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MOVE  作者: 三浦知斗瀬
8/11

みんな…笑ってる。


それは幸せな夢だった。

仲間たちが同じ食事を食べながら、同じ話に花を咲かせている。



『それにしてもマヤの料理はうまいよなぁ。』


『俺はパスタが好きだな。』


『私はシチュー。とくにニンジン!』


『『ニンジン!?』』



みんなが笑っている。



『セアは何が好き?』


俺は…全部。


『全部!?確かにセア、何でも食べるよね!』



仲間たちの笑い声が響く。



ずっと続けばいいのに。

このままずっと。


ずっと。ずっと。




幸せな気分に浸りながら、セアは願っていた。


もう少しこの夢の中にいたい。


少しでも長く、ここでみんなと話していたい。


仲間が笑う姿を見ていたい。





ズキッ………!


ズキッ……!!


ズキッ…!!!



突然頭痛がした。


だんだんと痛みは強くなっていく。


っ…!



はっと目を開けると、そこには暗い天井。


頭痛はおさまり、体力も戻っていた。



夢…

少し残念な気もしたが、起き上がった。


そっと目を閉じる。



深く深く、深呼吸。



自分の心臓の音が低く響く。



頭の中がすっとクリアになる。

何かが聞こえてきた。



「…が……てた……白い…な………ちゃ…と……」



結界が張ってあるのだろうか。はっきりとは聞き取れない。




もう一度試したがダメだった。

諦めて、セアは軽く伸びをする。


うっすらと太陽の光が差し込んできた。

夕方?いや、朝か。

鳥の声が聞こえる。


脱出するための作戦を考えることにした。

きっと仲間がもうすぐ来てくれるだろう。

せめて足を引っ張らないようにしなければ。






………





「もう!どこにいるのよ!」



メドリアは苛立っていた。アルゴ内に備え付けられている図書室の、地理書が並ぶ棚の前。

地図とのにらめっこも三日目となると、さすがにイライラしてくる。



「こーんな分厚い身体して、一人の人間の居場所も見つけらんないわけ?ほんとにもう!」



八つ当たりは地図に、そして行方不明の張本人へ。



「何いなくなってんのよセア!私は地理が苦手なの!セアのバカ!バーカ!!」


「おーい落ち着いてって。」



突然聞こえた声に驚いて、手に持っていた地図を落としてしまった。



「わっ!な、なに?」



入口に立っていたのは、ティムだった。



「なにも。近くを通りがかったらいつもは聞かない声が聞こえてさ、つい…ね?」



ティムは、セアやメドリアと同じ17歳。

明るい茶色の髪の毛に、オレンジ色でデザインされた服。

よく笑いよく喋る、はつらつとした少年だ。



「手首のケガ、どう?」


「平気だよ。左手だしあんまり使わないから。」




3日前の爆発に巻き込まれ、手首をケガしたティム。

大切なブレスレットが無くなってしまった、とずいぶん落ち込んでいたのを思い出す。



「そう…」


「メドリアこそ、あんまり根詰めてると身体壊すよ。」



メドリアとティムは同じ孤児院出身だ。

同じ時期にMOVEに来たせいか、メドリアを何かと気にかけてくれていた。



「大丈夫。」


「大丈夫そうに見えなかったけど。」



ぷうっと膨れるメドリアに、ティムは吹き出した。


メドリアの頬がぽっと赤くなる。



「なによ、もう!」


「…俺も手伝うよ。」


「いいよ、私一人でできる。」


「んじゃ、手伝わせて。」



ティムは軽く微笑んで続けた。



「君を、手伝いたいんだ。」


「……わかった。」



案外押しが強い。


ため息をついて、メドリアは落ちた地図を拾った。










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