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5-16:厄災の定義

(´・ω・`)ただいま。通院せずに済む日常が欲しい。


簡単なあらすじ

・宝物庫荒らしに帝都にきたよ

・ロイヤルガードぶっ倒したら皇帝きたよ

・皇帝が黒幕の元に案内してくれたよ

・黒幕が昔召喚された異世界人でなんか仲間扱いしてくるよ

・「世界」が元凶でその敵やってる異世界人。でも俺も無関係じゃないみたいだよ

・「世界」の領域が使われている神器・聖剣をポイントに変換したことがなんかやばいフラグっぽい

 まずい。非常にまずい。

 これまでの傾向からして『世界』の領域とやらを使っている聖剣をポイントに変換したことで、それが俺の強化に繋がるなどどいった良い方向に進むとは到底思えない。むしろ変換したことで何らかのデメリットか嫌なフラグが立ったと見るべきだ。

 考え得る限り最悪なのが神器を変換したことで「世界」の一部が俺の中にあること。そこから監視や誘導が行われているケース。これはまだマシな方だ。最もそうであって欲しくないケース…それは「世界」がいつでも俺を乗っ取れるケース。

「なあ…ちょっと聞きたいんだが、その『世界』の領域ってのがいまいちよくわからん。仮に俺がその領域とやらを持った場合…もしくは取り込んだ? 場合どういったことが起こると思う?」

 俺の質問にディバルは目をつむり考える素振りをしばし見せると口を開く。

「領域を持つ―その意味は一つしかない」

 言葉を一度区切り、判りにくいが真剣な表情になり続ける。

「それは『世界』に対する敵対以外の何物でもない。つまり『世界』から領域を切り離し、獲得した者がこう呼ばれる。厄災、と」

 言い終えると険しい顔つきが崩れる。俺はというとどうにかポーカーフェイスを崩すことなく乗り切った。

「もし君が領域を手にすることになったのなら、正真正銘のお仲間だな」

 そう言ってディバルは笑うが、洒落になっていないのでどう返したものかと何とも言えない表情になる。

「あまり『世界』に気取られるような行為はしないことだ。『世界』の目が現れれば最早猶予はないと思ってくれ。私の時と同じなら、君のこれまでの行動をまずはチェックするはずだ。その時間でスキルを構築し、自分の領域に干渉されないように処置する必要がある。でなければ…私のように隠れ続けることになる」

 ディバルは最後の部分だけ脅すような口調で忠告をすると、俺は息を呑む。目が現れればアウト、これはしっかりと覚えておく。

「その時があったら注意するが…具体的にどうすれば良いんだ? あと『目』というのは?」

 立て続けに質問をするが、嫌な顔一つせず答えてくれる。

「自分以外の例がなく確実なことは言えないが、私の場合は領域を獲得すると同時に理解した。どのようにすれば良いかはその時が来ればわかるだろう。『目』に関してはそのままだ。人の目が突如目の前に現れる」

 一目で判る、とディバルは締めくくる。目に関してはともかく、その時とやらが来ても大丈夫なように質問しているのだがこれでは少々不安になる。既に領域と無関係ではないと思われる為、可能な限りの情報が欲しい。答えに不満があったことを察したのかディバルはどう説明したものかと考え込む。

「例えば―尻尾を持った人間がいて、持たない人間が尻尾の動かし方を聞いたところでその感覚が解らないように、領域もまた持たない人間には理解出来ないものだ」

 解るような解らないような今一つピンとこないまま説明を終え、ディバルは喋りすぎたのかどこからともなくコップを取り出し中に入った水を飲む。一息付くと「まあ、こんなところか」と教えることは教えたという風に起こしていた体を横たえる。

