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名甲・正宗

ようやく正宗の本格的戦闘開始です。

影継と要が白兵戦特化ならば、正宗と龍一は対大軍兵器といったところです。

 学内の到るところで混戦状態になっており、動員できる武人は学生であろうと武器を手にもって応戦していた。

 近接武器による鋼のぶつかり合う音。

 銃火器による火薬の破裂音。

 神技による釼甲の破砕音。

 応戦する生徒、学生の叫び声。

 ありとあらゆる音が学内を占めていた。

『チッ…! どれだけの数が襲いかかってきたんだ? 木偶の坊とはいえこう数が多いと…』

 その中で一騎、青い釼甲が複数体の敵機を切り伏せていた。

 相州五郎入道正宗とその仕手、獅童龍一だった。

 手には太刀が握られ、腰には銃身が長い得物。

《これで四つ! 全く…手応えが無いくせに数だけ多い! 勝手に集まってくるのが唯一の救いか?》

『だろうな…正宗、綾里の電磁欺瞞はまだ大丈夫か?』

《無論、俺の索敵機には引っかかっていない…しかし、急場でありながらも理論兵装を実現する上に決闘場全てを覆うとは…あの嬢ちゃんも只もので無いな…》

 正宗は感心したように零した。

 現在、龍一たちが守っているのは決闘場周辺であり、彼らの後方には避難した生徒が集まっているのだった。

 御影、椛、遥の立ち会いの下、釼甲を装甲した状態での訓練をしていたところ、騒ぎに気が付いたというわけである。決闘場は鋼の屋根が展開され、堅牢な城へと変わったが、何度も攻撃を喰らえば耐え切れずに破られてしまうだろう。

 ―如何なる堅牢な城塞も、怒涛の波が長年続けば脆いものである―

 敵襲を知ったとき、頭に浮かんだのは今亡き師の言葉だった。

 自身も身をもって経験しているがために、少しでもこの城の被害が少なくなるよう協力を求めたところ、御影が名乗り上げたのだった。

 ―電磁欺瞞―

 釼甲の索敵機は基本電磁的な波を発し、金属反応と熱源反応を探知するというものである。索敵可能範囲はかなり広く、性能の低いものでも数百メートル、高いものならば二キロが有効範囲である。

 業物は大抵精度と範囲の高いものが備えられているが、数物…特に今学内で確認されている全敵機は全て旧式の物が備えられているために少しでも障害があれば精度が格段に落ちるということが分かった。

 要の『理論兵装』を読破した御影によると、電磁場を展開することによって、探索波を『屈折』させ、生体反応、金属探査が出来ないように阻害する、という物だ。

 龍一は最初、不自然に守られている建物に何かしらの不信感を抱いて行動を起こすだろうと思っていたが、いざ外に出て戦闘をしてみれば、敵機は武人のいない無人釼甲だということがすぐに分かり、また、御影の電磁欺瞞も充分に効果を発揮しているのか、一騎として決闘場に攻撃を仕掛けることは無かった。

 結果、目に見える敵のみにぶつかっていくということもあって、龍一は向かってくる敵を切り捨てるだけでいい状態であるのだ。

《…話しているうちに団体様のお出ましだ! その数四つ! 敵機高度二千、集団で騎行している模様》

『…一つ一つ片付けているうちに増援が来ても面倒だ! 正宗!』

《諒解した!》

 正宗と意思を疎通すると、青い釼甲は向かってくる一隊に向けて左手をかざした。

《悪に裁きを義に福を!》

 言葉と共に左の手甲の下から銃口が現れた。

 直径にして十センチ…それはもう銃ではなく大砲の類だった。

『吼えろ、【青龍砲】!』

 地も揺るがすような大音量と共に砲身から黒の砲弾が飛び出した。

 世辞にも速いとは言えず、四騎も容易に砲弾を避けることが出来た。

『…やはり、仕手無しでは危険察知もできないか?』

 予想通りの行動に、龍一は鋼の仮面の下で笑った。

 その声と共に、弾丸が爆発した。

 爆風は四騎全てを飲み込み、再び大地を揺るがす。

 風が治まると四つの釼甲はガラクタへと変わり果て、無残に重力に吸い込まれていった。

《四丁上がり…っと》

『…しかし相変わらず使い勝手が悪いな…連発は出来ないうえに敵味方容赦無く巻き込む殲滅型兵器…お前を錬造した鍜治師はどこか壊れていたんじゃないか?』

 ガラクタの頭部らしき部分を踏み抜きながら龍一はぼやいた。

 破壊力は十分ではあるが、敵味方入り交じる混戦では恐らく使い物にならないだろう…そう思いながら自身の太刀を構え直した。

《否定はできないな。これに加えて他にも【神器】を備え付けているんだから…》

『一領あれば一国を相手に取れる…謳い文句に偽りなしか』

 自身の釼甲でありながら龍一は呆れ果てていた。

 これが戦国の時代に振るわれていれば、大和は別の未来を歩んでいたのかもしれない。

関ヶ原大戦を収めた英雄の釼甲になっていたのはこの正宗だったかもしれない。

 しかしそれも既に仮定の話。

 今は圧倒的数による暴力を討つ力が有ることに感謝するべきだと判断した。

《しかしこれで八騎か…主、この状況を打破するためには如何なる案が必要になると思う?》

『…当然、これらの雑兵を扱っている大元を叩きのめせれば上出来だが…今の状況でここを動くのは不安がある』

 空を見上げれば騎行している敵の釼甲が幾つか。

 敵の大将がどこにいるのか分からないこの状況下で、避難した生徒たちをおいて探しに行くのは得策ではない。かと言ってこのまま防衛を続けていても、いつかは御影の電磁欺瞞も『熱量欠乏』で使えなくなることも目に見えて明らかである。

『…要からの連絡は?』

《まだだ。先程から声をかけているが…距離が空いているために金声は届いていないのかもしれないな。簡易情報の伝達程度なら影継と出来たのだが…》

 つまりは合流できる可能性が限りなく低い状態である。

『仕方がない…』

 言いながら龍一は襲いかかる敵に向き直る。

『それまでの時間稼ぎと洒落込もうか!』


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