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第24話:仲間の覚悟

森の奥深く、四人は走り続けた。

騎士たちの声は、もう聞こえない。

 

「……ここなら、大丈夫そうね」

セリアが立ち止まった。

 

四人は木の陰に隠れた。

息を整える。

 

律の肩から、まだ血が滲んでいる。

 

「傷を見せて」

セリアが治療魔法をかける。

 

緑色の光が傷を包む。

痛みが引いていく。

 

「……ありがとうございます」

「これくらい当然よ」

 

エリシアが律を見た。

 

「先ほどは、ありがとうございました」

「え?」

「あなたは、私を守った」

 

エリシアは不思議そうな顔をしている。

 

「なぜですか?」

「……仲間だからです」

「仲間?」

「協力すると言ってくれたでしょう」

 

律は真剣な目で言った。

 

「なら、あなたは仲間です」

 

エリシアは黙った。

 

そして、小さく頷いた。

 

「……なるほど。理解しました」

 

セリアが言った。

 

「でも、これからどうするの?」

「どうするって?」

「王国は、私たちを追ってる。魔族と協力してるって知られたら、反逆者扱いよ」

 

ガルムが口を開いた。

 

「戻れない」

「え?」

「もう、王都には戻れない」

 

ガルムは剣を鞘に収めた。

 

「王国を敵に回した」

 

沈黙。

 

律は拳を握った。

 

「……すみません」

「謝るな」

 

ガルムは律を見た。

 

「お前は、正しい選択をした」

「でも――」

「でもじゃない」

 

ガルムは真剣な顔で言った。

 

「世界を救うために、魔族と協力する。間違ってない」

「ガルム……」

「王国が間違ってる」

 

ガルムは王都の方向を見た。

 

「感情で判断して、世界を滅ぼそうとしてる」

「……」

「それより、お前の判断の方が正しい」

 

ガルムは律の肩を叩いた。

 

「だから、俺はお前についていく」

 

律は目を見開いた。

 

「でも、王国と敵対したら――」

「問題ない」

 

ガルムは静かに言った。

 

「俺は元々、王国に忠誠なんてない」

「……」

「俺が守るのは、人だ。制度じゃない」

 

ガルムは拳を握った。

 

「お前は、人を救おうとしてる。世界を救おうとしてる」

 

ガルムは律を見た。

 

「なら、俺はお前を守る。それだけだ」

 

律は胸が熱くなった。

 

「……ありがとうございます」

「礼はいい」

 

セリアが笑った。

 

「ガルム、かっこいいじゃない」

「……照れるな」

「照れてないくせに」

 

セリアは律を見た。

 

「私も同じよ」

「セリア……」

「あんたについていく。王国が敵になろうと、世界が壊れようと」

 

セリアは笑った。

 

「だって、あんたがいないと、真実がわからないもの」

 

律は二人を見た。

 

ガルムの覚悟。

セリアの覚悟。

 

二人とも、律のために、王国を捨てた。

 

「……俺、みんなに迷惑ばかりかけてます」

「迷惑じゃないわよ」

 

セリアは律の頭を小突いた。

 

「迷惑だったら、最初からついてきてない」

「でも――」

「でもじゃない」

 

セリアは律の目を見た。

 

「あんたは、私たちが選んだ仲間」

 

セリアは笑った。

 

「だから、責任感じなくていいの」

 

エリシアが口を開いた。

 

「……興味深いですね」

「何が?」

「人類の絆」

 

エリシアは三人を見た。

 

「魔族には、この感覚がありません」

「絆?」

「ええ。合理性より、感情を優先する。損得より、仲間を選ぶ」

 

エリシアは首を傾げた。

 

「計算上は、非効率です」

「非効率かもしれないけど」

 

セリアが言った。

 

「これが、人間よ」

「なるほど……」

 

エリシアは考え込んだ。

 

「だから、人類は予測不能なんですね」

 

律は立ち上がった。

 

「みんな、ありがとうございます」

 

律は三人を見た。

 

「じゃあ、次の計画を立てましょう」

「次って?」

「世界を救う計画です」

 

律は考えを整理し始めた。

 

「まず、システム負荷を下げる必要があります」

「どうやって?」

「魔法使用の制限。ダンジョンの停止。人類と魔族の協力体制」

 

エリシアが頷いた。

 

「合理的です」

「でも、実行するには王国の協力が必要です」

「無理でしょうね」

 

セリアが言った。

 

「王国は、私たちを敵だと思ってる」

「……なら、王国を説得します」

「どうやって?」

「わかりません」

 

律は正直に答えた。

 

「でも、やるしかありません」

 

ガルムが言った。

 

「王を説得するのか?」

「はい」

「……難しいぞ」

「わかってます」

 

律は視界の端の文字を見た。

 

『同期開始まで:残り 21日』

 

21日。

 

「でも、時間がありません」

 

律は決意した顔で言った。

 

「王都に戻ります」

「律!」

 

セリアが反対した。

 

「捕まるわよ!」

「わかってます。でも――」

 

律は三人を見た。

 

「王を説得しないと、世界は救えません」

 

ガルムが言った。

 

「……なら、俺も行く」

「でも――」

「お前一人じゃ、死ぬ」

 

ガルムは盾を構えた。

 

「俺が守る」

 

セリアも頷いた。

 

「私も行くわ」

「危険です」

「危険じゃない場所なんて、もうないでしょ」

 

セリアは笑った。

 

「ここまで来たら、最後まで付き合うわよ」

 

エリシアが言った。

 

「私も同行します」

「エリシアさんも?」

「ええ。あなたを観察するのが、私の任務です」

 

エリシアは静かに言った。

 

「それに、王との交渉には、魔族の代表が必要でしょう」

 

律は三人を見た。

 

みんな、覚悟を決めている。

 

律のために。

世界のために。

 

「……ありがとうございます」

 

律は深く頭を下げた。

 

「みんな、本当にありがとうございます」

「だから、礼はいらないって」

 

セリアが笑った。

 

「さあ、行きましょ。王様を説得しに」

 

四人は立ち上がった。

 

森を抜け、王都へ。

 

危険だ。

捕まるかもしれない。

殺されるかもしれない。

 

だが、やるしかない。

 

世界を救うために。

 

「……行きましょう」

 

四人は、王都への道を歩き始めた。

 

歩きながら、ガルムが言った。

 

「律」

「何ですか?」

「お前は、いい指揮官だ」

 

ガルムは前を向いたまま言った。

 

「だから、生き延びろ」

「……はい」

「俺が守る。だから、お前は考えろ」

 

ガルムは静かに言った。

 

「世界を救う方法を」

 

律は頷いた。

 

視界の端に、文字が浮かぶ。

 

『同期開始まで:残り 21日』

『システム負荷:89%』

 

状況は、悪化している。

 

だが、仲間がいる。

 

ガルムの覚悟。

セリアの覚悟。

エリシアの協力。

 

一人じゃない。

 

だから、戦える。

 

世界を救うために。

自分を救うために。

 

「……必ず、成功させます」

 

律は呟いた。

 

四人は、朝日に向かって歩いていった。

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