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神羅装甲 影継  作者: 桑名 啓之
雌雄決戦
109/117

激戦 伍

 救世主大和拠点最深部。

 広く、整えられた場所に二騎の武人がいた。

『ようやく来たか』

 待ちわびていたかのような口調で、土色の釼甲を纏った武人が言った。

『……待たせた』

 装甲を鳴らしながら、山吹色の釼甲を纏った武人が答えた。

 神之木は今までとは違う、そして見覚えのある籐十朗の対応に僅かだが違和感を覚えていた。それを察してか、土色は静かに笑い始めた。

『……そっちからすればひと月ぶりらしいが、からすれば十四年ぶりだ。出来れば積もる話もしたいところだが……』

『……どういうことだ?』

 含みのある物言いに、神之木は疑問を口にせずにはいられなかった。

 以前刃を交えた時のような狂気は感じられない。それどころか、波一つたっていない湖面のような、酷く落ち着いた空気を纏っていた。

『時間が限られていることだし、結論から話しておこうか。三年前に神代五釼が一領・十握とつかの封が幾つか何者かの手によって解かれた』

《何だと!?》

 突然の、そして重大な報せに國綱がまっ先に反応した。

 大和國守の釼甲の中で、唯一【神殺しの霊剣】と呼ばれ、異色を放つ十握剣。

 あまりにも強力過ぎるが故に、その存在をいくつにも分けられて、それぞれを大和各所に封じていたのだった。悪用されぬよう、その所在は景斎でさえも知らされていない事実であるため、誰もが驚きを隠せないでいた。

『……随分と話が飛んだな? 何故いきなりそんな話を……』

『そして、十握はありとあらゆるものを奪い、操る能力を持つ。例えば、人格とか、だな』

 景斎の問い掛けをあえて無視して、籐十朗は言った。

《…………まさか!?》

 そこで、彼の言葉の意味を理解できたのか、美命が悲鳴に近い声を上げた。

『……相変わらず、聡明な女子だな、天城あまぎは。いや、今は神之木美命と呼んだほうが正解なのか?』

『……その予想で間違っていない』

『かはは、それは目出度い。遅れながらも祝辞を述べておこうか?』

『……つまり、お前は……』

『それ以上は言うな。俺も充分に理解できている』

 そう言ってひとしきり笑ったあと、土色の武人は十字槍を構えた。

『……だから、その平穏を守るために、すべきことは理解出来ているな? 俺の自我が残されている時間も限られている以上、自然好機も限られる』

 装甲の下からでも分かるほど、荒々しい息をし始める籐十朗は、そんな状況にありながらもどこか嬉しそうに、そして悲しそうな声をしていた。

『……重々承知』

 対する山吹色も太刀を構える。

 僅かに震えていた手を、一つ深呼吸するだけで決意したかのように鎮めた。

 問い質したいことは山のように積もっている。

 可能性があると分かっていれば、少しでもそれに賭けていたのかもしれない。

 だが、それも後の祭り。

《鬼丸國綱よ。貴殿の【見敵必殺】の呪いで、我が御堂に引導を渡してはくれまいか?》

《……諒解した。が、引導を渡す以上は全力でかかってこい。それが我らに出来る、貴殿らへの最大の手向けだ》

《十全だ》

 釼甲たちも、互いの主の意思を尊重する。

 ひと度疑えば、積み上げた《信》は容易く崩れる。

 それを戒めるためとして、鬼丸國綱には一つの呪いが施されている。

……【仇敵と見倣した人間が死すまで、留まらぬ】……

 後戻りを一切許されない。

 決断を最後まで断行させる。

 一度覚悟は決めた。

だから、彼は迷いを切り捨て、高々と名乗りを上げる。

『……大和國衛軍中将・神之木景斎。滅鬼を始動する!』

『大和國衛軍元少佐・今河籐十朗。手加減は無用!』

 名乗り上げると同時、二騎は飛火を噴かせ、交差した。

 ……ここに、人知れず親友同士の激闘が始まった。


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