まった所でアナウンスがかかった。
「では!決勝を始めます!決勝出場者はステージに入場してください!」
と。俺たちはぞろぞろと入っていった。今から決勝が始まるんだと思うと、少しワクワクしてきた。