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第1話 討伐クエスト(標的サイド)

 気付くと、仰向けになっていた。

 視界は部屋の天井じゃなくて青空。さっきまでどこで何をしていたっけ? 家でゲームしてたよな。

 それが、いきなりの外?。


 「うぉっ!?」

 そして、なぜか、起き上がれない。


 「目を覚ましたぞ! イーリスを呼べ!」

 男の声がする。

 声がした方を見ようとしたが、首をそちらに少し曲げられる程度。視界の隅にそれらしい奴をとらえた。

 見える範囲の状況を確認。俺の体には、動かせないようにロープが架けられて、地面に止められている。何本も。手にも、見えないけれどきっと足にも。

 

 「もうすぐイーリスが来るまで持ちこたえろ!」


 右肘でロープを押さている奴が、周りの奴に叫んでいる。周りは、そのロープを杭らしき物で地面に打ち込む作業中。


 「やめろ、何をする!」

 やめろと言って、やめてはくれない。数人がかりで自由を奪われた俺、絶体絶命のピンチ?


 されど我、屈せず!


 「やめろと言ってるだろ!」


 力を入れて起き上がろうとすると、


 「あ、抜ける! 無理か!」

 「あああぁぁぁぁ!」

 「ギード!」


 ロープが引っ張られ限界に達すると、杭が抜けたと同時にロープ抑えてたやつが吹っ飛ぶ。


 俺の動きで簡単に人が吹っ飛ぶ?

 いや、実は、周りに居る人たち、小さいのである。子供って意味じゃなく、小人こびとな方。

 背丈は1.5Lペットボトル強。ファンタジーっぽい小人じゃなく、リアルに人間を小さくした感じ。


 「無駄だ。怪我したくなかったら離れろ」


 既にさっきまでロープを引っ張ってた小人は、どこかへ飛んで行った。杭打ちハンマーを持ってる小人は、腰が引けつつもこちらを窺っている。


 他の拘束も引っ張り、杭ごと引き抜く。上体を起こして足の束縛も解き放つと、起き上がる。

 起きると、小人との体格差ははっきりする。小さい。5分の1くらいか。


 数歩引き、身構えるこびとたち。立場的には、もう俺tueeeだ。「薙ぎ払え!」とか言われたら軽くやってのけられる。口からビームは出ないが。


 視界には、散開した小人達が3人。さっき飛んで行った小人は除く。

 周りは松の木がちらほら、地面は砂っぽさもある土。浜辺近くの松林だろうか。ただし松林は俺の背丈くらい。木も小人用規格の5分の1サイズだ。


 小人3人は、金属光沢のある鎧を身につけ杭打ちハンマーを持った男、弓持ちの革っぽいのを身に着けた男、ジャケットを着た手ぶらそうな男。弓持ちは矢を射かけて来たが、爪楊枝みたいな矢を飛ばしてくるだけだから、鬱陶しいだけ。


 「攻撃するな。警告だ」


 攻撃を受けているシチュエーションで反撃しても正当防衛と言えるだろうが、一応警告はしておく。まだ襲って来てないが、鎧男が剣(ペーパーナイフ?)に持ち替えたのを見て、それはちょっとやめて欲しいし。


 体格差は5倍。蹴飛ばせば缶蹴りのように遠くまで飛ばせそうだが、それ、こいつら、殺してしまうよな。人、それを、過剰防衛と呼ぶ。


 さて、警告はした。無視された。もう俺様無双、開始していいのかな?


 と思うや、


 「熱っ!」


 右肩、服が、燃えてる!燃えてる! ぱしぱしぱし。叩いて消す。


 「熱っ!熱っ!」


 さっきので服についた火は消えたが、そこに第二撃。わずかに逸れた。危うく顔面直撃だった。先の右肩も、この火の玉の一撃を受けたんだろう。


 「イーリス!」


 小人チームが向いた方、見ると、新手の小人(ローブを着ている)から、ソフトボール大の火の玉が飛んで来る。


 「やめろ! 火ダメ、マジダメ! 話せばわかる!」


 寝起き「俺tueee」は数分で終了のお知らせ。ソフトボール大の火の玉襲来に形勢逆転。火器には敵わない。

 さっきから小人の言葉が理解出来るので対話を試みる。しかし、小人ローブは、お構いなしに火の玉を飛ばして来る。隙を見せたらやられると思ったのかもしれない。


 「よくもギードを!」


 火を出す小人、声で女だと分かる。いや、それどころじゃない。反撃?


