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有馬和義
豪華な部屋の中、高そうなスーツを着た青年が笑いながら受話器を置いた。
「さて、行くとするか」男はどこかに出かけようとするが、扉の近くにいた女性に止められた。「どこ行くんですか、総理」「どこって…話聞いてた?昨日の女の子を連れてくんだよ」総理と呼ばれた男は笑顔のまま答えた。
「まだ、ご両親に許可をとってません」「そんなものは必要ない。医療ミスで死んだことにしろ」「なっ…!」女性は怒りで顔が赤くなった。「ははっ、冗談だよ。ついておいで」総理は女性の手を取り部屋を出た。
『ふふっ、和義さんはたまに子どもっぽい』女性がそんことを思ってるとはつゆ知らず、総理は女性を車に乗せ走らせた。
「どこ行くんですか、総理」「……」「和義さん」女性は恥ずかしそうに総理を名前で呼んだ。「吉野、照れるな」
「着いたぞ」総理はあるビルの駐車場に車を止めた。「…草太くんに会いに来たんですか?」「まあね…」