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流星の彼方  作者: 大典太アスラ
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最後の望み、私の生きる意味それは……

生きる意味、生きている意味、うーーん。深いテーマにしてしまったよ。

「ちっ、ちょこまかとよけやがって」


 パン、パン、パンと三連発で撃たれるが星夢はそれを華麗によけてみせた。


「おい、アルガは右から、ネルバは左から回り込め!」


 三人のサガン兵のリーダーであるテドンがそう指示を出すと二人は樹をうまく使って散開し星夢の視界から消えた。星夢は走りながら彼らを探すも見当たらない。


 どこだ?どこにいる?


そう思っていると背後から物音が聞こえたので一旦その場で止まり辺りをじっと見まわすとやがて囲まれたことを察知した。ガサリと音がしてサガン兵の姿が一瞬見えた。

そこをめがけて一発撃つとあっさりと倒れたがそれにしては倒れる音が軽すぎる……


 こいつはダミーだ!


と気づいた時には遅く右足に猛烈な痛みが走りそこをに触れるとべったりとした赤いものが手についた。この一瞬の隙をつかれ背後から撃たれてしまい激痛に耐えることができずそこに倒れるとたちまちサガン兵に囲まれてしまった。


「おまえ、ナナシじゃん。そうしてこんなところにいるんだよ?」


 怒りを抑えきれずに腹に一発蹴りを入れ星夢は苦しそうな声を上げた。


「テドン先輩、こいつと知り合いなんですか」


「ああ、こいつはヤユ人だ」


 その瞬間サガン兵の顔が固まる。そして星夢に軽蔑の目をつきつける。とうとう他の二人も怒りをあらわにして蹴り始めた。


「俺の、俺の国をよくもつぶしやがったな。ヤユ人め。おまえらは生きる価値なんてないんだよ」


「この恩知らずめ」


 そしてアルガが星夢の胸倉をつかみあげ地面に顔面から叩きつけ、星夢はそのまま地面にうつぶせに倒れこんだ。

 

「うっ……ああっ……」


 星夢の頭から血が流れ、体中あざだらけで腫れていた。視界がぼやけ、意識がもうろうとしていながら自分がヤユ人であることを初めて知りまたなぜヤユ人であるだけでこんな扱いを受けるのかということで頭がいっぱいだった。


「ヤユ人が何をしたってんだよ」


 枯れた声でなんとか話すと今度は髪の毛をつかまれ上体を起こされると目の前にはアルガの怖い顔が目と鼻のさきにあった。


「そんなことも知らないのか。おまえら難民はおまえらを支援している国を次々と危機に陥らせたんだよ」


 そう言い放つと星夢の顔に向かってつばを吐き手を放した。


「で、話を戻すとなんでこんなやつと知り合いなんですか」


「ナナシはサガンからラマルに送られたおとりのおとりさ。賊を装ってラマルを襲撃しその混乱にじょうじて情報屋の女を使って莫大な金がかかっている女をラマルからさらって俺達はここで女を待ち伏せして身代金のかかった女の身柄を無理やり拘束しサガンへ帰る予定だった」


「だけど情報屋の女と身代金の女はこいつを置いて逃げたってわけですよね」


「ああ。本当なら身代金女がいなくなったことにラマルが気づきどこから情報漏えいしたか調べるだろう。こちら側としては情報屋の女だとばれサガンが絡んでるってなるのは都合が悪いから目くらましにナナシに記憶を消す薬を飲ませてラマルに送った。

そのうちラマルは記憶のないナナシを怪しむだろう。

記憶が無いんだから拷問しても何にも言えないからこいつはスパイだと思い込んで煮るなり焼くなりするだろうってことだ。」


「まあ、所詮ナナシなんて作戦が失敗しても成功しても死ぬ運命ってことですね」


「そーゆーこった。まあヤユ人なんだから当然だろ」


 この話を傍らで聞いていた星夢は愕然とした。

所詮捨て駒だったんだと。ただ利用されるためだけに記憶を奪われ、何もしていないのにヤユ人であるというだけで罵声や暴力を浴びせられ社会のごみみたいに言われ……こんなの理不尽すぎる。

悔しくて悲しくてやるせなくて、涙がこぼれる。

でもそれに抗うだけの力はもう既になく、たとえここで生き延びてもその先どうやって生きればいい?

ヤユ人の私が。



「私が戦わなくても生きられる世界に連れて行ってあげる」



 ふいに美鈴の言葉が頭浮かんだ。

そうだ。そんな世界なんてないと思いながらもこの言葉を信じてここまできたんだ。


ーー最後まで信じたいーー


ふと星夢はある匂いに気が付いた。


「残念だったなナナシ。口封じにここで終わりだ」


 その瞬間テドンが剣を構えると星夢は最後の力を振り絞りその場から走り出した。

星夢の回でした。次回は第1話最終回!がんばって盛り上げていきます。

信じることってなかなか難しいですよね。星夢は美鈴の言葉を信じて自分の運命をかけました。

これを読んで何か考えるきっかけとなる作品になるようにがんばります。

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