 いや無理。ソフトボール大の火が飛んで来るのに、そっちに行くか? 距離があるから、まだ回避の余裕がある。近付くと、回避できない。

 服全体に火でも着いたら一巻の終わりだ。走って逃げる。


 小人には追い付かれないが、火の玉には追いつかれる。逃げる背中に時々着弾しては、火がつきかけた服を叩いて消火。


 さっきの場所から少し走ったが、敵は20mくらい後方。反撃して追い払えないか?

 足下は、ピンポン球サイズの灰色の石が多数の砂利。一掴み数個握って投げる。何個も投げる。何度も投げる。


 ピンポン球サイズでも、奴らの体と比べたら頭の大きさくらいにはなる。牽制以上の効果はあるだろう。小人ローブは止まり、杖を前にかざして、


 石は落ちる。急に現れた壁にぶつかって。


 火の玉が飛んで来るのは、火器だと思っていた。しかし、飛んで行く石を弾く壁が突然現れる。そんなもの、見たことは無い。


 ローブを着て、魔女っぽい、じゃなくて、本物の魔女なのか!


 なんでそんなファンタジーな存在がいる!? いや、小人が出て来た時点で、もうファンタジー不可避。アリス イン ワンダーランドだ。


 また走る。


 ちょっと考える余裕が出来たのは、魔女(仮)の火の玉が来なくなったからだ。5倍の体格差は走る速度も5倍にしてくれる。追い付かれない速度差だ。そして、距離は開いた。


 振り返れば、小人たちの追撃は無くなっていた。逃げ始めから、1キロは走ったはずだ。体格5分の1な小人にしてみれば、全力で5km以上の追撃だ。1キロ走っただけの俺でも、少し脇腹が痛い。


 そのまま走ると、川があった。幅は10mくらい。川に駆け込み、対岸を目指す。少し深いところで足が付かず流されかけたが、なんとか対岸へ上陸。


 寒かった。どう考えても泳ぐ季節じゃない、日本の関東でいえば秋くらいの気候。川に来るまでのダッシュで温まっていたから何とかなったけど、もうちょっと寒かったら危なかった。このまま濡れたままだと、風邪ひきそうだ。


 振り返ると、川向こう少し先に、軽装組の小人2人がいるが、向かっては来ない。やっと諦めたか。魔女は居なかった。魔法使いだから体力がないのか?


 それでもいつ追いかけてくるか分からないので、前方の森へ進む。追って来ていない様だが、油断したところでフラグが立つ。警戒は怠らない。


 松がそうだったように、木の高さは小人に合わせた低めだ。俺の頭の位置が、木の天辺とあまり変わらない。さっきの場所は松だったが、ここは他の木。舟形の葉で、見たことありそうなやつ。小さいが。


 少し余裕が出て来たので、さっきまでの状況を整理する。

 目覚めると拘束されかけていた。

 起き上がった。

 俺のターン!

 魔女のターン!

 石投げながら逃げた。

 川を渡って、逃げ切った(仮)。

 冷える、寒い。


 火の玉、土の壁とかを出せる、魔女がいるらしい。ただし、今まで見たのは、全員小人。

 そうか、ここはリリパット王国か。ガリバー旅行記の。


 「そんなわけあるかーい!」


 ガリバー旅行記で魔法なんかあったっけ? いや、それ以前に、物語の世界に入るとか、なんだそれ。まだ寝てて夢の中? いや、さっきダッシュした時の脇腹の痛みは本物だと言っている。

 座れば身を隠せるかなと、腰かける。


 「なんだ!?」


 座った直後、違和感を感じた。

 そして、突然視界が真っ白になった。


 真っ白な部屋、いや、真っ白な世界。そこで、少女がこっちを見ていた。


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