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6-12:生まれた不安

(´・ω・`)短め

 いつまでも続く「お兄ちゃん」の大合唱に耳を塞ぐ。気持ち悪いというのもあるが、耳が痛いレベルの大音量に加え、建造物の構造が原因なのか妙に音が反響するのだ。

(これは一種の攻撃なのだろうか?)

 こいつがただの狂人なのか?

 それとも狂人のフリをする策士なのか?

 判断がつかない俺は耳を塞ぎ、しかめっ面で自称「お兄ちゃん魔王」を睨みつける。ただ一つわかることがある。それは「もう話をするだけ無駄だ」ということだ。チャンスは十分に与えたはずなので、カードホルダーに手を添えたところで思い出す。

(そう言えば攻撃カードはほぼ全滅だったな)

 苛立ちの余り、つい自分で攻撃しようとしてしまったが、今は劇的なパワーアップをしたライムが隣にいる。その力を実際に目で見てみたい。

「ライム。ウザいからアレ始末しろ」

 俺の言葉に「はい、お父様!」と嬉しそうに返事をする。それは良いのだが、事前に決めていた設定はどうなったのか?

 意外とポンコツなのではないかとも思ったが、それはそれでカワイイので良しとする。さて、命令を受けたライムなのだが……まずは俺の安全を確保するためか、後ろに回るとしっかりと抱きついてくる。背中に潰れるくらいに押し付けられる柔らかいものを堪能しつつ、脇から伸びたライムの腕に注目すると兄魔王に向けて手を広げる。

「終わり」

 ライムがそう言った時、周囲には大量の赤いビー玉のような物が浮いていた。いつの間に出現したのか全くわからなかった上、ライムが広げた手を握ると無数の玉がチカチカと光ったように見えた。その直後――俺の前にはボトボトと床に落ちて転がる大量のサイコロステーキがあった。

「……え?」

 ライムが手を広げてから僅か数秒の出来事である。間違いなくこのサイコロステーキがあの狂人である。その最期を俺はしっかり見ていたはずだ。周囲に無数のビー玉のようなものが出現した瞬間、あの自称魔王はギョッとした表情を浮かべ、動こうとした。そこまでは見えた。

 だが次の瞬間にはサイコロステーキになって床に落ちて転がっていた。ライムが何をしたのかさっぱりわからないが、あのチカチカと光ったのが恐らく攻撃だ。どのようなものかまでは不明だが、自称とは言え魔王を名乗る強さを持つ相手を、一瞬で細切れにするだけの強力なものであることはわかった。

 じんわりと広がっていく紫色の血溜まりが生々しく顔を逸らす。あと臭いも少し気になる。

「片付きました、お父様」

 恐らく満面の笑みを浮かべているであろう背後にいるライムの頭を撫でてやる。ライムも静かに撫でられるがままにされていると、その静寂を破るように人形の一体が悲鳴を上げる。それに続くように我も我もと大量の人形が悲鳴が上げ始めた。

「キィヤァァァァァァァァアアアァァァァァァァァァァァッ!」

「ヒィィィィイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィ!」

「いやぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 つんざくような悲鳴の大合唱に反射的に両耳を塞ぐ。

「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて!」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!」

 悲鳴の中に助けを乞うものが混じりだす。それと同時に大量の悲鳴が助けを求めるものへと変わっていく。まさに一心不乱に助けを求めて叫んでいたのだが、合わせていたかのように一斉にピタリと声が止む。その次の瞬間――全ての人形の目がこちらを向いた。


助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けろ助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて


「ひいっ!」

 示し合わせたかのように声が揃い。「助けて」と壊れた機械のように繰り返す。スプラッタやグロは比較的平気な部類だが、こういったホラーにはまだ耐性はない。思わず後ろに後ずさってしまうが、それはライムがいるのでできなかった。さらに追い打ちをかけるかのように背後からボソボソと小さな声が聞こえてくる。

