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7-12:まったり道中

(´・ω・`)ただいま、また週一での更新となります。

 その日、ローレンタリアにとっては悪夢と呼べる時の到来となる。これまで如何なる侵攻をも阻んできた国の最大の防壁が突如として消え失せたのだ。恐らくは有史以来初めて他国の軍が王都へと侵入した事例となるだろう。昔のことは調べようとも思わないが、少なくとも今――これからこの国は滅びへと向かうことは間違いない。

「さて、取るものも取ったし……ここにはもう用はないな」

 壊れた豚を不細工なオブジェクトに変えた俺は取り囲む兵士らを適当に吹き飛ばし、宝物庫へと向かうとそこらにあるものを片っ端からポイントに変換。その後、中々凝った隠し方をされた扉を力業で発見し、そこを破壊して中に入ったところで目的の物を発見。それを手に入れた俺はそう言って宝物庫にある隠し扉から出ると、万一に備えて待機させていたライムが抱きついてくる。

「次はどちらに向かいますか?」

 ライムはそう囁くように尋ねるが、最早楽に手に入る神器はなく、これ以上を求めるとなれば、後は複数の神器を所持していると思われるディバルと、俺が一つお使いで渡したサフィヨスが相手となる。それがわかっているから「どちら」なのだ。当然先に向かうのはサフィヨス。残念ながら、あのコミュ障にはここで舞台から退場してもらう。そのための手札が俺にはある。

「当然あっちだ」

 俺がそう言って指差す方角は魔族領土を指し示す。黙って頷くライムの反応から選択としては正解だったと見える。またしばらく移動が中心となるので、手に入れた領域の使い道を本格的に考えても良いだろう。そんなわけで用済みとなったこの国からはさっさとおさらばしよう。そう思って堂々と城から脱出したわけなのだが……早速兵士による略奪が始まっている。

「士気崩壊ってレベルじゃねぇな」

 笑いながら金品を奪い合う兵士達の横を通り過ぎ、城門をくぐるとそこには既に帝国兵が目視できる距離まで近づいていた。今はまだ帝国をどうこうする時ではないので、ライムに抱えてもらい城壁の上まで飛ぶ。そのまま上昇してからでも良かったが、あまり目立つのもどうかと思い城壁の上から金の汎用カードから「転移」を実行。こうして俺は帝国兵と衝突することなく、王都からその姿を消すこととなった。




 舗装されていないただの悪路という名の街道を神器一号に乗ってガタゴトと走る。この先はもっと酷い悪路が待ち構えているので、今は燃料となる魔石の節約を考えてのこの形態である。余剰はまだ十分あると思うのだが、何分先の宝物庫での取得ポイントが少なすぎたことでどうにもケチってしまう。

(召喚には結構金がかかるようだったし、あれから何度もやっていたと考えれば国庫が空に近かったのも頷けるが……)

 それでも限度というものがある。宝物庫の物を全てポイントに変換しても100万にすら届かなかったのだから、最早誤差とすら言える範囲である。街で適当に商会を襲った方が儲かるレベルには苦笑する外なかった。そして次にポイントが手に入る場所となれば――帝国となる。つまりディバルと事を構えた後の話と見て良い。

 明確な決め手があるサフィヨスと違い、魔力ゼロの地下空間に引き籠る能力不明なディバルを相手にする場合、どれほどの出費となるかは想像ができない。それ故に少しでもポイントが欲しかったのだが……あの結果である。無意味に節約を心がけてしまうのは不安の表れと言ったところか。

「そうなると対ディバルを見据えての能力開発……だから相手の能力がわかってないんだよなぁ」

 思わずそう愚痴をこぼすと、ライムがお茶の差し入れをしてくれる。折角キッチンがあるのだから、と覚えさせたところ頻繁に持ってきてくれるようになった。後は飲む量で頻度を察してくれることを祈るのみである。直接言えれば良いのだが、ライムが可愛すぎて言うのは辛いのだ。

 猫耳バニーという人によっては「邪道だ!」と言われかねない姿のライムを侍らせ、サイズ故に頻繁に露出する胸元を正す姿に頬がつい緩む。出しっぱなしも大好物ではあるのだが、それでは有難味が薄れてしまう。青年誌のおっぱいよりも、少年誌に出てくるおっぱいに価値を見出してしまうのは致し方ないことでなのである。

「最悪は願いのオーブ頼りになるが……」

 肝心のポイントが足りていない。「領域」を使っての戦闘など消耗戦以外の何ものでもなく、不毛としか表現できない。おまけに削れた分がイデアに回収される公算が大きいことを考えれば最終手段としても最低な選択である。

「あと考えつくのが物理攻撃……レベルなんてないからなぁ……」

 ゲームのように「レベルを上げて物理で殴る」ができるならば良かったのだが、生憎とそんなシステムはなく、そもそも物理的な攻撃手段は厄災歴の長いディバルにどこまで通用するかも疑問である。考えれば考えるほど攻略が難しい相手である。いっそ順序を変えて帝国の財を全てポイントに変換してから願いのオーブを使用可能にし、万全を以て当たるのが良い気がしてくる。

(あれ? こっちの方が良くね? ディバルが守勢に回り動かないなら思う存分に帝国を荒らせる。出てくるようならライムの魔力をフル活用して戦える)