「そうだな。情報が多すぎて正直全部理解したとは言い難い」

 それはすまなかったとディバルは笑う。内容が笑い事ではないものが含まれる為、笑い返す俺の顔は引きつっていただろう。

「こいつを届ければ良いんだな?」

 不安はあるが、もう一人の厄災から情報を得ることも出来る。むしろそちらが本命とも言える。ならばお使いをさっさと終わらせるのが吉である。

「そうだ。恐らく彼は人の住む場所にはいないだろう。となれば広大な魔族領土とされる土地を探す必要がある」

「魔族、なぁ…」

「便宜上、そのように呼ばれているだけだ。詳しく話した方良いか?」

「遠慮する」

 また長い話になりそうだと手を振り否定の意思を見せる。あれだけ話したのにまだ話し足りないのかディバルは残念そうに「そうか」と短く声を出す。それから「ああ、そうだ」と思い出したかのように話を変える。

「これから宝物庫に行くのであれば、マジックアイテムの類は遠慮なく持って行くといい。必要なものも幾つかあるだろう。あの土地は野生動物すら油断が出来ない。身を守る術は一つでも多く持っておいて損はない」

 その台詞セリフに「遠慮なんてするものか」と笑って返してやる。これで用は済んだと思い立ち上がろうとする。

「あ、一つだけ聞いておきたいことがある」

 ふと思いたしたことがあり、座り直すとある疑問をぶつけてみる。

「今この世界では大規模な食糧危機が起こっているみたいなんだが…何と言うか、不自然だ。皇族の連中から話を聞いていたんだが、それだけが理由じゃない気がする」

「その質問に、答えは必要かな?」

 俺の問いにそれはそれは嬉しそうな笑みを浮かべる。痩せ過ぎている所為でその顔は酷く不気味に映る。

「ああ…いや、うん。何となく解った」

 どこかでおかしいとは思っていた。技術と遺産の遺失を止められなかったとは言え、何故危機的とまで言える規模の食糧危機が起こるのか。いや、それ以前にそもそも本当に喪失は止められなかったのか?

(それ程までに『世界』が憎いか)

 理由があってのことかどうか聞く気はないが、憂さ晴らしにしては規模が大きい。俺は軽く息を吐くと立ち上がりディバルに背を向ける。

「また会おう。同胞よ」

「またな。協力者」

 そうして俺は振り返ることなくエレベーターへと乗り込んだ。




 突撃、隣の全財産。

 皇帝に案内を受けたのはディバリトエス帝国の宝物庫。大陸最大国家の資産である。一体如何程のものかと期待を胸に宝物庫に入った俺は首を傾げた。

「これが宝物庫?」

 ローレンタリアやシレンディに比べ明らかに部屋は広い。だがそこは予想していたものと異なりがらんとしていた。足を踏み出し近くにある棚の引き出しに手をかける。あるのは紙束。

「何かの記録…ああ、税の収支とかその辺のことが書かれているのか?」

 となるとこの周辺はハズレだろう。他の場所に移動し変換出来そうな貴金属を探すも見つからない。

(あ、これだけ整理されているんだったら目録とかあるはずだよな)

 探す手間を省く為、ここでカード「検索」を使用する。

「入り口か」

 しかもすぐに見える場所に置いてあった。手にとって見てみるとご丁寧に何処に何があるか細かく記録されており、非常に判り易い。

「…金がない?」

 さっと読み流して見たところ金や宝石が見当たらない。本当にここは宝物庫かと思ったが、マジックアイテムや美術品、貴重な資料などがあり宝が在ることには間違いない。仕方がないのでもう一枚「検索」のカードを使用すると別の場所に保管されていることが判った。

 仕方がないので宝石や貴金属が使われている美術品で一先ず我慢しようと、目録片手に宝物庫を歩き出した。それからしばらく歩きながら目についた金になりそうな物をポイントに変換する作業が続いた。

 流石に宝石が付いた物などは査定額が高く、数百、数千万ポイントになるものが多い。中には億単位のものもあった。流石は帝国、良いものを持っている。マジックアイテムも目録の説明を読む限り大したものではないようなので変換。むしろこっちがメインと言っても良いほど稼ぐことが出来た。

 問題は美術品である。ただ芸術的価値がある絵画などはほとんどポイントにならない。俺に見る目がないとでも言いたいのか?

