第12話「2回目の帰りの電車」
幸せな瞬間は長くは続かないものだ。
あんなにも美しくて、ロマンチックなキスをするとは思ってもなかった。
雨野のファーストキスはとても綺麗な思い出として頭の中に刻まれることだろう。
だが、今は帰りの電車に乗っている。
これから自分の家に帰るのだ。
もう少し一緒にいたい。
そう思っていても時間の流れは残酷なもので、止まってはくれない。
帰りの電車の席で1人揺られながら景色が通り過ぎていくのをただ眺めていた。
今日が雨だったのなら、窓に文字でもかけたのだろうか。
家に帰って、自分の部屋に行っても、窓には何も書けないだろう。
明日も会いたい。
電車の中で、メールを打ってみた。
『さっきはありがとう。また明日も会いたいな。』
それだけ打って、スマホを閉じた。
返信が来れば分かる。
すぐに返信が来て欲しいという思いと、帰ってからゆっくり話したいという思いが交差する。
行きの電車は2人で、帰りの電車は1人。
なんだか、少し寂しい気持ちになる。
彼女に会えるのは嬉しいことだが、ずっと一緒にいたいと思うからこそ、寂しい瞬間は必ず訪れてしまうものだ。
しばらくして、出発した駅に到着する。
ここから降りて、1人で家まで帰るのだ。
そんな時に、携帯の音が鳴った。
『こちらこそありがとう。今、まだ帰ってる途中かな?早いかもだけど、声が聞きたくなっちゃって…』