「お父様の手を止めた……お父様の手を止めた……」

 気づけばライムがブツブツと同じ言葉を呟いている。どうやら撫で撫でが中断されたことで大変不機嫌のようだ。ライムの表情は見えないが……いや、見たくないのでこれ以上は止めておこう。あと背中で「殺す」とか呟くのも止めてね。

「くたばれぇ!」

 ライムが叫んで両手を突き出すと先程よりもさらに多い玉が現れる。視界が赤に染まりそうな程の物量である。つまり、無慈悲な破壊の始まりだ。玉は点だった。無数の玉と玉が線を結び、線が交わり面となる。ビー玉に見えた赤い玉が点となり、線を作るとその進路にあるものを破壊する。

 線が面を作り、まるで陣取りゲームのように切断する。空間が切り取られるように、次々と高速で作られる面によって人形が細切れになっていく。

(なるほど、こうやっていたのか)

 空中にできた赤い線は頂点となった赤い玉が動くとレーザーブレードみたいに見える。実際そうやって薙ぎ払うこともできるようだ。

(この赤い玉はスキルと無関係となると魔力か……確か魔力に特化していたんだったな。この大量の玉が全て魔力として、それを制御できるというのも凄い。というかこれ幾つあるんだ?)

 少なくとも100や200ではない。最低でも500以上は見えている範囲でもあるだろう。なら千を越えている可能性もある。それが全て攻撃に回るのだから現在のライムの強さの一端が窺える。

「死ね! 死ね! 死ねぇ!」

 当のライムは冷静さを失って周囲の人形を粉微塵にするかのように執拗に攻撃を加えている。もう見える範囲では原型を留めている人形はいないのだが、それでも破片に対して攻撃を止めない。

「落ち着け、ライム。予想外の動きで少々驚いただけだ」

 俺はそう言うとライムの頭を撫でてやる。後ろ向きなのでやりにくいが、今のライムの顔を見るのはちょっと怖い。俺が撫で始めると周囲に浮かんでいた玉がピタリと止まり、しばらくするとフッと消えた。

「申し訳ありません、お父様。少しばかり取り乱してしまいました」

「あれで少しか」という言葉を飲み込み、そのままライムの頭をナデナデする。

「いや、俺もこの手の気持ち悪いものは久しぶりだったからな、油断した。ま、お互い少し気が緩んでいたということにしておこう」

 しばらくそのまま撫でていると、いつもの調子に戻ったライムが俺の隣につく。やっぱり腕を抱きかかえるように引っ付くので少々歩き難い。でも腕に大変良いムニムニとした感触が広がるので良しとする。これで元通りだ。後はライムに「メンヘラ」や「ヤンデレ」の属性がないことを祈るばかりである。

「さて、目的の神器は……」

 さくっと見つけるために「検索」のカードを一枚使用。予想通りというべきか地下にあるようだ。ライムも大まかな位置しかわからなかったので、詳しい位置を言うなり「さす父」と俺を褒め称える。問題があるとすれば地下への入口がわからずウロウロしたことだ。

「しゃーねーな。『探知』も使うか」

 便利系カードは残っているとは言え、使用頻度が高めなものは節約したかった。地下への入口は案の定隠し扉の先にあった。暗い階段を降りようとしたところでライムが明かりを付けてくれる。光る玉がフヨフヨと俺の前に出ると、動きに合わせて進んでくれる。魔法って便利だよな。

「さて、どんな神器が待っているのやら」

 階段を下りながら俺がそう呟いた時、カードホルダーが突然光を放つ。それに負けじとライムも発光する玉を増やす。

(いや、増やさなくていいから!)

 一体何に対抗しているのかと思ったら、カードホルダーが開き一枚の光るカードが飛び出すと、進行方向へと真っ直ぐに飛んでいく。

「……なんだコレ?」

 光球まみれになって逆に視界が悪くなった状態もそうだが、カードホルダーから一体何が飛び出したというのか?

