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第7話 美少女名探偵マリッカ(230)

 マリッカさん、見た目は高校生くらいの金髪美少女。魔法使いコスプレのような、ローブととがった帽子は紫色。向こうなら、中二病扱い間違いなし。でもただの中二病少女でない事を、長くてとがった耳が示している。


「ギードに聞いたが、記憶がないんだとな。お主が望むなら、何とかしてやれるが、どうする?」

「思い出したくないことがあってこうなったのかもしれないので、今はこのままで良いです」


 記憶がないんじゃないことがばれかねないので、遠慮する。


「まあ、それもええか。して、イーリス、妖精はどこじゃ?」


 あれ? いつの間にか、ハコネが居ない。


「村に帰るまでは居ましたよ。どこ行ったんでしょう?」

「妖精を見たくて大急ぎで来たんじゃが、サクラのお供と言うのなら姿を見せるじゃろう。後でもええか」


 あいつが何か理由があって身を隠したのなら、このままかもしれない。暇だからついてきてただけだし。




 ギード、マルレーネ、ハンスも帰ってきて、お婆ちゃんを囲む一家。ただしお婆ちゃんはロリババア。

 昨日聞いた通り、マルレーネはマリッカさんの事をとても尊敬している。マリッカさんはそちらに掛かりきりだ。


 ハコネが居ないか外へ探しに出る。別に、ハコネが心配とかそういう訳でも無い。ちょっと気になっただけだ。ギード宅を離れ、井戸を覗いたり木を見上げたりして、トイレを覗いたらそこで遭遇した。


「井戸とかごみ入れとか、そんなところに隠れないわよ!」


 いやトイレに隠れるのも大差ない。


「ここに隠れてたんじゃなくて、サクラが他から隠れたから見えるように出てあげたのよ。見えないだけでずっとサクラと一緒に居たわ」

「あれ? そうなの? なんで?」

「マリッカってあいつの事だったのね。面倒だから会いたくない相手だわ」


 どんな因縁があるのか聞いたら、かつてのハコネの住処にハコネを研究しにやって来たらしい。勝手に近くに泊まり込み、追いかけまわし、観察日記をつけられた。危害は加えられてないが、そんな事を何か月もやられて、嫌になったらしい。確かに迷惑だ。そして、稀に見る暇人だ。さすが時間の使い方が、長寿命種。




 ギード家に戻ると、マリッカさんの話し相手はイーリスさんに替わっていた。


「そなた、魔法の発動場所が狙い通りにならないのだとな。ワシが見てやろう。ついて来るんじゃ」


 マリッカさん、イーリスさんと一緒に、村の外、俺が練習していた河原へ。


「まず、氷の刃を出してみるんじゃ。その次は、そこの石を凍らせてみよ」

「氷よ 刃の如く風の如く 切り裂け!」

「冷えよ 凍るまで!」


 前と同じ、氷の刃は狙いと違う場所に出た。石は霜が付くくらいに冷えているのが分かる。


「土壁も同じくおかしかったんじゃったか。つまり、そなた、場所を選んで行使する魔法はダメで、物を選んで行使する魔法は出来るんじゃろな。だとしたら」

「だとしたら?」

「この杖を持って、氷の刃を使ってみよ」


 マリッカさんは杖を出す。根元が角棒、先が丸棒、先端が半円。1、くらいの杖。根元が持ちづらいデザインだ。それを握って、アニメの魔法使いのように杖を前にかざして呪文を詠唱。


「氷よ 刃の如く風の如く 切り裂け!」


 魔法は、狙いの少し先に着弾。マリッカさんがうなづく。


「今度は、その手を右に向けてやってみよ」


 魔法は、狙いの右に着弾。法則性が出て来た。


「今度は、杖の先を目と目の間に当てて、同じことをやってみよ」


 狙い通りの位置に着弾! 何この杖!


