第6話「余計なお世話」
自転車を止め、初めて会った時のように彼女の踊りを見つめていた。
踊りに夢中で、彼女は雨野に気が付かない。
しばらくすると雨野に気がついたようだ。
踊りをピタッとやめて、雨野の方へ歩いて来る。
「いつから見てたの?」
「5分くらい前から。」
「来てたなら…早く声かけてよ。」
最初は踊りを見られているという恥ずかしさから出た言葉なのだと雨野は思っていた。
けれども、昨日だって見ていたはず。
もしかしたら、自分に会いたかったのかな、なんてことを考えた。
「本当に来ると思わなかった。」
「なんで?」
「だって、こんな変なやつのところに来るなんて。」
「変じゃないよ。レイのダンス、すごく綺麗でさ、見たかったし、それに話したかったんだ。」
彼女は雨野の方を向いて驚いたような表情を見せた。
昨日と変わらないその顔は何度見ても飽きないような気がするほど可愛げと綺麗さを感じるものだった。
「そんなに私と?なんで?」
「自分はさ、毎日がつまらないし、すごく憂鬱なんだよ。学校ではクラスからハブられてるし。そんな中で似たような人と話して、少し心が温まったっていうかさ。」
「私なんかと話したって、なんもないよ。」
彼女が少しクスッと笑った。その顔は残念ながら見えなかった。
見たかったな。そう思っても覗き込むことなんてできない。
「レイは学校どこなの?」
「ここから駅で5駅ぐらい行ったところ。私もクラスのはみ出しもの。心が沈んでる時に歩いて歩いてこの場所を見つけたの。」
「心はまだ沈んでるんじゃないの?」と、そう聞いてみたかったが、心をエグってしまうかもしれないと思い、留まる。
だって、鬱みたいな状態がデフォになって、それが心地いいなんて絶対にないはず。
彼女の心に寄り添ってみたいという思いがあるが、まだ言葉では踏み入ることができなかった。
でも、行動では少し締めせるかもしれない。
そう思い、折り畳み傘を出して、彼女にさしてあげた。
だが、彼女はそれを振り払ってしまう。
「何するの?傘は私にとって余計なお世話だから。」
「ごめん…。」




