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浅井長政がやってきた  作者: 杉勝啓


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20/21

わがままなお嬢様

「翔太殿」

「やあ、長政さん、てっ、何?その頭、まるで落ち武者じゃん?」

「落ち武者か、理沙殿にも言われたな。わしはうぃ、、っぐっというものが苦手でな。まあ、この時代ではそうもいかんらしいから、人前ではかぶるがな」

「まあ、いいや、それでどうしたの?」

「うむ、翔太殿に話があってな。それと松風に会いにきた」

「よしよし、松風、よく眠れたか」

「ヒ、ヒーン♡」

「本当に、その馬、松風だっけ、本当に長政さんのことが好きなんだな」

「松風は仔馬の頃からわしが育てたからな。どんなに忙しくとも、毎日、身体を洗ってやり、食事の世話もかかしたことはない」

「ええ、長政さんって大名だったんだろう。そんなことするのかい」

「松風がわし以外の者に触れられるのを嫌がったからな。まあ、他の馬の世話は馬番たちに任せてたがな。それにしてもこの松風が翔太殿に触らせたと聞いて、多少、驚いた」

「ところで、馬場は使えるか」

「ああ、大丈夫だけど」

「よし、松風、駆けるか」

「ヒ、ヒーン♡」


長政は松風に乗りました。

ほう、この時代の、手綱や鐙はこうなっておるのか?まあ、だいたい同じだな。

長政は松風ひムチをくれると駆け出しました。

「はあ、早いな。競馬の騎手になればやっていけるんじゃねえ」

と、長政が持って来た本に目がとまりました。

経営学の本?まさか、長政さん、お嬢様の婚約者になるつもりなのか。翔太は本をとり読み始めました、


一方、長政の方は……

「ああ、いいな、やはりわけのわからん鉄の箱より、松風、お前の方がずっといい。もう少し走っていたいが、今日はここまでにするか」

「ひ、ヒン、グスッ」

「そう、残念がるな。これから身体を洗ってやるからな」

「ヒン、ヒン♡」


長政が手綱を、引いて戻ってきました。

「翔太殿、井戸は何処かな、松風を洗ってやりたいのだが」

「井戸って。水道が厩舎の側にあるよ」

「そうか。この時代はそんな便利な物があったな。よし、よし、松風、行くか」


長政、翔太、松風は厩舎の前に来ました。

「ほう、かなりの馬がいるな。それに、どれも毛並みがいい」

「ひん、ヒン、長政様ぁー」

松風は長政が他の馬を褒めたので、ちょっと拗ねたようです。

「よし、よし、松風、そなたはわしの特別だからな」

「ヒン、ヒン♡」

長政は松風を洗い始めました。松風は気持ちよさそうにしています。


「それで、長政さん、俺に話があったんじゃないの」

「そうだ。理沙殿のことなのだがな、帝王学の始めとして、まずは経営学を学べと言われた、それから、まなーとか身につけろとも言われた」

「で、まさか、長政さん、お嬢様の婚約者になる気なのかい?」

「まさか、だが、理沙殿は思ったよりしっかりした考えを持っているようだな」

「あの、わがままお嬢様が?」

「その、わがままにも理由があるとは思わんか」

「どういうこと?」

「理沙殿はあの小さな肩にこの家が経営する会社の従業員やその家族のことまで背負っているのだな。はじめはケバケバしい愚かな女だと思ったが違うようだ」

「理沙殿は彼女が背負っているものを一緒に背負ってくれる者が現れるまで、わがままなお嬢様でいなければならんのだろう」

「だから、わしは翔太殿を推薦しておいた」

「え?ええ~」

翔太は思わず大きな声をあげました。

「どうしたのだ。大きな声を出して。そんなに驚くことか」

「ああ、だって俺とお嬢様では身分が違う」

「身分?健太殿はこの世界にはないと言っていたが」

「健太殿って?」

 「葉子殿のご子息だ」

「いくつだい?」

「さあ、十歳ぐらいか」

「それなら、そう思ってるのも無理はないな。建て前上は身分なんかないさ。だけどね。貧富の差はあるし、親ガチャっていう言葉もある」

「親がか、、ち、」

「どのような親の元に生まれたかによっても人生が決められるということ」

「例えば、お嬢様のように人にかしづかれながら生きてる者もいれば、由佳さんのように、メイドとして働いてる者もいる。それでも俺や由佳さんは恵まれている方だ。世の中には木の皮を食って泥水をすすって生きてる奴もいるんだ」

「信じられんな。わしがこの世界に来て間もないが、そのような者に会ったことはない、葉子殿だってビンボーだと自分で言いながら暮らしぶりはわしの世界よりはるかに贅沢だ」

「まあ、信じられないんってなら、今度、見せに連れっててやるよ」

「それは、興味深い。ぜひ、頼む。だが、それはおいておいて、身分というなら、わしとて、この世界では身分も何もない男ではないか、それに理沙殿はそなたも婚約者候補に入れると言っておったぞ」

「な、なんで、お嬢様が?」

「理沙殿いわく、理沙殿の家を継いで、会社を経営するには、理沙殿のわがままを御するだけの男ではないとだめということらしい」

「はは、だめだ、だめだ。俺はあのお嬢様のようなじゃじゃ馬を乗りこなす自信がない」

「そうかな。松風に見込まれるほどのそなたならと思うのだがな」

長政は松風を撫でながら言いました。

「馬と人とは違う」

「では、理沙殿がお嬢様ではなく、普通の娘なら、どうかな」

「な、なんで、そんなこというんだよ」

「わしがみたところ、理沙殿と翔太殿は思い合っているように見えたのでな」

 「な、な、なんで、そんな風に見えるんだよ。俺はこの家の下男でしかないっていうのに」

「まあ、明日からはわしはそなたと一緒に経営学とやらの講義を教師について受けるらしい」







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