 そんなこんなで長い時間をかけ、だだっ広い宝物庫の六割程を踏破したところでそれは起こった。

「マジか?」

 手に触れた指輪をポイントに変換しようとするが反応がない。価値がないものだったかと思い別の物を変換しようとしても反応がなくなった。

(変換には制限がある? だとしたら回数? それとも質量?)

 そこまで考えたところで思い出す。知識のオーブを使い自分のスキルを確認した際、確か一日に変換出来る質量に制限があったはずである。足しにはなるだろうと馬鹿でかいブロンズ像を幾つも変換したのは失敗だった。だがこれで変換出来る限界が何となく判ったということでよしとしよう。

 仕方なく残りは鞄の中に入る分だけ持っていくことにする。ただ既に魔法の鞄には余り余裕がなく、ポイントの為のものとなるとどれを持っていくべきか大変悩む。結局は無難な宝石の付いた装飾品を十点だけ鞄に入れ、宝物庫から出ることにした。

「もう良いのか?」

 宝物庫を出たところで、丁度こちらに向かってきていた皇帝から声をかけられる。その言葉に俺は頷くと直ぐにここを発つことを告げる。お飾りの皇帝の命令など知ったことかと動いている勢力が存在する以上、ここは安全であるとは言い難い。

 しかしながら明日まで待って残りを頂くのも捨て難い。収穫の結果、所持ポイントが1600億を越えたのでおおよそ700億ポイント変換したことになる。やはり金貨や金塊がないと数字が伸びない。どちらにしようかと悩んで出した結論がさっさと出ていく、である。日付が変わっていなければ何も悩む必要はなかったのだが、夜に襲撃をかけるのは鉄板である。過ぎたことを言っても仕方がない。

 何より現在のお使いクエストが終われば、ここに再び用ができる可能性が高い。そうでなくとも何時かはここに戻る必要が出て来るだろう。ならば次の機会でも問題はない、というのが決め手となった。

「我々に一体何の罪があるというのか。あの方は等しく我らを人形と呼ぶ」

 去ろうとした俺の背に皇帝が呟きかける。俺はその呟きを聞き流すと「それじゃ」とだけ言って皇帝の横を通り抜け立ち去る。人の目につかない場所まで来ると適当な影に入り移動を開始。そのまま転移妨害範囲の外まで行くつもりだったのだが、やはりというべきか影が途切れている上に城から離れると明かりがなくなる。

 仕方なしに影から出るとライムをリュックから呼び出し運んでもらうことにする。自分で動くよりかはずっと早い上に乗り心地はともかく楽なので、今後使う機会が増えそうな移動手段である。そのまま妨害装置の範囲外まで行くと「転移」のカードを一枚使い北へと向かう。

 目的地は魔族領土だが、まだまだ距離はある。夜明けまでにはまだまだ時間はあるので適当なところでテントを取り出し寝ることにする。何かあればライムが対処するか起こしてくれるだろうと欠伸を一つするとさっさと眠りにつく。

『あ、そう言えばあいつのスキルに付いて聞いてなかったな』

 流石に聞いたところで答えてはくれなかっただろうと、思い直し疲れた体に休息を与えた。




 翌朝、少し遅い時間に目を覚ました俺はテントから出ると大きく伸びをする。昨日は色んなことが有りすぎて頭も体も酷使してしまい、まだ疲れが残っている。とは言え、目的と目標があるのは悪くない。俺は日付が変わったにも関わらず回していないガチャを回す。

 その結果、アタリが一つも出てこなかった。金は三つでソード系二枚とグローブ。「鑑定」のカードを一枚を使うと「拳闘士のグローブ」と出た。紛うことなきハズレである。銀も十八と多くはなく、全体で見ると食品多めという内容である。

(メシが出るのは嬉しいけどさ…どうして鞄がいっぱいの時に出るんだよ)

 相変わらず間が悪い。一部を朝食にしたり色々と工夫をしてみたが、結局全て鞄の中に入れることは出来ず、使用していないガチャ産のアイテムを幾つか変換することにした。ポイントへの変換とGPへの変換の制限は別々になっているようで、地味に助かる仕様である。

