第12話 真実(2)
第12話公開します
私は、幸助が去るまで呆然としていた。
ただ、幸助が見えなくなった時、
自然と涙があふれていた。
「なんで、幸助、そんなひどいこと言うの、夏祭りのあの言葉、そして、私が真実を言おうとしたとき、全て受け止める。あれは全てうそだったの…」
私は、幸助にも裏切られた。
もう誰も信じられない。
「ねえ幸助、あなたは私のこと好きじゃなかったの、いくら自分の寿命が短いとは言え…」
「なんで…幸助。あなたは私の運命の人ではなかったの、私のために全て捧げてくれるそんな人ではなかったの」
木が静かに揺れる。人の声もしない。ただ、私の鳴き声のみがこだまする。
私が、孤独であるそんなことを象徴するようにも見えた。
「神さま、ねえ、私は、彼のそばで一緒にいたかった。ただ、それだけなの…なのに、なんで、なんでそんな仕打ちをするの、あんまりだ。」
私は、泣きながら、自分の家へ帰ろうとしていた。
私が、歩いて5分くらいか、声が聞こえた。
雑木林の中から、若い男性の鳴き声が聞こえた。
その声は、私と同じ、絶望したような鳴き声。
うれし泣きなどではなかった。
ふと、私が、その男性に近づくと、その男性は見たことある人であった。
幸助だった。
幸助は、見たことないくらい泣いていた。
「そうだよね。そんなこと伝えたら、絶望するよね。
気も動転するよね」
幸助一人にしたほうがいい。
私が、去ろうとした。
そんなときにこんな声がした。
「加奈、会いたいよ。」
私は、足を止めた。
そして、自然と幸助の話に耳を傾けていた。
「俺が死んだあと、一人で泣く加奈を想像するのが……耐えられなかった。
だから嫌われた。
嫌われれば、忘れてもらえると思った。」
拳が、震えている
「これで、良かったんだ。加奈の幸せに俺は迷惑だ。でも…」
幸助の目から涙があふれだしそうだった。
「本当は、わがままを言うなら…」
「俺は…加奈と一緒にいたかった。」
私は、この言葉が聞こえたとたん。
幸助に飛びついていた。
「幸助!」
幸助は、困惑していた。
一瞬迷いが生じていた。
でも、すぐにその迷いは吹っ切れ加奈を引きはがそうとした。
「いっただろ加奈。俺は、お前のこと遊びでしか見ていない。だから、離れてくれ」
私は、幸助にしがみついたまま離れない。
「嘘、私、聞いてたから、幸助は、自分の死んだあと私が悲しむのに耐えられない。それで、あんなこといったんでしょ。でも、本当は、私のこと、私が幸助に思う気持ちくらい大きかった。そうでしょ!」
幸助は、それでも加奈を引き離そうとした。
「だからなんだ。そうだ、俺は、加奈が大好きだ。加奈のためだったら、どんなことでもできる。俺が去ったとき加奈が、絶望する。そんなの…嫌だろ。だから、加奈に嫌われた。わかったならさっさと離れろ。」
私は、それでも離れない。
「おい、うっとうしいぞ。気持ちが変わるだろ…離れてくれ。」
私は、幸助に対して怒った。
「幸助と付き合う時から、そんなことわかってたよ。幸助の寿命が短いことくらい。でも、それでも私は、幸助とそばにいたい。少ない命であってもそばにいたい。確かに幸助が死んだとき私は悲しむかもしれない。でも…でも、幸助のことをあまり知らないまま幸助が死んでしまう。それだけは耐えられないの…私にとってそれほど大きなものなの…
幸助は…」
私は続けていった。
「幸助といっしょにいたい。どんなにその時孤独でいたとしても。私は、こんなに愛せる人はもう生涯いないと思う。だから、死ぬまで私のそばにいて、それが私の幸せだから。」
幸助は、言葉を失った。
何かを言おうとして、喉がかすかに鳴る。
引き離そうとしていたはずの腕が、途中で止まった。
——違う。
それは、加奈の幸せのためなんかじゃない。
自分が、加奈を失うのが怖かっただけだ。
幸助はゆっくりと息を吸い、力が抜けたように、そのまま加奈を抱きしめた。
「加奈、ほんとにごめん。俺が悪かった。あんなひどいこと言って、加奈の幸せを決めてしまって、そして、俺も加奈と一緒にいたい。死ぬまで、ずっと一緒にいたい。加奈、好き、大好き、世界で一番好きだよ。」
私は、泣きながら言った。
「幸助、幸助…私怖かった。あなたが、真実を知って見捨ててしまうことほんとうに怖かった。だから、私をもっと愛して、私にひどいこと言った分だけ…。」
「加奈、本当にごめん。大丈夫もう迷わない。310日俺が加奈の前からいなくなるまで、他のカップルが一生分で伝えるくらいの愛を伝えるから。伝え切るから。」
私と幸助は見つめあった。
「加奈、好きだ。」
「ええ、私も…」
私たちは、キスをした。
雑木林が密集しているような殺風景。
キスには、絶対に向かない場所。
でも、そんな場所でさえ、幸助がいれば、そんな場所でさえ見えてしまう。
ロマンチックに。




