第3話「心の天気」
未だに雨は止むことを知らない。
水溜まりは段々と大きくなり、波紋同士がぶつかり合い、広がることができていない。
雨野は彼女の方を見るが、彼女はこちらを向いてはくれない。でも、話してはくれる。
「なんで、心が雨なの?」
「私ね、高校2年の時、人の嫌な部分をたくさん見たの。その程度って思われるかもしれないけど、ゴマすって一生引っ付いて他の人を見下したり、善人ぶった関係とか。それで、孤立していった。最初は別になんとも思わなかったけど、段々と寂しくなった。でね、こんな雨の日に傘をさして歩いてたら、傘をさしてるのになぜだか顔が濡れちゃって。どれだけ、心を1人で満たそうとしても心の中は雨だったみたい。その時から傘なんていらないって思ったの。」
状況は違えど、なんとなく辛さが分かるような気がした。
人の嫌な部分なら見てきた、少ないかもしれないが、それでも、心にヒビが入りそうになるくらいには。
「分かるとか、そんな簡単に言えない。でも、僕も今、心の中が雨とは行かなくても、曇ってるんだ。」
その時、初めて彼女がこちらを見てくれた。
髪の毛は濡れていて、顔にも雨が流れている。
その顔は同い年にしては幼くて丸くて、可愛げがあるものだった。
「私、雨の日にまたここに来ようと思ってるの。今のあなたに、雨の良さを強要することはできない。だから、また雨の日にここに来て、良ければだけど、私と話して欲しい。」
「いいよ。僕も寂しかったから。でも、雨の日にしか会えないの?」
「うん。雨が降ってない日には会いたくない。」
理由は分からなかったが、とりあえず了解した。
そして、自転車に乗ろうとして彼女にもう1つの質問を投げかける。
「名前、教えてくれない?」
「私のことは、レイって呼んで欲しい。」
少し自転車を走らせたあと、明日の天気が気になってスマホが濡れてしまうことも忘れて天気予報を確認してみる。
明日も雨だ。




