第17話「オーラ」
雨の中、電車に揺られた。
乗客は少ししか乗っておらず、濡れてしまっている雨野は気にすることなく電車に乗ることができた。
もちろん、座りはしていない。
そして、レイの最寄り駅まで着いた。
またあのエレベーターの凹みの部分で2人で立ち止まる。
通りかかる人は数人いたが、気づかずに通り過ぎていくか、横手でチラッとこちらを見るだけだった。
2人は無言で見つめ合い、お互いの頬を手のひらで確かめ合う。
数十分前まで、雨野の頬には雨が降っていたのだが、すっかり今は晴れている。
「もう泣き止んだみたいだね。」
「だから、あれは…」
「そうだね。雨だね。」
ニコッと笑いながらレイは言った。
これはバレているなと確信していたのだ。
そのままキスをした。
レイの唇は変わらず柔らかくて少し甘いような気がしていた。
無意識に、雨野は腕を彼女の腰に回して抱きしめている。
そして初めて、キスをしている最中にめをあけてみた。
レイは目を閉じている。
気持ちは分かる、なぜだかキスをする時と言うのは目を閉じてしまうのだ。
開けようと思えば開けられる。
でも、開けようと思わなければ開かない。
レイの顔はまるで眠っているかのように優しい顔をしている。
目をつぶっているのに、とろけているような表情に雨野はドキドキした。
既にファーストキスは済ませているはずなのに、2回目なら慣れていると思っていたが、勘違いだったらしい。
10秒ぐらい唇を合わせていた気がする。
それでも、雨野にはとても長い時間に感じられ、その時間は幸せそのものだった気がしていた。
いつでも時間というのは残酷なもので、もう帰らなくてはならない時間になってしまっている。
時間が止まってくれって何度願ったことか。
また明日会えるまでの時間がとても、愛おしいのだ。
「もう雨もやんでるみたいだし、濡れずに帰れそうだね。」
「また明日も会いたいな。」
「私も。」
反対方向へ歩いて帰っていくレイの後ろ姿は何故だかいつもと違うオーラをしている気がした。
何か、自分がしてしまったのかもしれないと少し不安になる。
「レイ!」
彼女がこちらを振り向いた。
雨野を見る目はいつもと変わらない。
変わらず、優しい目だ。
「ありがとう。強がってたけど、泣いてたんだ。雨なんかじゃなくて、涙だったんだ。」
それを聞いて彼女は少し吹き出した。
「そんなこと分かってるよ。だって、フウちゃんのこと大好きだから。大好きだから…」
そうして2人は自分の帰る方向へと歩いていった。




