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第15話 覚悟と決断



私たちは、短い間しか実家にいなかったはずなのに、不思議ととても長く感じていた。 実家では、母とのけんかと仲直り、幸助への真実の告白と結婚の誓い、そして幸助の立ち直りがあった。


電車の中で、私はふと思い出したように言った。


「ねえ、実家での二日間、すごく長く感じなかった?」


幸助は小さく笑う。


「あはは、確かにね。いろんなことがあった。でも、俺にとっては本当にいい二日間だったよ。加奈、ありがとう」


その言葉を聞きながら、私は思わず口元が緩んだ。実家で交わした、あの約束の話を切り出すつもりだったからだ。


「どういたしまして。……ところでさ、私たち、結婚するってことで話はついたのよね。月曜日に婚姻届、出しに行こ。いいでしょ?」


幸助は一瞬、目を丸くした。


「ちょっと待って、早すぎない? まだ心の準備が……」


私は肩をすくめて、わざと楽しそうに言った。


「どうしたの、幸助。あんなに私のこと愛してるって言ってたのに。結婚ってなると怖いの? ……そんなところも好きだけど」


「それは、ずるいよ」


困ったように言う幸助を見て、私は一歩だけ身を乗り出す。


「ずるくないよ。それに、早く結婚して示さないと。幸助は私のものだって。誰にも渡さないんだから」


幸助は何も言わず、ただ優しく私を見つめた。


「大丈夫。もう加奈以外なんて考えられない。俺には、加奈しか見えてない」


胸の奥が熱くなって、私は視線を逸らした。


「……じゃあ、早く結婚してよ。私のこと、大好きなんでしょ」


少し間を置いて、幸助は頷いた。


「いいよ。月曜日、婚姻届出しに行こう」


「もう……意地悪」


そう言った私のほうが、完全にしてやられていた。


そのとき、電車が幸助の降りる駅に滑り込んだ。


「じゃあね、加奈。また学校で」


「うん」


私は笑って手を振り、幸福を胸いっぱいに抱えたまま家路についた。


――その途中で、電話が鳴るまでは。


画面に表示された名前は、おばあちゃんだった。


「さっき会ったばかりなのに……?」


首をかしげながら電話に出る。


「どうしたの、おばあちゃん?」


少しの沈黙のあと、低い声が返ってきた。


「あんた、人の寿命が見えるかい?」


背中を冷たいものが走った。


「……どうして、そのことを知ってるの?」


息を詰めて聞き返すと、おばあちゃんはためらいもなく言った。


「だって、あんたのお母さんも同じ力を持ってたもの。だから、もしかしてって思ったのよ」


電話口で、おばあちゃんはくすりと笑った。


お母さんもその能力があるってどういうこと…

私は、思わず聞き返した。


「どういうこと、お母さんも私と同じ能力が見えるって…だって、お母さんには、そんな仕草なかった。少なくとも私が見る限り。」


おばあちゃんは、声色1つ変えずに答えた。


「たぶんお母さんは、あんたに隠していたんだよ。自分のお母さんが非常識ではいけないからと。」


私は、驚いた。

そして、怒りがわいた。


「なんで、なんで、お母さんは、幸助から私を引き離そうとしたの…時間がないなら、その恋路を応援するものでしょ…」


「そうだね、おばあちゃんもそうだと思う。でも、お母さんは、お父さんを、あなたが生まれてすぐなくしたでしょ、だから、その経験から、あなたも同じ経験をさせたくない、そう言ってた。」


おばあちゃんは、私に同情した。でも、母の気持ちも組んでほしいそんな風に聞こえた。


「わたしはね~あんたの気持ちが一番だと思う。でもね、お母さんのが、お父さんをなくしたときの失望も計り知れない。あんたが思うよりもずっと、だから、お母さんは、あなたを止めたんじゃないか。


おばあちゃんの声は、春風のようにやさしかった。


「もう一度お母さんと話してみなさい。あんたのお父さんを失ったとき、お母さんはどれほどつらかったのか…きっと、あんたにも同じことが起きる。その時、後悔のないようにするために、きっと役に立つよ。」


ああ、そうだな。

確かに、大丈夫だなんて言ったけど、本当のところ幸助が死んだら泣いてしまう。

怖い、死にたい、そんな心の声がででもおかしくない。

それなら…母が、どれほど苦しんだか、父を失ってどれほどの苦悩を抱えたのか、それを聞いたほうがいい。


その瞬間泣き出した。

やっぱり私は、幸助が死ぬという現実を受け入れられなかったのだ。

言葉では、大丈夫と言っていたけど。

おばあちゃんは、わたしの鳴き声を聞いて心配していた。


「大丈夫かい、嫌だったらもうこの話はしないよ。」


私は、母の話を聞くのが怖い。

でも、それでも私はこのことから逃げてはだめだ。

私は、覚悟を決めて、この言葉を口にした。


「変わってほしい。電話を。」


おばちゃんも覚悟を決めたようだった。


「わかった。いいんだね。」










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