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不良少年の恋  作者: 東京 澪音
4/6

4話 ~衝動~

放課後、僕が学校を出たのは18時を少し過ぎた頃だった。


数学の宿題を忘れた為、職員室前の廊下を50往復も拭き掃除をさせられたからだ。

この時間からでは亜子さんのトコには顔を出すのは難しいし、身体も若干痛い。


少し寂しが、今日は素直に諦めて家に帰る事にした。


帰宅後はいつもの様に店を手伝い、お風呂掃除を終わらせ、食事・片づけ・入浴を済ませる。

特に宿題も出されていない為、こっそりと出かける事にした。


部屋に居てもウジウジ昨日の事を考えてしまうからだ。


部屋の窓から外へ抜け出すと、近所のいつも屯している高校4年生の先輩の部屋に向かう。


高校4年生。

つまり先輩は一年ほど高校を留年している。


部屋の窓をノックして中に入ると、いつものメンバーが何人か遊びに来ていて、みんなゲームをしたり、漫画を読んだりそれぞれ好きな事をしている。


しかし、その中に先輩の顔がない。


家主がいないのに屯しちゃっていいのかな?とか思いながらも、僕もその中に加わる。

テーブルの上には、誰かが買ってきたお菓子があったので、適当につまんだりする。


他愛もない雑談をしていると、部屋の襖がスッと開いて先輩が戻ってきた。

因みに先輩の部屋は和室なのだが、洋物かぶれなところもあって部屋がとてもカオスな感じになっている。


どうやらお風呂に行っていたようだ。


先輩は部屋の小さな冷蔵庫から大人の炭酸飲料を取り出すと、プルタブを開けゴクゴクと一気に飲み干す。


「うぃ~。風呂上りはやっぱりコレだな!」

そう言うと、飲みかけの大人の炭酸飲料をテーブルに置く。


「先輩、いくら高校4年生でもお酒は二十歳になってからっすよ(笑)」

僕は冗談交じりで先輩をからかった。


すると先輩は大人の炭酸飲料のラベルを僕に見せる。


”子供ビール”


「俺酒とか全然飲めないんだわ。ウイスキーボンボンでも酔うし~。あれを旨いって言いながら飲む大人の気持ちが俺にはわからないよ。やっぱ炭酸は甘くなきゃね!」


そう言って冷蔵庫の中身を見せてくれた。

冷蔵庫には子供ビールと、黒の子供ビールがぎっしり入っていた。


先輩は僕に黒の子供ビールを一本出してくれた。

半信半疑で舐めてみると、中身はただのコーラだった。


僕はそのコーラを半分くらい一気に飲むと、ビンを勢いよくテーブルに置く。

「うぃ~。部長のバーロー!」


これが思いのほか受けたらしく、しばらく二人で酔っ払いごっこを興じた。

笑いの渦の中、誰かが来週のお祭りについて話題をふってきた。


僕は一気に場の雰囲気から醒めてしまった。

考えない様にしていた事。今日はそれを考えたくなかったからここに騒ぎに来たのだが・・・。


時期も時期なので、この話題が出ても不思議ではない。

僕は深く考えずに聞き流すことにした。


僕以外はお祭りの話に花咲かせていたのだが、高校4年生の先輩が僕に話を振る。


「お前は今年も亜子ちゃんとデートか?お前等昔っから仲いいもんな。」

毎年の事なんでそう思われても仕方がないが、僕は先日の亜子さんとのやり取りを掻い摘んで話した。


「亜子さん今入院してるから、今年は無理だと思う。本人もお祭りには行きたそうだった。再来週には退院できるらしいから、もの凄く体調が悪いわけじゃないんだけど・・・。」


そう言うとみんな黙り込んでしまった。

しばらくの沈黙後、高校4年生が口を開く。


「色々手は尽くしてみたのか?一応さ、亜子ちゃんともう一度話をしたうえで、二人で先生に相談してみたらどうだ?少しくらいなら許してくれるかもしれないしさ。もしそうなったら、俺が車出してやるよ。自慢じゃないけど免許は去年の夏に取ったし、じいちゃんの軽っパコもある。」


僕はその提案に少しだけ希望の光を見た。


だが、亜子さんがうんと言ってくれるだろうか?例え言ってくれたとしても、先生が許可を出すかどうかは怪しい。僕はその旨を皆に話す。


高校4年生が続ける。


「時にはさ、強引にいかなきゃいけない時もあるんだぜ。何でもかんでも直ぐに引き下がてる様じゃ、色々と先には進めないぜ。色々と手を尽くしてみてさ、それでもダメな時は潔くそれを受け入れる。でもな、無理強いはするなよ。」


強引さ。


そんな事今まで思いもつかなかった。


確かに今までの僕は亜子さんが少しでも難色を示すと引き下がってしまう。

それは、嫌われたくないからなんだと思う。


でも高校4年生が言うように、時には引っ張ってってやる位の姿勢を見せなければ、いつまでたっても僕は子供のままだ。


僕と亜子さんには埋められないものがある。

それは歳の差だ。


たった3つかもしれないが、経験も知識も過した時間も違う。ましてや亜子さんから見た僕は間違いなく子供だ。それも多分弟に近い存在なんだと思う。


逆に僕から見た亜子さんは落ち着きも包容力もある大人の女性に映る。


十代の3歳差って言うのは、ある意味致命傷だ。


僕はいつも埋められないこの差に焦りを感じていたんだ。

何とかしようと足掻いているんだ。


だから僕は背伸びして粋がるんだと思う。


他の誰からどう見られたっていいんだ。

そんな事関係ない。


でも彼女が僕を見る目だけは変えたいんだ。


同じ目線で同じ様に感じ、彼女の隣で肩を並べて歩いていきたい。


いつもそれを無意識に模索していたんだ。

でも今日僕はその差を埋めるヒントに気付いた。


なんだろう、この胸に湧き上がる想い。


絶望の中に見つけた一筋の光。

早く明日が来ないかな。


掻き立てられる衝動を抑えきない僕は、みんなに挨拶を済ませ、走って家に帰った。



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