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浅井長政がやってきた  作者: 杉勝啓


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19/21

利害の一致

「………」

「え?なに?まじ、ほんとう?」

「ほんとうもなにも、わしは女といえば市しかしらん」

「じゃあ、そんなに市さんが大事ならなんで織田信長を裏切ったりしたのよ。市さんは織田信長の妹なんでしょ」

「わしとて、織田信長が越前の朝倉氏に攻め入らなければ敵対するつもりはなかった」

「なに?古くからの恩義があったから」

「それも多少はある?だが、何よりも敦賀の港をとられるわけにはいかなかった」

「敦賀?どういうこと?浅井長政が織田信長を裏切らった理由ってのをぐぐったけどそんなのはなかったわ」

「古来より、敦賀は外国との貿易で栄えてきた港だ。その貿易は巨万の富を生む」

「何?立派そうなことを言っていたけど。結局、欲ってことじゃないの?」

「そう言われてしまえば否定はできんが、言い訳をさせてもらえばそれも民のためだ」

「どういうこと?」

「確かに米などを作ってくれる者たちは国の要だ。しかし、それは天候などに左右される不安定なものでもある。そこで、飢饉がおこっても彼らの生活がなりたたぬかとわしは考えた。それが貿易だ。わが江北の商人たちは優秀でな。わしが外国から買い付けた香炉などの珍しい品を旅しながら売りさばき、その売りさばいた金を元にまたその土地で商品を仕入れて、それを売りさばいて帰ってくる。その儲けの何割かを納めてもらう。敦賀の貿易の儲けがあればこそ、朝倉殿はあの雪深い越前で小京都とまでいえるだけの国を作れたのだ。信長はそこに目をつけた」

「しかも信長が朝倉殿を攻めた大義名分も言いがかりに近いものでもあったしな」

「言いがかりって?」

「上洛して、足利義昭様に拝謁しろと、だが、越前は一向一揆と雪に悩まされている国だ。動きたくても動けんのだ。だから、朝倉殿は無視をするしかなかった。信長は百も承知で上洛命令を出したのだろう。それで義昭様に反意ありという大義名分を与えてしまった」

「そういうことなのね。わかったわ。話を聞いて、ますます、あんたを伴侶にしたくなったわ」

「だから、それはできぬと」

「でもね、私とあんたの利害は一致してると思わない?」

「利害?」

「私は優秀な伴侶が欲しい。あんたは元の世界に帰りたい。だけどタイムマシーンを作るのを援助するにしても、まずは先立つものがなければ話にならないわ。だから、あんたは私の伴侶になって私の会社を発展させて儲けさせなさい」

「いや、それは、別に理沙殿と結婚せずとも、わしがここで働けばいいのでは?」

「それが、そうもいかないのよね。面倒な親類がいるからね。とにかく彼らは私を適当な男と結婚させて傀儡にするつもりなのよ。そしたら、いい加減な経営をされて、私の家が経営する会社はつぶれてしまうわ。そうなると、困るのは従業員と家族よ」

「か、いしや?じゅう。ぎょういんとは?」

「まあ、いちいち、そこら辺説明するのは面倒だから、とにかく、これだけの本を読んで頭に入れて。まずは経営学から学んでもらうから」

「だから、理沙殿と結婚はできぬと。理沙殿の話によれば優秀な者ならわしでなくてもよかろう」

「今までも、何人かの男を婚約者候補にしたわ。でも、経営学を学ぶ時点でみんな音をあげたわ」

「それなら翔太殿はどうだ」

「な、なんでここで、翔太の名前が出てくるのよ」

「いや、翔太殿はなかなかの男だと思うがな」


二人間に沈黙が流れました。

しばらく後、理沙が言いました。

「ところで、いつまで裸でいるつもり、早く何か着なさいよ」

「ああ、そうだった。ところで理沙殿は裸の男と一緒でなんともないのか?」

「あんたの与太話を聞いてたら、そんなのどっかに行ったわよ。あんたも少しは隠しなさいよ」

「う…うん、すまん」



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