月 3
マーファイは暗い道をまっすぐに歩いていた。
目には少しの曇りも無く、月明かりに照らされて鈍く光っているようにも見えた。
途中で道を逸れ、草木を分け入って、急な斜面を登った。
自然の香りがいつもより身体を急がせる。
やがて目の前に、大きな洞窟がぽっかりと口を開けた。
腰を屈めて地面に図柄を書く。
手に持った杖の先で大きな六角形を描き、外側に魔法文字と呼ばれているある民族の言語を書いた。
さらさらと地面が音を立てる。
書き終わると、マーファイは六角形の外側に、立ち、ブツブツと呪文を唱えながら目を閉じた。
六角形がうっすらと光る。
魔法文字が浮かび上がる。
月の光がマーファイを照らす。
目を開けると、六角形の中心に緑色の石が現れていた。
………
急に身体を起こされ、鳩尾を殴られて、セアはむせ返った。
…ッゲホッゲホッ!
「起きたぁ?」
妙に間延びした話し方。アイルだ。
「ほら、これ食べて。」
突然顎をつかまれて、無理やり口の中にパンを詰め込まれる。
吐き出そうとしたが、注ぎ込まれた水のせいでまたもむせ返り、飲み込んでしまった。
ニヤニヤしながら見下ろしてくるアイルを、セアは精一杯の敵意を込めて睨みつけた。
「しっかり休んでなよぉ。
これからがキツイんだから。」
そう言うと、アイルは背を向けて出て行った。
セアは立ち上がろうとしたが、膝に鋭い痛みが走った。
打撲か変にひねったか、何にしろ今は歩けそうにない。