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もやし君は美少女に仮勇者と見立てられました

―誰もが高校の入学式となれば少しは胸を高鳴らせるものだろう。


かくいう俺、四夜御影よつやみかげもその一人だ。

中学時代、弱コミュ障の俺は周りに上手く馴染むことが出来ずに根暗な優等生というレッテルを貼られ、三年間を終えた。


当然部活も入っていなかったので今の俺が手にしているスペックといったら

・中の下の偏差値の中学校トップの学力

・モヤシな体力&メンタル

・身長

などなど…

他にも役に立つのか微妙なものなら数多く持っている。


だが!ここで!高校デビューをしてやる!

と典型的な“中学失敗した人”の抱く決意を胸に秘め、この来たるべき朝を迎えた。


なのに、だ。


「…んぅ…もうちょっと…」

何故か俺の布団の上にはすやすやと寝息を立てて眠っている可愛らしい美少女がいた。


ナンダコレ?神様は俺に学校へ行かせたくないのだろうか。

そうでもないとこんな仕打ちもとい美味しい思いなんてさせてくれない。


我ながらなんとも捻くれた考えだとは思ったが彼女いない歴=年齢の高校一年生に、この状況を何処かのラノベのハーレム主人公の如く、受け入れろというのが酷だと思う。

例えるならば汚い世の中を見て来た成人に今更サンタクロースを信じろというぐらい酷だ。


「どうしようか…」

すっかり起き上がる気力を削がれてしまった俺は深い溜め息を吐く。


『駄目だよ、みーくん!君は高校で生まれ変わって大規模ハーレムを作るつもりだったんだろう!?だったらこんな障害、乗り越えなきゃ!モヤシから大根に生まれ変わるんだ!』


『あんな背中から羊毛引っ提げてる偽善者に惑わされんなよ、ヘタレェ。

こんな美少女が手に入るんだったらもう学校なんか行かなくて良いじゃねえか!

学校の顔面競争力低い女共と戯れるより家でこの女と遊んでる方が幸せだとは思わねぇのかァ!!?』


必死に俺を諭してくる心の中の俺の天使と悪魔。

だけど初対面(ではないのかもしれないが)で人をモヤシやヘタレ扱いしてくる奴の意思に従うなんてお断りだ。

特に天使。みー君ってなんだ、モヤシから大根って人をなんだと思ってやがる。


という訳で全く役に立たなさそうな2人(?)は置いておくことにして、とりあえず女子の免疫力の低い俺は「ねぇ、大丈夫?」なんて優しく肩を揺すりながら、目を開けた美少女に王子様スマイルなんて浮かべることが出来ないため、女子というよりは腫物を扱うかのようにチョンチョンと彼女の肩をつつくことにした。


「ちょ…大丈夫ですかー?」


少女漫画に出てくる引っ込み思案系女の子もビックリの小さく震える声で訊ねる。


が、恐らく俺の声は届いていないんだろう。

溜め息混じりに俺は髪を掻き毟った。


美少女は死んでしまったかのように全く声に反応しない。

それどころか、ズリズリと上に這い上がってきて俺の腕を枕代わりに気持ち良さそうに眠り始めた。

もう処置なし、と俺は半ば諦めながらも先程よりはよっぽど近くなった彼女の耳に再度声掛けをしてみる。


「あのぉ…大丈夫…ですか?」


すると彼女の瞼がうっすらと開き、綺麗なコバルトブルーの瞳が俺の姿を捉えた。

最初は訳が分からないのかやや呆然とした顔で俺を見つめていたがしばらくすると


「……え…?…いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


と物凄い奇声を発し、そこらへんに転がっていた白いシーツ付きの薄く平べったい枕を引っ掴むとバシンバシンと俺に叩きつけてきた。


「やだっ!来ないで!ていうか死ねっ!この無礼者!!私の半径1㎞以内に近寄るなぁぁっっ!!!」


可愛い女の子に涙目で絶叫されながら真っ白く、しかし市販の安くて硬い鈍器で殴られ、ゴキブリやハエと同等かそれ以下の扱いを受けながら俺は本日何度目になるか分からない溜め息を吐いた。


随分と理不尽だと思う。

なんでったって自分から近寄って来た奴に、無礼者やらの罵詈雑言を吐かれなければならないのだろうか。


美少女だから少しのことは許してやろうなんて思っていたが、これは流石に酷いと思う。


「おい、お前なぁ…」


呆れながらしっかり彼女に社会の厳しさについて教えてやろう、要は叱ってやろうとじろりと睨むと

「煩い!黙りなさい!」

と逆に一喝されてしまった。

これも俺にコミュ力、特に女子との、が足りていない性だろう。


悲しいかな、男尊女卑の時代が終わり、妻に尻に敷かれる夫の如く、俺は美少女に煩くしませんので何故ここにいらっしゃるかお聞かせ願えませんか、と頭を下げるはめとなってしまった。


「いいわよ。」

意外にもあっさり承諾した彼女は可愛らしい人形のような顔に不敵な笑みを浮かべながら口を開く。


「私、人間界に逃げ込んだ魔王を討伐するために来たの。」

形の整った桜色の唇から紡ぎ出されたあり得ない言葉の数々に俺は目ん玉が飛び出そうになった。


「あのー...何かのジョークかなにかですか?」

「バカにしてるでしょ!まあ良いわ、貴方には勇者(仮)となってその魔王を倒してもらいます。拒否権はありません。」


突然現れた電波ちゃんによって俺は勇者にしたてあげられてしまった。

仮、らしいけども。

閲覧ありがとうございます。

更新亀ですがこんな感じで書いていこうと思いますので温かい目で見守っていただけると有り難いです。

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