Aブロック
試合が始まると同時に参加者たちが戦い始めた。剣を使ってる人が多くて、すごいガヤガヤしてる感じだった。けど、目立ってる人もいた。
まず1人目はステージの端で寝てる奴。こいつはやる気あるのか分からないわ。しかも、あれ日本人だわ。周りの人は気づいてないのか、まだ関わってないみたいだけど、大丈夫なのか?鑑定してもいいけど戦いで判断しようと思う。何でもすぐ分かるなんて面白くないからな。
2人目は逆にめっちゃ落としていく奴。この人は女の人だな。戦い慣れしていて、受け流すように人を落としていく。ダメージは与えてないみたいだからこのイベント用の戦いかたをしている人だな。
3人目は獣人で速さで勝負しているらしい。耳と尻尾が生えていて、それが毛で覆われている。あれさわりたいなぁ。こいつも女だな。この人は爪でダメージを与えて蹴りで落とすみたいだ。
今見て面白そうな人はこの3人だな。このブロックにも勇者はいるが大抵は周りの状況を見ているか弱そうな人を狙うだけで面白くない。とりあえずこの3人に注目していいだろう。
今見て思ったんだけど、落とされた人はゼッケンの番号が黒から赤に変わるみたいだ。それで落ちたか判断しているらしい。始まってまだ5分位だがもう半分は落とされていて、まともに立てる奴なんてほとんどいない。大多数が大怪我などをおっていてこのイベントの荒さが分かった。観客はそれを望んでいるのか歓声は大きくなっていく。
「行くぞ!小娘!俺が落としてやる!」
そう言って、大柄な男がさっき言った2人目の人を落としにかかった。けど、2人目の人はその攻撃を避けて体力を削っているみたいだ。それに隙を見ては攻撃もしていて、結局一撃も攻撃を当てることはできずに、その男は落とされていた。
強い人が残るまでは展開が早いらしく、すでに残っているのは9人になっていた。ここまでは逃げるだけで生き残れるが、ここからは戦わないといけない。あの3人も残っているしな。あっ、とうとう1人目がサボってること他の8人にばれた。
「おい!お前!そんな舐めた態度とるなら今すぐ立ち去れ!ここには勇気のある奴が残れるんだ!お前みたいな奴が残っていい場所じゃない!」
そう言ったのは年齢が高めなおっさんだった。このイベントに誇りでも持ってるんだろう。その声に周りの残っている人の視線も集まっている。1人目はめんどくさそうに立って、
「あ?俺がどうしようとおっさんには関係ないだろ。気に入らないなら来いよ。このイベントそういう物だろ?」
「若造が!いい気になるなよ!」
そして、おっさんは持っていた剣で斬ろうとしたんだが、
「はぁ。こんな面倒なの出るんじゃなかった。」
そう小声で言ってそのおっさんの剣を弾いた。
「なっ!何をした小僧!」
「もういい。お前うるさい。」
1人目はそう言っておっさんの腹を蹴った。おっさんはそれを受けきれずにそのまま場外の壁に埋まる勢いで飛ばされていた。1人目はそのままそこにまた寝転んでいた。
おっさんはこのイベントでは、人気者だったのか、落とした1人目に観客はブーイングを送っていた。それでも1人目は動じることなくまた寝ていた。
でも、他の奴がその態度を許すわけもなく襲いかかっていた。1人目は立つのも面倒なのか火の魔法で自分の周りに壁を作って近づけないようにしていた。
「ちっ!まずは他の奴からだ!まずはお前だ!」
そうして、狙いは3人目の獣人に変わっていた。
「獣人が人間様の国に来てるんじゃねーよ!」
「まずはお前からだ!獣人!」
やっぱり獣人は差別の対象なのかな?男2人組が狙っていた。でも、こいつらじゃああの獣人には勝てないな。俺はそう思っていた。なぜなら、あの獣人はまだ本気を出していなかったからだ。明らかに手を抜いている。
「うー、にゃんでそんなことを言うんだにゃ?」
そんな気の抜けるような喋り方でその獣人は2人と戦っていたんだが、やはり、本気ではなかったらしく、言い方にも腹が立ったのか今までとは段違いな速さで男たちに攻撃を与えていた。男たちは反応することすらできずに傷が増えていき、結局すぐに落とされていた。
残りは6人。あの3人以外は勇者だった。やはり、他の参加者と比べて勇者は強いみたいだ。しかもこの3人はさっきから組んでいるらしく、いつも一緒にいた。そのうちの男が話し出した。
「俺たちは勇者だ!俺たちと戦えばただではすまない!だから、リタイアしてくれないか?」
と。それを聞いて1人目は無反応。2人目と3人目は怒っているようで、
「舐めないで!私はこのイベントに絶対勝たなくてはいけないの!あなたたちが組んでても私は負けない!」
「そうにゃ!私はお前らにゃんかにこんにゃ所で負けられにゃいにゃ!」
2人はそう言って、勇者たちに攻撃を仕掛けた。勇者たちはやれやれといった表情で剣を構えた。1人は魔法使いのようだが、魔法を使う様子はない。
「2人とも女の子だから傷付けたくはなかったんが。これならしょうがないな。」
元から3対2なのもあるが、何より勇者という名に恥じない強さは持っているようで2人は押され始めた。
「くそっ!こいつら強い!」
「私の速さにも着いてきてるにゃ!」
それでも頑張っていたんだが、最初に2人目が斬られて、その隙に他の1人が止めををさして、落とされていた。そうなると3人目も耐えられないようで同じように落とされていた。
「はぁ。てこずらせやがって。」
こんな勝ち方でも、観客は盛り上がるようで司会も、
「やはり、勇者は強かった!残りは1人だ!」
と、まるでヒーローの様に扱っていた。そして、1人目はと言うと、
「うわー、女の子に3人で行くとか、お前ら勇者の恥だな。そこまでして勝ちたいのかね。」
「お前に何が分かる。お前も勇者じゃないのか?日本人だろ。」
「そうだけどね。お前らと同じだと思われたくないわ。」
「そうだな。俺たちもお前みたいな戦いもしないような奴と同じだと思われたくないからな。さっさと落ちろ!」
3人組は1人目に全員で襲いかかった。でも、
「そもそも、3人で勝てるとでも思ったのか?」
そう言った瞬間まず1人が落とされて、残りの2人が驚いている間に、もう1人落とされた。残ったのは偉そうに喋っていた奴だけだった。
「何だ!お前何者だ!なぜ勇者の俺たちより強い!」
「知らなくていいよ。お前は俺に負けるんだからさ。」
「くそー!くらえ!」
そいつは話してる途中で魔法を放った。火属性で大きい玉を1人目に直に当てていて、勝ったと思ったのか、
「ふん!俺に逆らうからこうなるんだ!同郷だったからな、殺さずにいようと思ったのにな!アハハハハ!」
そう笑っていたんだが、火が一向に消えないことに焦って、その中から1人目が出てきたときに、
「な、なぜ生きてるんだ!俺の魔法をくらって生きていた奴なんていなかったぞ!」
「なら、俺より弱かったんじゃね?まあ、お前うざいからさっさと落ちろ。」
1人目は徐々に近づいて行ったら、
「う、うわー!」
と言って自らリタイアした。これで、優勝は1人目に決まった。
「ひょ、勝者は291番だ!」
あ、あの人291番だったのか。番号見てなかったわ。でも、顔は覚えたから、次あったら分かるわ。それに、司会もあいつが勝つと思わなかったのか、噛んでいた。
とにかく、Aブロックからこのイベントは波乱の予感がした。