「その杖は、ゼロの杖と言う。普通は、それの効果範囲では、場所を指定する魔法が狙い通りにならなくなるのじゃ」

「でも私の場合は、直りました」

「場所を指定する魔法は、術者が目で見た、自分と狙った場所の距離と方向、それをほぼ無意識に念じておる。魔法は、術者の位置から、その念じられた距離と方向の先に発動する」


 地面に絵を描きながら説明してくれる。


「この杖は、術者の位置でなく、杖の位置から、念じられた距離と方向の先に発動する様に変えてしまう魔法。持ち主は自らが魔法を使う際には鼻に当てれば狙い通り、相手は自らの位置を起点に出すべき魔法が、杖を起点に変えられてしまい、狙いが定まらなくなる」


 自分以外の魔法をノーコンにする杖。さすが良いものを持ってらっしゃる。


「その杖を目と目の間に当てたらそなたの魔法は正しく狙えた。つまり、そなたの魔法の不具合は、術者の位置が合ってない」

「そんな事があるんですか?」


 イーリスさんが話に入ってくる。


「ワシもそういうのは、過去に一人しか知らん。多分、ワシしか知らん」

「それは誰だったんですか?」

「かの勇者じゃ」




 かの勇者と言われた人、ウィリアム。204年前にダンジョンを攻略、その地上にラバエ王国を築いた建国王でもある。

 彼は、俺と同じく、魔法の発動位置がおかしかったのを、マリッカさんがこの杖で原因を特定したらしい。ただし、勇者で建国王の魔法がノーコンでしたなんて、とても伝説に残せない。関係者は墓の中までその秘密を持って行ったが、墓に入っていないマリッカさんは知っている。知ってる人物が、今2人増えてしまったが。




「すまんが、イーリスは先に帰っていてくれないか? 二人だけで話がしたい」

「わかりました。夕食の準備をして待ってます」


 イーリスさんが帰り、多分今日の本題が始まる。


「そなた、ウィリアムと同じ、異世界の者ではないか?」


 やはり。異世界から呼ばれた人物が勇者になって業績を残したのか。いや、業績を残して勇者になったのか。


「秘密は守ってやる。安心せい。それに、本当の姿は見せられぬのであろう? 特に、巨人と戦った、ギードやイーリスには」

「そこまで分かってしまったんですね」

「異世界から来た巨人、それもウィリアムと同じじゃからな。なあ、ちょっと、本当の姿を見せてはくれんか? そなたのストレージ魔法の入り口を開いて、顔を覗かせてくれるだけでよいのじゃ」


 あまり部屋の中を見せたくはないので、入り口に現れることにした。


「その状態で、魔法を使ってみよ」


 狙い通りの位置に着弾した。マリッカさん、納得顔。


「そなたの魔法は、サクラじゃなく、隠れておるそっちの体を起点に発動しておる。今ステータスを見せてもらったが、MPもサクラのじゃなくそなたのをが使われておる」

「そういう事か」

「場所じゃなく物を指定する魔法、冷凍するとかは狙い通りできたじゃろ? 物の指定は、どっちの術者であろうと、関係ないのじゃ。で、そっちの」


 マリッカさんが指さす先を見たら、ハコネが姿を見せていた。こいつのこと忘れてた。驚いた顔で口をパクパクさせている。驚いて隠れる魔法が切れた?


