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流星の彼方  作者: 大典太アスラ
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二人が選んだ未来の先には何があるのか

プロロ―グ 再会


 後もう少し、これで私の夢が、叶うんだ。

あちこちから炎があがり煙が立ち込める瓦礫の中を息を切らしながら走る。

 暑い、苦しい。

 右に曲がり最後のドアを足で蹴破るとそこには人影が立っていた。その瞬間頭が真っ白になり全身の力が抜けていく。

ーー嘘だよね?ーー

 崩れ行く壁、パチパチと燃える炎の中、二人の間に沈黙が流れた。


第1話 星夢

 太陽がじりじりと照り付け乾いた風に砂が巻き上げられて横一列に並んでいる子供たちに吹きつける。

それでも子供たちは剣を振り続けなければならない。

「遅い、もっと早く振れ」

ひげを生やした色黒の隊長に罵声を浴びせられ地面に叩きつけられてその場に倒れこんでしまった子は起き上がろうとするが腕が真っ赤に腫れていてバタンと倒れてしまった。こうなってはここでは「死」を意味する。使えないものは切り捨てられ新しいものを補充する。ここは反政府勢力ラ・マルセイーユのゲリラ兵養成所。昼間は訓練、夜は宿舎待機を命ぜられている。

 ようやく日が落ち始めて訓練が終わりぞろぞろと宿舎に向かう子供たちのなかに金色の髪をなびかせてぼさぼさの黒髪少女目がけて走っている女の子がいた。その子に追いつくと肩をがしっとつかんだ。

「ねぇ、あなた今日からここに来た子だよね?隊長から面倒見るようにっていわれてるの。私と同じ部屋だから案内するわ」

明るい声でそういうと強引に手を引き宿舎まで連れて行った。そこは森に囲まれており、その真ん中にコンクリートがあちこちではがれつたが伸び放題の長屋がぽつんと建っていた。錆びたドアを開けると真ん中に通路があってその両側に部屋がある。床は砂と埃で覆われ、隅には蜘蛛の巣が張っていた。「こっちよ」と案内されたのは二階の一番奥の部屋でドアを開けるとそこは4畳ほどのひろさに錆びたパイプでできた二段ベットが右側においてあり真正面に正方形の窓があるだけの簡素な部屋だった。ここには電気がなく月明かりが部屋を照らしていた。

 金色の髪の女の子がベットに座るとポンポンと隣をたたいて「座って」と言った。黒髪の女の子がちょこんと座った。

「私は美鈴、日本生まれで、フランスに留学中誘拐されてきたんだけどあなたはどこから?」

「知らない。」

ぽつりとそう答えた。

「名前はなんていうの?」

「ない……」

「ナイ……ちゃん……?」

女の子は軽く首を横に振った。

「名前……しらない、親も……家も」

「そう……だったの……」

 月が二人を静かに照らし部屋はしんとなった。

美鈴はこの四ヶ月間様々なカルチャーショックを受けた誘拐される前は一日三食当たり前に取り学校に行って友達と遊んで部活もして帰ったら宿題して、という生活だったのにここでは食べるものは愚か毎日水をくみに五キロは歩くし電気も通ってないし、自分はいかに恵まれた生活をしていたのか思い知らされた。

 「はぁ、」とため息をもらすとトントンとドアが鳴った。

「どうぞ」と言うとポニーテールにオレンジのTシャツにカーキ色のカーゴパンツを履いた、いかにも野生児という十五歳くらいの女の子が右手を軽く上げて「やぁ」と、入ってきた。

「チェリーじゃない! 」

 美鈴の顔がパッと明るくなり興奮した声でそう言うとチェリーのもとにかけよってハグした。

「久しぶり。あれ、隣の子美鈴の友達?まさかあんたにできるとはね世も末だねえ」

 ケラケラと笑ってからかう。

「何よその言い方。私にだって友達くらいいるわよ。この子は今日入った新入りよ」

 腰に手をやり、「ふんっ」と鼻をならし横を向く。

 二人はそのまま床に座ると真剣な顔つきになった。

「で、例の件だけど近々実行されるって情報が入ったから伝えにきたわ」

「もうじきラ・マルセイエーズと敵対関係にあるタルバーン・サ・ラガンがここに奇襲をかけるのね。その混乱にじょうじてチェリーが私を町まで逃がす」

「そうよ」

「ありがとう。さすが情報屋さんよね。私がここに来た日の夜にここに忍び込んできて『私ならあなたをここから出すお手伝いができる。どう、契約しない?』なーんて言うんだからもうびっくりしたわ。でも今となっては感謝してる。最後までよろしく頼むわよ。」