 変換したGPだが、基本「役に立つかもしれない」と取っておいた銅から出たものばかりなので変化が微々たるものである。

 取り敢えずは再びポイント変換が出来るようにならなくては所持品の整理すらままならない。どの道帝国内で水や食料を多めに買い込む必要があるので、一先ず町を目指すことにする。幸いというべきか適当に転移した割には都合よく緑の多い場所にいる。影での移動には困らないのでさっさと休める場所へ向かおう。

 それからしばらく影の中を移動していたところ、昼を過ぎた辺りで腹が減る。影から出て昼食の為にお湯を沸かしつつ「遠見」のカードを使う。視点を上空へと移動させ、空から町を探してみるとすぐに見つかった。

「あ、結構行き過ぎてたか」

 そう呟くが周囲は見渡す限り平原である。影のない場所から向かう以上、多少戻ったところで意味はなく、ここから歩いてもあまり変わりはない。ついでに向かうべきルートを確認していると効果時間が切れ、ぐらぐらと沸騰しているお湯に目をやる。

 少々放置しすぎていたようで必要量に足りていない気がする。水を少し足し再び沸騰するのを待つ。ついでにライムにも適当な食材を鞄から取り出し、鞄の中を少し空ける。ライムはその質量からは考えられないほど食べることが出来るが、そこまでの量を食べる必要があるわけではない。

 強くなる為に食らっているだけであって、維持するだけなら大きさ相応の量を食べていれば事足りる。お湯をカップに注ぎ待つこと三分。豚骨ラーメンをフォークを使って食べる。量的には少し物足りないのでおにぎりも追加。炭水化物&炭水化物の背徳的な食事である。

 最近はカロリーの消費量も半端ではないのでこれくらいは問題ないはずである。ラーメンのスープで食べる飯のなんと罪深き美味さか。

(そう言えばラーメン頼むとシメにご飯が出て来る店あったな)

 確か学生時代に行ったと記憶しているが、今はどうなっているのだろうか、と残ったスープでおにぎりを完食した俺は満足そうに大きく息を吐いた。

 それから食事の休憩をしばらく取った後、町に向けて出発である。影での移動が出来ないのに距離は少々ある。歩くには遠すぎる上、自転車を使おうにも道がない。なのでここはライムにお任せである。下半身を粘体が取り込むと目的地へ向け大きくジャンプ。

「ああああぁぁぁぁぁあああ!」

 まるでジェットコースターと言わんばかりのスピード感に思わず悲鳴を上げる。加えて着地の衝撃こそないものの視界がぐるぐると揺れ気持ちが悪い。短時間走る程度であるなら問題はないがこの移動は激しく俺に悪い。

 二度目のジャンプで別の移動にしてくれと言い聞かせ、幾つか試してみたところ結局、馬に変身して乗るという形に落ち着いた。どうも安全面を考えて運ぶとなると、思いの外負担が大きいらしい。短時間なら問題はないが長時間となると難色を示す。会話が出来ればもっと詳しく判るのだが、出来ないことを言っても仕方がない。

 結局、一時間ほど変身を使い町へ近付いた後、正規の手順で入ることを避けるべく「透明化」のカードを使ったり影の中に入ったりと、思ったよりも時間を使ってしまった。それでも宿を確保した時にはまだ夕方になっておらず、買い物をする時間くらいはあったのだが前日の疲れが取れていないので明日に回すことにする。

 折角なのでライムとのスキンシップに時間を費やしていたところ、周囲から音がうるさいと苦情が来た。店主の方も「いつの間に連れ込んだ」という顔をしており、「うちは遊女の連れ込みは禁止だよ」と怒られてしまう。

「宿の選択を間違ったか…」

 そう呟くと何か出来ることはないかと考えてみたが、何も思い浮かばず疲れを取る為に早めに寝ることにした。日付が変われば鞄の整理も出来るようになる。明日から本気出せば良いだけだ。




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