「あの時の妖精か。久しいのう。逃げんでもよいぞ。今はそなたの事など、どうでも良い。お主にしても、こんな珍しい事、二度とないじゃろうしな。一緒に楽しもうぞ」


 マリッカさん、めっちゃ楽しそうである。




 もう良いってことで、魔法空間を閉じる。


「異世界からの者がこれで2人、巨人としてやってきた。大きさも同じくらいだ。異世界は、全てが大きいのかのう」


 何か持ち物を出してくれって言うので、この前水を出したコップを取り出す。ハコネがすっぽり中に入る。


「面白いもんじゃ。ウィリアムの時はワシも若かったんで、あまり理解できなんだ。楽しみじゃな。逃げるでないぞ」


 マリッカの研究材料になることが決まりました。秘密を握られた側は立場が弱いのです。




「ワシはやることが出来た。祭りに出るつもりじゃったが、すまんが帰る」

「お出にならないのですか、残念です」


 村の門での見送り。長老?のレオさんが残念がっている。


「そうじゃサクラ、この杖、しばし貸しといてやる。どこに飛ぶか分からん魔法は危なくてならん」

「えっ、いいんですか?」

「その杖は特別なものでな。じゃから、その杖の代わりになるものを、これからこしらえる。出来上がったら、お主にやろう。杖はそれまで預ける」

「ありがとうございます」


 まともに魔法が使える。なんとありがたい。


「材料集めにしばらく留守にするんで、春になったらワシの所に杖を返しに来るように。その頃には準備出来ておるはずじゃ」


 そう言い残して、帰っていった。滞在、数時間。200年以上生きてるってのに、行き急ぎ過ぎだ。

 杖の事は、本当に助かる。明日からは、ちゃんと魔法が使える状態で練習しよう。


 そんな身バレを入村翌日に経験し、その日は無事に終了。


 しなかった。


「さあ、色々聞かせてもらうわよ。マリッカにだけ話した、秘密を教えてくれないかしら? 魔法に関する事なんでしょ?」


「マリッカお婆ちゃんに杖もらったんだって? 見せて見せて!」


 親が親なら、子も子。魔法について聞きたい、マリッカさんについて聞きたい、焦点は違うが、同じリアクション。


 魔法の道具を作ってもらう件の打ち合わせだったという事にした。マリッカさんから魔法の道具をもらうと聞いて、マルレーネがもの凄く羨ましがった。




「サクラ、いや、サクラじゃないのか。ちょっと教えなさい」


 やっと寝る時間。寝たふりモードに入ろうとしたら、ハコネ。


「私も当分あなたについて行くわ。こんな200年に一回の大イベント、見逃す手は無いわ。それで、私たちの仲でしょ。今日見た、あなたの本体が居るストレージ、そこに私も入れてよ」

「却下」

「いいじゃないのよ。減るもんじゃないし。それに、私がそっちに居れば、誰にも見つからず、サクラと本体両方のピンチをこっそり助けられるわよ」


 損得を考える。これまでハコネとのコミュニケーション、サクラと声で会話しているので、妖精を見える他の人やエルフにも聞かれる。魔法空間に入れておけば、その心配はなくなるので、秘密の共有には最適。特に損はない。


「分かった。今入れてやる」


 小さく入り口をあけて、ハコネを魔法空間へ。


「何これ。ただのストレージかと思ったら、色々物がある部屋じゃない。こんな良いとこに居たのね。これ何? 何するもの?」


 早速、色々弄り回す。損はあった。俺の平穏を返せ。


「おい、やめ」


 ハコネ、デジカメに遭遇。

 ハコネ、マウスに遭遇。

 ハコネ、殺虫剤に遭遇、トリガーを押してしまい、自爆。


 そもそもハコネは、魔法は当たるが、物は当たらない。魔法を帯びた物、魔法で出した直後の氷の刃、魔法使いが意識して触ろうとする手などは当たる。じゃあなぜ昨日、ハンスに捕まった? あの子、常時魔法ダダ漏れ?

 トリガーを押せた様に、ハコネにその気があれば物にも触れる。


「これは何? おわっ!」


 ハコネ、スマホに遭遇。黒い画面の上を歩く。側面のボタンを押してやり、画面に時間と壁紙が表示される。ハコネが移動すると、表示が変わる。


「これ、面白そうね。何が出来るの?」

「これを選ぶと、本が開ける。こっち側をタップすると、次のページ」


 指で画面突く俺の操作、タップ。でも、ハコネは画面上でタップダンス。まあそれでも良い。


「行き過ぎ。戻るのは?」


 漫画を与えておけば、俺はゆっくり眠れるだろう。おやすみなさい。




 数時間後、スマホの電池切れで起こされた。


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