月
“セアがいなくなった”
そう聞いた瞬間、メドリアは自分の顔から血の気がひいていくのを感じた。
一緒に行った数人によると、突然爆弾を投げ入れられてその火が回収した地雷の火薬に引火したのだという。
怪我人が多く出たがセアのみが見つからず、今も捜索中らしい。
メドリアは前からセアのことを気にしていた。
大人しくしている分、周りが気にせず会話を続けてくれる。だから情報には困らない…はずだった。
緑色の目に何かを隠している不思議な少年。
生い立ちを聞いても誰にもわからないという。
マーファイなら知っているだろうが、教えてもらえまい。
『あなたはどこから来たの?』
幼いセアに、幼いメドリアは聞いた。
『わかんない。』
セアはそれっきり自分のことを話そうとしなかった。
「セア…どこに行ったの?
あなたがいないと…私はひとりぼっちだよ?」
『あんたを一人にさせちゃいけない気がする』
いつかのセアは、満月を背にそう言った。
無意識に羽のネックレスをいじくる。
「無事…だよね?」
誰かのために、なんてきれいごとは大嫌いだ。
普段は物腰の柔らかいメドリアだったが、実を言えば、決しておとなしい性格などではなかった。
みんなの前では隠している自分。
セアはそれを、軽々と見つけ出していった。
いつの間にかセアの無事を必死で祈っている自分がいた。
こんなのは自分じゃない。
誰かのために祈るとか、いつもなら絶対にしない、けど
セア…無事でいてよ。
悔しくて、涙が出た。
ほら。あなたはまた、隠れた私を見つけたのね。