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傭兵の暗躍

どこかで人気投票ができればと考え始める今日このごろです。

「…という訳で、『救世主』を捜索するため、更に本隊から数名の手を借りたいのですが…」

『そんなもの却下に決まっているだろう! 突っつかなければ良いものを、どうして防人の人間はそう死にたがるんだ!』

「放っておけば更なる大惨事を生むからと何度も申し上げた通りです! 再び鷺沼と同じ悲劇を繰り返すつもりなのですか!?」

 多くの人間が映った映像に囲まれている中、佐々木傭兵は怯む様子を一切見せずに白髪混じりの老人たちに吠えるように訴えた。

 全員、大和國の軍服を身にまとっているが、反論する老人たちからはそれ相応の威厳は微塵も感じられなかった。

 それも仕方のないことだろう。

 彼らが身にまとっている軍服は新品同様の輝きを見せているが、型で言ってしまえば十数年以上前のものである。中にはこれが軍人か、という疑問を抱いてしまうような丸々と肥った人間もいた。

つまり、前線に身を置いていない、ということである。

 更に言えば、鷺沼事件が起こった時も、増援を現地に送らず、事件後は『世界で唯一生存者を出した』という名誉だけを防人部隊の横からかっさらっただけである。

この中では若手(本隊に入隊してから五年以下の武人・神樂)に分類されるであろう傭兵のものでも既にくたびれており、所々に武具による裂け目、焦げ跡が隠しようもないほどついていた。

 この場にいる大半は彼をみすぼらしい、と評している。

 汚らしい恰好で軍議の場を設けたことに、ほとんどが嫌悪の情を抱いていた。

『まぁまぁ…ここは一つ落ち着いて…さて、我々は少佐の申し出通り、捜索隊は設けたはずだが…不満でもあるのかね?』

「あるに決まっているでしょうが! 最高責任者が自分であることは予想していましたが、隊員が二人だけとはどういうことですか! しかも、どちらも実戦経験のない上にこちらが気当たりしただけで逃げ出す始末のド素人…これでまともな捜索ができると思っているのですか!?」

『伸びしろのありそうな新人を送ったつもりだったのだが…』

「えぇ! そりゃあ育てれば伸びるでしょうね? 触ればすぐにでも折れそうなモヤシのようにね!? 少なくともあと五人…それも村上昴級の人間をこちらは必要としているんですよ!」

『天領期待のエース級、か…そんな人間がいればこちらに欲しいくらいだな』

「…! それはあなたがたが新人教育を怠った結果でしょうが!? 一度手合せさせてもらいましたが、どれも街の警備隊を少し上回る程度…どんな訓練をさせればそんな蒟蒻を育てられるかをお聞きしたい…」

『…そこまでにしておいてください、佐々木傭兵少佐殿』

 感情のまま更に叫ぼうとしたところを、静かな声が遮った。

 深く染み入るような、低い声だった。

 声のした画面へと視線を向ければ、そこには【音声のみ】という文字だけ映されていた。

『現在の位置の都合上顔を見せられない非礼を事前に詫びておきます』

「…いえ、その程度ならお気になさらず。ですが、何かの任務中であれば無理に答えなくてもよろしいかと…」

『その点は心配無用です。現在は目的地への移動中だけなので、このくらいの質疑応答なら可能です』

「ありがとうございます」

 顔は見えないが、傭兵は文字だけの画面に頭を下げた。

『…では、話を戻しますが、『救世主』の搜索には自分の部隊も取り掛かっていますが、少々末端の人間が多いので、傭兵少佐にはその溢れた者を指揮下に置いていただけないでしょうか?』

「!? 中将の…ですか!?」

『はい。とはいえ、それら全員才に恵まれていますが、如何せん自分の部隊での訓練・任務は厳しすぎると判断したので、しばらくの間預かっていただきたい、という意味合いも含まれていますが…如何でしょうか?』

「…数をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

『武人・八名、神樂・六名の計十四名です。現在のところ、村上昴級の実力は一人としていませんが、これがこちら側の精一杯で…』

「いえ、それでも充分すぎる程です! お力添えに頭が上がりません!」

 姿が見えないのにも関わらず、傭兵は平に頭を下げていた。

『こちらも、手が足りなかったので助力に感謝します。では、この場を持って神之木部隊平隊員計十四名を佐々木傭兵少佐及び佐々木鏡花大尉の指揮下に置きます。全員、既に天領に向かわせているので、到着は明後日になります。すぐにでも指令を出す場合は、端末に名簿と認証暗号を送ります……それでは、自分ももうしばらく騎行しなければならないので、ここで失礼します』

「は! ご武運を!」

 傭兵の言葉を聞くと、神之木は通信を切った。

 それと同時に傭兵はつながっていた通信を全て切った。

「…ま、まさか中将が出てくるとは思わなかった…」

 光の消えた部屋に、傭兵は腰を抜かした。

 全身は緊張から解放されたためか、疲れが一気に押し寄せ、彼はそのまま床で大の字に転がった。

「…だが、これで人数の問題は解決か…もう少し時間がかかると思ったが、嬉しい誤算だったな」

 言いながら彼は懐から端末を取り出して何やら操作を行なった。

「…早速で悪いが、来る途中の捜査を指示しておくか。到着は遅れても良いが…何かしらの情報があればすぐこちらに向かうように…と」

 暗闇の中、一つだけ灯る明かりが彼の顔を照らしていた。


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