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今日も生きているから、眠る前のひとときをあなたと過ごす【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/17

「おかえり、ソフィア」

寝室に入ると、夫であるレナード様がベッドボードを背に本を読んでいた。


「起きていらしたのですね」

「大切な奥さんを残して寝たりしないよ」

私が隣に行こうとすると、布団をめくって自分の脚の間をポンポンと叩いた。

「私の可愛い人、こっちにおいで」

微笑む夫に誘われるようにベッドに上がり、脚の隙間に入る。

背を預けるようにレナード様の胸に凭れ掛かると、緩く腰を抱かれた。

そのままもう片方の手で、髪を取られてキスが落ちてくる。


「何を読んでいらしたのですか?」

「君が最近読んだと言っていた小説だよ」

私とレナード様の膝の上に置かれた本を覗くと、確かに先週読み終わった小説だった。

「お仕事が忙しいのに、読んでくださったのですか?」

「君の好きなものは知りたいからね。それに、いい息抜きなんだよ」

「無理はなさらないでくださいね」

「それは私のセリフだよ、奥さん」

レナード様は本を閉じて、私の顔を覗き込んだ。


「今日は顔色がいいね」

髪から頬へと触れて、レナード様の手に包まれる。

そして顔が近づいてきて、頬擦りされる。

ホッと息を吐く夫を見て、胸がキュッとなる。

「最近は体調がいいんですよ」

「ああ、そのようだね。ただし無理は禁物だよ」

心配そうに揺れている瞳に見つめられて、私は曖昧に笑った。


結婚して4年、私は2年前に一度命を落としかけた。

寝たきりの日々が続き、女主人としてやらなくてはいけないことは、全部レナード様はサポートしてくれた。

それでもここ半年ほどは、庭で散歩もできているし、調子も戻ってきている。


この2年のことを思っていると、ふにっと頬を摘まれた。


「ふぇ…」

「いけない人だ。私が目の前にいるのに考え事なんて」

「あ、そういうわけじゃ」

「ソフィアが今私の腕の中にいてくれることが、何よりの喜びなんだよ?」


私の考えていることなんて、真心のある夫には全てお見通しなのだ。


ああ、私は本当に幸せ者ね。

この瞳が私を見つめていてくれる限り、私は大丈夫だ。

4年前も、そして2年前も、この人と生きていくと決めたのだから。


「私もレナード様と生きている今が、何よりも大切です」

私はレナード様の手に自分の手を重ねて、自然と笑みが零れていた。


「それならよかった。2人きりの時くらいは私のことだけ見ていてほしいからね。でないと妬けてしまうよ」

「まあ、レナード様ったら」

潤む瞳が近づいてきて、そっと唇が重なった。

何度もしていると息が上がって、思わず大きく空気を吸ったら、レナード様はパッと顔を離した。


「はは、私としたことが。夢中になってソフィアを困らせてしまったね」

「私、今日は元気ですよ」

「ふふふ、奥さんからの熱烈なお誘いは嬉しいものだね」

そう言って微笑むと、最後にもう一度だけ触れるだけのキスをされた。


「紳士は我慢ができるというものだよ」

パチンとウインクされて、思わず笑ってしまった時。


ばんばん!


寝室の扉が叩かれて、外からは大きな泣き声が聞こえた。

「あら」

私が体を起こすと優しく制されて、代わりにレナード様がベッドから降りていく。

扉が開かれると、泣きじゃくる2歳の天使が立っていた。


「うわああん」

「どうしたんだい、私たちの天使は」

愛おしそうに目を細めたレナード様は、ウィルを抱き抱えて頭を撫でた。


「か、かあたま」

ウィルは私を見つけるなり、レナード様の腕をすり抜けて私の胸に顔を埋めた。

「あらあら、どうしたの?」

「まったく、本当に私ソックリだな。すぐにソフィアを独り占めしようとする」

レナード様はくすくす笑うと、私ごとウィルをギュッと抱き締めた。

「…かあたま、いっしょ」

「はい、一緒にいますよ」

「なんだ、父様は入れてくれないのかいウィル」

「…とうたま、いっしょ?」

「なんで不服そうなのかな、我が天使はっ」

「きゃははっ、とうたま、いっしょーっ!」

「そうだろう、家族は3人一緒だよ」


「さ、今日は3人で寝ようか」

レナード様はウィルを真ん中にすると、横になった。

「いっしょ、ねる」

「そうだよ。さあ、もう寝る時間だ。おやすみ」

「おやすみなさい、ウィル」

「おやしゅみたない」


「…やっぱり、この子に弟か妹を作ってあげたいですね」

私はウィルの寝顔を見ながら、ぽそりと呟いた。

「ソフィア」

少し硬い声で呼ばれて、レナード様の方を向いた。

「君があの時、死ぬことなく頑張ってくれたから、私はウィルに会うことが出来たんだ。でも、また君を失いかけることはしたくない」

「レナード様…」

「私の命より大事なのは、ソフィアとウィルだよ」


その瞳に見つめられるから、私には勇気が湧いてくる。


「私もです。だから、もっと元気になります」

「ふふ、それがいい。君もゆっくりおやすみ」

ウィル越しにおでこにキスをされ、レナード様は寝顔のウィルにもキスを落とした。


「愛しているよ、ソフィア。ずっとそばにいてくれ」


大好きな旦那様の囁きと可愛い天使のぬくもりを感じながら、眠りにつくのだった。




お読みくださりありがとうございました! 毎日投稿48日目。

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