 問題があるとすれば帝国を荒らしすぎるとディバルを攻略した後が続かない。結局のところポイントを集めるには人形を使う方が効率が良い。そのシステムとして「国家」というのは大変都合が良いのだ。何せ目的達成には願いのオーブを大量に必要とする。そのためのポイントをどうやって入手するか、となれば答えは一つしかない。

(人形を働かせ搾取する。人海戦術が可能な範囲で数を残す必要があるから、帝国を荒廃させるのは避けたいんだよなぁ)

 どうしたものかと頭を悩ませているが、これと言った閃きもなくベッドの上でダラダラと時間だけが過ぎていく。仕方がないので気分転換にライムを手招きして各種マッサージを受けてリフレッシュする。凡そ3時間ほどかけてスッキリしたわけだが、改めて問題を並べて考えるも進展はなし。

 仕方がないので道中にゆっくり考えることにして、少し早いが夕食の準備に取り掛かる。今回は珍しく時間をかけて作ってみよう。

「今回は煮込み系の料理を作っていきたいと思います」

 キッチンでそう宣言し、隣にいる裸エプロンのライムが拍手する。取り出したるはこちら――デミグラスソースの缶。ガチャから出る調味料が地味にたまってきているので、少しずつでも消費していく必要があるので物は試しと料理をすることにした。当然作る料理は「煮込みハンバーグ」である。そうなるとハンバーグが必要になるのだが、レトルトのものは使わず手作りである。

(小学校の家庭科の授業で作った記憶と経験がある。今の俺ならば問題なく作れるはずだ)

 というわけで取り出したるは豚と牛の合い挽き肉。それもたっぷり600gと中々のボリュームである。そこに玉ねぎとパン粉、牛乳に卵も用意して準備は万全。

「ではライム。早速だが、この玉ねぎをみじん切りにしてくれ」

 言うが早いがチカチカと赤い光が点滅すると玉ねぎは細切れになってまな板の上から零れ落ちる。違う、そうじゃない。というか皮をまだ剥いてない。新しい玉ねぎを用意して手本を見せつつ「こんな風に微塵切りに」と注文したところ、それをライムが魔法で実演。これは楽ちん。風の魔法っぽいので衛生的にも多分大丈夫。

「次はこちらのパン粉を牛乳に浸します」

 ボウルに入ったパン粉が牛乳を吸い、それを見ていたライムが圧力を加えて攪拌。そこに生卵を加えた合い挽き肉も同様に魔法でこねこね。無事、ハンバーグのタネが出来上がった。「これでいいのだろうか?」という疑問が頭に浮かぶが、楽だったからまあいいか、と焼きにかかる。

「両面を焼きつつ蒸し焼きするという具合だから、ここは素直にフライパンで焼くぞ」

 ライムが魔法で短縮しないよう釘を刺しつつ、両面を焼き上げて完成したハンバーグをデミグラスソースが入った鍋に投入。4つのハンバーグを鍋に入れ、蓋をして静かに煮込む。待ち時間に食器の用意をしながらライムとスキンシップを取りつつ、サイドメニューをお取り寄せ。レンジでチンしたフライドポテトと野菜のコンソメスープをサクッと用意。

「うむ、完成」

 というわけで無事煮込みハンバーグの完成である。思いの外時間が潰せず予定より早い夕食となったしまった。最後にバケットを取り出し、いざ実食――思った以上に普通の出来でどうコメントして良いかわからない。

「うん、普通に美味いな」

 頷きながら食べるライムはバケットの食感がお気に召した様子であるが、肝心の煮込みハンバーグはどうだろうか?

「良いと思います」

 基本的に俺が出すもの作るもの全部肯定的な意見しか言わないので参考にならないのは残念だが、それでも黙々と口に運んでいる姿を見る限り口に合わないということはないだろう。そんな感じで食事を終え、洗い物を食器洗浄機に任せてベッドにダイブ。食休みを兼ねて領域ネットでローレンタリアの最期でも眺めようと思ったが、どうやら既に終わっていたらしく帝国兵が王城に既に入っていた。

 ちなみに豚は撤去済みだった。あの肉塊を一体どこに移動させたのやら、と検索機能で調べたところ、首を切り落とされて体は燃やされていた。確かに首があれば十分なので、他は邪魔になるからそうなるか、と納得。

 ついでに見たロレンシアの方はと言うと……どうやら次の王を巡って争いが始まっている模様。まず間違いなくあの髭は殺されて、その原因が俺ということになっているだろう。こいつらは本当に権力争いが好きだな、と「人間を模したこの結果」に苦笑する。

 その後は風呂に入り、泡塗れのライムを堪能した後ベッドで眠る。正直に言うと既に眠る必要はなくなっているのだが、この慣習は既に染みついており今更変えることは難しい。というか、惰眠を貪るという贅沢は恐らく生涯止められる気がしない。ベッドの質も日本時代を既に超えており「眠らない」という選択肢が端からない。少し早めの就寝となったが、それでも朝までぐっすり眠ることができた。やはり寝具の質は重要である。

 そんな訳で翌朝。実にいい気分で回した本日の100連ガチャはと言うと……


 銅×39 汎用カードとパンツと食料品に雑貨。

 銀×58 汎用カードと装備品

 金×3  汎用カードのみ


 という散々な結果だった。幾ら気分がよくていけそうな気がしていても、手元に「幸運」があるなら使うべきであるという良い教訓となった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おかえりなさい。 楽しみにしてます。
[一言] お待ちしておりました! 更新、楽しみにしています。
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