第13話「声」
家まで少しかかる。
その道のりは自転車で走っている時と同じで寂しい。
何ともない、大丈夫だ、いつもの帰り道じゃないか。
それなのになぜ今は辛かったのだろう。
彼女からの通話の誘いが来た時、ふと自分の心に気付かされたかのような衝撃が胸に響いた。
LINEの通話のボタンを押して、かかるのを待つ。
『あ、もしもし?ごめんね、帰ってる途中なのに、ワガママ言って。』
「いいんだよ。僕も声が聞きたかったんだ。」
『私の声?』
「そうだよ。いつも、帰る時は1人でずっと寂しかったみたいなんだ。レイから通話を誘われて気がついたんだよ。」
『私と同じみたいだね。寂しさに気がつくのって意外と自分以外の人からの刺激が必要なのかも。』
「この辺はあんまり、人通りがないから、毎日でも出来たら通話したい。」
『いいよ。私もフウちゃんの声を聞くと安心する。』
初めてだった。
こんなにも満たされる帰り道は。
通話がなければ、寂しいという気持ちが先走って、感情がどうなっていたのか分からないだろう。
そして、楽しみながら過ごす時間はそう長くは続かないという残酷さを学んだ。
いつもなら長い時間に感じる帰り道もあっという間に家に着いてしまうのだから。
「じゃあ、家に着いたから切るね。」
『うん、ありがとうね。また明日。』




