第7話「本当に?」
気まずい空間が続く。
雨の音がなければ、気まずい空間に静寂が加わり、さらに気まずさを加速させることだろう。
良かれと思って行った行動が余計なお世話だと振り払われた。
善の心だけでは人は救えないのか、そう思ってしまう。
彼女はただ前だけを見つめている。
こちらを振り向いてはくれないだろうと、そう思っていたが、それは違った。
「なんで、私に傘をさそうとしたの?」
その言葉は、振り払った時よりも優しく、単純な興味を示しているというのをよく表していた。
こちらを振り向いて、いつもと変わらない表情を浮かべている。
「少しでもいいから、レイの心の支えになれたらいいなって思ったんだよ。」
「なんで?私には心の支えはもうあるのに。雨が私のことを癒してくれる。」
「本当に?」
横からでも分かるほど、レイの目が開いた。
確信をつかれたかのような顔になり、鼓動が少し早まっているかのように見える。
膝の上にあった手はギュッと握りしめられていた。
「レイさ、雨が自分の心と似てるから、好きだって言ったよね。でも、本当は違うんじゃないかな。本当は辛いのに、それを雨で隠してるんじゃない?僕は、辛い時に雨を見てみたけど、少し心が安らぐのも分かる。自分と同じみたいで仲間がいるようで。でも、今は違った。レイのことをずっと思ってた。だから、お互いに支え合える人がいなかっただけなんだと思う。」
自分の思っていることをつい話してしまった。
やってしまったなと、彼女の方を見て顔色を伺おうとしたが、急に腕を掴まれる。
「ねぇ、私の頬、触って。」
「え?」
「いいから、手のひらで、触って。」
言われた通りに掴まれている手で彼女の頬を触ってみる。
雨が滴っていて冷たいが、なんだろう?少し暖かいものがあるような。
その答えを出すのに長い時間は要らなかった。
「ずっとこうなの。雨は、これを隠したかったの。心の支えっていうのはね、後付けみたいなもの。本当に雨は好きだけど、1番の理由はあなたに話したものじゃない。」
少ししか感じなかった手の中にあった温もりが少し大きくなったような気がした。