「まぁ、お嬢様助けたら沢山の謝礼金貰えるかなって金目当てだったけど今では私もあんたと出会えてよかったとおもってる。あ、でも、ちゃんと払ってもらうからね」

 そんなの分かってるわよ。と、口をとがらせて握手した。

「で、さっきから空気見たいに影薄くしてベットに座ってるあんたもこの話聞いちゃったんだから強制参加だからヨロシク。情報漏洩防止のため。」

 チェリーがくるりと振り返ってそう言った。が、

「私、行かない」

 ぽつりとそうもらすとチェリーが女の子のに向かって銃をつきつけた。

「そうはいかない。あなた今ここで死にたいの?

死にたくなかったら四の五の言わずに私の言うとうりにしなさい」

 二人の間に緊張が走る。それを破ったのは美鈴だった。

「チェリー、銃をおろして」

低い澄んだ声でそう漏らしチェリーの前にたちはばかった。

「何のつもり?契約を破棄するつもり?もう後戻りできないわよ」

 ギッと睨みつける。

「そうじゃないわ。この子と話をしたいの。少し時間をちょうだい」

渋々承諾して銃を下ろし引き下がった。そして美鈴は女の子の隣に座って顔を見つめながら優しい声で尋ねた。

「あなたの夢は何?」

私の夢……女の子は少し考えて言った。

「そんなものない。戦わなきゃ殺される、だから戦う。それだけ」

「もしも戦わなくても生きられる世界に行ったら何をしたいと思う?」

「そんな世界なんてない」

 冷たく突き放した声で即答した。そうだ、そんな夢のような世界なんてあるはずかない。実際今まで私が生きてきた世界は戦わなくては死んでしまう世界だった。それが当たり前だと女の子は思っている。

「じゃあ、私がその世界に連れていってあげる」

「そんな世界本当にあるの?」

「もちろん。私がもといた場所はそうよ。あなたにいろんな世界を見せてあげる。そこには本、食べ物、服、とにかくいろんなものや人であふれてるわ」

 自信満々でそう言うとしばらくの間沈黙が続いた。

 そんな世界あるはずないのに、美鈴は何を言ってるんだろう。でもーー

 しばらくして部屋に銃を向ける音が響いた。

「で、行くの?行かないの?」

「……連れてって」

 私はそんな世界あるなんて無いと思うけど、それでも戦わないでも生きられるそんな世界を一目でも見てみたい。ただ単純に女の子は思った。

「じゃ、決まりね。チェリーこの子もよろしくね」

ハイハイと銃を下ろすと、美鈴が「あっ」と何かを思い出したような声をあげて手を胸の前でパンっと叩いた。

「この子の名前決めた!星夢なんてどうかしら?」

半ば興奮している美鈴を見て

「あんたってロマンチックな名前つけるんだね」

と漏らした。

「星の数ほどの夢を持って欲しいの」

 星の数ほどの夢……窓から外を見ると無数の星たちが輝いている。その中には光ながら移動するするものが見えた。その瞬間隣から声が聞こえた。

「あっ!流れ星。家に帰れますように家に帰れますように家に帰れますように」

二人がキョトンと美鈴を見つめているのでくすりと笑って説明した。

「流れ星が消える前にお願いを三回唱えられたら叶うっていう言い伝えみたいなものがあるのよ。知らなかった?」

「やっぱあんたはロマンチストだよ」

「それ、褒めてる?」

「どうかな」

「どうかなって、ちょっと、もう!」

美鈴が肩を叩いた

「用件は伝えたから、今日はかえるね。じゃ。星夢の追加料金よろしくね」

と言って右足を窓枠にかけたとたんにピーーっとサイレンが鳴った。

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