(……しまった! 奴か!?)

 慌ててホルダーの中身を確認すると、予想通りのものがなかった。

「ライム、急ぐぞ!」

 即座に反応したライムが俺の腰に手を回し飛ぶ。「ビュン」という効果音でもついてそうな速度に心臓が止まるかと思ったが――どうやら間に合ったようだ。

「動くな。貴様の好きにさせるつもりはない」

 光球が遅れてやって来ているので、まだ相手の姿を確認できていないが、予想はできている。俺はあの二度目の「リヴァイアたん」の中身が、かつてこの世界に召喚された異世界人だと当たりを付けていた。ならば、俺のカードホルダーから消えた「タイたん」もまたそうである可能性が高い。何よりも、神器が目の前にある状況ならば尚更だ。

「厄災」となり仲間の無念を晴らすために、一人生き続けたあの男は神器を探していた。その神器が「世界」を打倒するために必要であることは、先日知ったばかりである。ならば、ここで動くのも納得の行くタイミングだ。

 光が追いつき、地下室を照らしていくと神器を手にした者の姿がはっきりと映し出されていく。その姿は一言で言うと奇っ怪だった。

「……」

 目が合う。合ったのかはわからないが、多分合ってる。俺の前に現れた「タイたん」はタイたんではなく鯛たんだった。つまり、魚だ。マンボウみたいにデカイ鯛に無駄に筋肉質な手と足が生えており、その手にはしっかりとトライデントのような三叉の槍が握られている。

 恐らく敵意がないのか、ライムが特に警戒することなく静かに俺の胸に頭を擦り付けている。「何と声をかけるべきだろうか?」と無言のまま睨み合いが続く。というかこのままだと吹き出しそうだ。

「どうして……」

 魚の口が開き、無駄に格好良いバリトンボイスが聞こえてくる。

「どうしてこうなった……」

 鯛たんは槍を持ったまま顔を両手で顔を隠すが、目が横についているので隠すべき場所は全く隠れていなかった。


 あと、俺が聞きたいくらいだよ。

(´・ω・`)忘れていた現在(6-11)のカード



 銅のカード:可愛そうなくらい手が付けられていない。

 着火×22 流水×24 送風×37 石突×25 消毒×22 応急処置×13 念動×10


 銀のカード:便利系以外ほぼ全滅。

 解毒×20 鑑定×5 探知×18 遠見×19 盗聴×8 検索×20 マーキング×12 複製×5 遠話×17 読心×14 消音×9 転送×20 発勁×7 ビット×4 魅惑的なバナナの皮×1

進む:一×2 二×5 三×2 四×4 五×8 六×4

戻る:一×5 二×4 三×6 四×9 五×5 六×4 


 金のカード:可愛そうなほど使い切られている。

 透明化×5 開錠×7 千里眼×6 召喚×5 不運×2 ボッシュート×2 赤の獣×1


 白金のカード:残っていて欲しいものが尽く消えている。

蘇生×3 複製×2 剣聖化×1 疫病×2 変☆身×1 触手×1 元気玉×1 保存×1 タイたん×1

火属性:バースト×3

水属性:バースト×0

風属性:バースト×3

土属性:バースト×3

氷属性:バースト×4

雷属性:バースト×4


 黒のカード:コンテニューと祝福のみ。

 コンテニュー×1 祝福×1


(´・ω・`)書き忘れがあれば後々追加

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― 新着の感想 ―
[一言] >「どうしてこうなった……」 ホントこれ。これ以外に感想が思い浮かばんよ 鯛てw
[一言] 『どうしてこうなった』、か…… それは周囲の環境のことなのか過去の悲劇に思いを馳せての言葉なのか、或いは今現在の自らのキワモノな姿を指して言っているのだろうか…?
[気になる点] まだ開けていない白金の玉が1個有るはず。レヴィアたんの入っているはずの玉が。
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