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忍び寄るもの

 時間は数十分程遡る。

 天領学園校門前に一つの影があった。

 銀色の服を身に纏い悠々と、堂々と学園へと歩み寄っていた。傍らに黄緑の牛の釼甲を連れていることから武人であることは誰の目から見ても明らかだったが、一つだけ異常な点があった。

 彼の後方にはいくつもの釼甲が自律形態で付いてきているのだった。

《止まれ、そこの少年!》

 さすがにこれを看過する訳にもいかず、学園の校門警護にあたっている警備員たちが彼を止めようと立ち塞がった。五人ほど集まり、全員が乙竜を装甲していた。

 そのうちの一人が代表して前に出たが、少年は一瞥しただけで歩みを止めるどころか緩めることすらしなかった。

《止まれと言っている! これ以上近寄れば…》

「そんなもので俺の首を取れるのかい?」

 警備の声を遮って、少年はようやく反応を示した。

 苛立ちにも似たような声で彼らを威嚇し、真っ直ぐに拳を天に突き上げた。

《|Je conbattre, donc je suis!(我戦う、故に我あり!)》

装甲の祝詞を唱えると、傍にいた牛の釼甲は光と共に砕け、次の瞬間には黄緑の鋼の武人がそこに居た。

 諸刃の大剣を腰に下げ、尋常では考えられないほどの装甲の厚さを持ち、遠目で見れば単なる鉄の塊だと思われても仕方のないような造型をしていた。

 身体を支える足は数センチ程沈み込んでおり、その圧倒的重量を証明していた。

《そして…全機・装甲展開!》

 少年の掛け声と共に後ろに控えていた釼甲が全て戦闘形態に変わった。

―仕手を持たずして―

《なっ…!? 仕手無しで装甲展開!? そんなことは今までどの国の釼甲も出来なかったことだ! ……お前は一体…》

《細けえことはいいんだよ! 第一部隊―突撃―》

 少年が五人を指さすと、十騎の釼甲が飛びかかってきた。

 甲竜、丙竜もあれば異国の元大英帝軍・北米合衆国制式採用釼甲も混じっており、様々な武具…剣は当然として、斧や槍が一斉に襲いかかってきた。

驚愕しながらも警備隊の人間は手分けをしつつ攻撃を受け止めた。

 どれも似たような動き…十騎が十騎、上段からの振り下ろしの攻撃であり、警備の人間…実戦経験の浅い彼らでもこれは容易に受け止められた。

 しかし受け止められればすぐに次の攻撃へと移り変わる。上がダメなら横から、という至極単純なものではあるが、それでも一斉に、それも同時に放たれれば充分な効果を発揮する。

《異国の釼甲も混じっている…!? そしてこの異常な釼甲の数は!?》

《今は気にしている暇はない! 口を動かしている暇があれば手を動かせ!》

《りょ、諒解!》

 それぞれが鍔迫り合いをし、攻撃を弾き、凌ぐも数が多過ぎる。

 数の力も、圧倒的多数には敵わない…そんな事実を突き付けられたように、五人は絶望を覚えていた。

《いや~…二倍の数相手に脱落者零か…これは少し予想外だったな…だが…》

 黄緑の武人がゆっくりと歩み寄ってきた。

《この中にはそれ以上の強者が居るんだろう? 楽しみで楽しみで仕方がねぇなぁ?!》

 圧倒的質量により地面は沈み、大音を響かせていた。

 喜びを表しているかのように、歩みが徐々に早まっていく。

 腰に下げた大剣を抜き払い、一歩、また一歩と近づいてくる。

 今の状況で精一杯だと言うのにも関わらず、この少年が戦闘に加われば…彼の全力は一切分からないが、纏う殺気から並大抵の人間が相手をしていては勝てないということは、警備隊一同が本能的に感じ取っていた。

五人は諦めていたが、彼の次の行動は予想外だった。

《全軍、この隙に天領学園へ侵掠せよ!》

 彼の合図と同時に残りの釼甲が一斉に天領学園へと押し寄せた。

 残されたのは最初の十騎だけで、それ以外の数十騎は全て学内に侵入していったのだった。

《…! 教師一同に緊急連絡! 校門を謎の一団に突破された! 数はおよそ四十…》

 隊長格らしき男性が金声を通して全校の職員に通達したが、それに一切構うことなく少年率いる一隊は進軍していく。

《|全軍進行(Go ahead)!》


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