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佐久間雄介2
男が去ってからしばらくすると2人の男女がやってきた。男は体格が良いが女の方は弱々しい。「…あの御方が帰すのは明日、もしくは明後日になる。だから部屋を用意しろと仰っていたので部屋に案内します」女がそう云うと男は俺のところまで来て椅子を固定していた金具を外し、椅子ごと俺を連れて行った。
いつまで歩いてると聞きたくなるくらい歩いた頃、部屋についた。
「それではまたお昼頃、お食事を持ってくるときに」
「待て」
「…なんですか」
「昼飯を持ってくるまで俺はこのままの恰好でいろ…と」
「…そうなりますね。それが?」
「 何もすることがないなら本を読みたいのだが」
俺は今『なく子も黙る』と云う本を読んでいる途中だ。
「本…ですか。あの御方に聞いてみないと…。本の題名はなんと云うんですか?」
「『なく子も黙る』という本だ。それは上下巻あるから出来れば両方読みたい」
女は『あの御方』に聞きに走っていった。これで読めたら暇つぶしになるな。
…それにしてもこの部屋、この男…血の匂いが充満している。本当に帰してくれるのだろうか…不安になる。