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いつもの店で

「博多では飲むぞ」


土曜日の夜7時。立ち飲み屋にいた。

隣で50代くらいの男性二人が話をしている。


博多旅行の予定があるらしく、どんな店で飲むかを話している。一人は家が遠いのか、帰りの時間を気にしているようだ。


「このあとは近場で。明日、バーベキューなんで朝早いんですよ」


そう言った男性には家族がいるようで、家ではまた別の顔を持っているのだろう。もう一人には、どこか身軽な気配があった。


そんなことを考えながら、注文したしめ鯖を口に運んでビールで流し込む。

思わず、ため息か深呼吸か分からない深い呼吸をした。


ビールを飲み終え、ハイボールを注文。あわせて豚串カツとチューリップを追加した。最近は揚げ物を減らしてはいたが、ここでは解禁している。


ここまで広い立ち飲み屋は珍しい。真ん中が厨房で、それをぐるっとカウンターが囲む。土曜の夜にしては今日は人が少ない気もする。


この店の客のほとんどは一人か二人だ。客同士が会話をするような雰囲気もなく、ただひたすらに各々の時間を楽しんでいる。


「ありがとう」


厨房の真ん中で串カツを揚げ続けている店主が、会計を終えた客が帰るたびに大きめの声で言う。


ハイボールをもう一杯飲み、そろそろ次の店に向かおうと会計を終え、店を出ようとした。


「いつもありがとう」


いつもの「ありがとう」が「いつもありがとう」に変わっていた。

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