予感
まただ。
セアは汗をびっしょりかいて飛び起きた。
また夢を見たのだ。
以前と同じ広場には、鎖が落ちているのが見えた。そして今回は、大勢の人の歓声やら罵倒やら、お祭りのような熱気が感じられる。
そしてまた、
「セア!セア!」
前回よりもはっきりと耳に残っている。
子供のように高い声だ。
そして振り向くと…
目が覚めた。
4日も連続で例の広場の夢を見ている。
何かがおかしいと感じ始めていた。
そして毎回、どこかしらに変化がある。前回はロープ、今回は鎖。
声も毎回のようにきこえる。その声は心なしかだんだん大きくなっているようで気味が悪い。
「一体何なんだ」
一つため息をつくと、少し肌寒くなった空気を感じて上着を手に取った。
トントントン
「セア、入ってもいい?」
「どうぞ。」
入ってきたのは、背の高い少女…メドリアだった。
「マーファイさんから言伝頼まれて来たの。」
メドリアは真っ黒の長い髪を後ろに束ねていた。
歳はセアと同じ17歳。
いつも首に下げている羽のネックレスが、日の光を浴びて一瞬キラリと光った。
「言伝?」
「うん。前に戦った場所に地雷が仕掛けられているらしいの。何人かで取り除きに行くんだけど、セアにも頼みたいって。」
「今どき地雷なんて……罠かな。」
「かもね。準備ができ次第出発するって言ってた。」
地雷はある特殊な匂いを放っている。
この国に関わらず、生まれる突然変異の能力者たちは、鼻がよく効く者が多い。
すぐに見つかってしまうため、最近地雷は使われなくなってきていた。
そうにも関わらず地雷が仕掛けられている…怪しい。
「わかった。マーファイさんはどこに?」
「街に行ったの。地雷の注意を呼びかけるんですって。国王様にも伝えなくてはいけないから。」
メドリアが部屋を出ていくと、セアは短剣のベルトを腰に付けて窓を閉めた。
戦いの恐怖はもう感じない。慣れてしまったから。
だがなぜか嫌な予感がした。