第2話「ずぶ濡れの少女」
雨野は公園の真ん中にいる少女を見つめていた。
真っ白なパーカーに身を包んで、ズボンはパーカーに隠れて見えない。
傘もささずに、ただその場で踊っている。
その光景に何故か釘付けになってしまっていたのだ。
しばらくすると、少女はこちらを見た。
驚いた表情を見せ、後退りをし始める。その時、何を思ったのか、口から言葉が出ていた。
「待って!君のダンス、すごく綺麗だった。」
少女は後退りをやめて、もう一度、雨野の方をじっと見つめてきた。
そして、公園にあったベンチに座り込んだ。
手招きをされて、雨野は彼女の隣に座る。何も話さない時間がすぎていく。
今感じるのは、自分の雨具にぶつかる大粒の雨の音だけ。それを除けば2人の静寂を邪魔するものは何も無かった。
2人の距離は近からず遠からず。
どちらから話をすればいいのか分からない、そんな雰囲気だ。気まずいような、雨のせいで気にならないような、そんな感じになっている。
「なんで、ここで踊ってたの?」
雨野が先に話しかけた。彼女は下を見つめたまま話し出す。
「ここじゃなくても良かった。ただ、誰もいないところで踊っていたかったの。雨の中で。」
「なんで、雨の中で?」
「雨が好きだから。私の心の中みたいで、最初は嫌だった、でも今はそれが心地よくなってる。だから、雨の中で踊ると自分が1人じゃないような気がして。」
「でも、そんなふうにしてたら風邪引いちゃうよ。」
「優しいんだね。大丈夫だよ。話しかけてくれてありがとう。普通こんな人見つけたらそんな事しないのに。」
心の中と同じ…
雨野は少し分かるような気がした。
自分だって今、心が晴れているとは言えなかったからだ。それでも、雨が好きになれるかと言われたら微妙だった。
「あなたは雨、好き?」
心の中を読まれたのかと思うほど、タイムリーな質問を投げかけられ、驚いてしまった。
「正直、そんなに好きじゃない。」
「いいのよ。そんなに気を使わなくたって。私だって最初はそうだったんだから。でもね、こうやって雨と1つになった時に、なぜだか今の暗い気持ちが心地よくなったの。」
「でもそれって…」
言いかける前に、彼女は立ち上がり、また踊り出した。
雨野はその姿をずっと見つめている。
なぜだか、ものすごく綺麗で儚くて、悲しい、そんな感じがするのだ。
しばらくして、またベンチに彼女が座る。
「君、何歳なの?」
「18よ。なぜ?」
「僕と同じだから。僕も18なんだ。」
何気ない会話だった。けれども、雨野はこの時、彼女のことをもっと知りたくなっていたのだ。




