わしは市一筋じゃ
「うーん、市」
長政が眠気まなこで手首をつかみ、胸に抱き寄せたのは市ではありませんでした。
「り、理沙殿、す、すまぬ、まちがえた」
「いいわよ、それより、何、その頭、まるで落ち武者じゃない?」
「落ち武者って?仕方あるまい。こっちへきてから月代もそれんし、髷もゆえん」
「ああ、翔太から聞いたわ。なんでもあんた、戦国時代からタイムスリップしてきたって、で、叡山の焼き打ちを止めたいって?莫迦なの?」
「ば、莫迦とは。いくらなんでも」
「あんたのいう無辜の民っていうか、民衆が巻き添えにならなかった戦争なんてあると思っているの?それをタイムマシーンとやらですべて防ぐつもりなの?」
「それはそうかもしれんが叡山の焼き打ちは、私と朝倉殿が頼らなかったら、起きなかったはずだ、いわばわしが引き起こしたものだ」
「はい、はい、あ、あんた裸で寝てたの?とにかく何か着なさいよ」
「だが、着ていたものを脱いだら、他に着るものがくてな。それにあのぶ、りーふとかいうものは窮屈でかなわん」
「じゃあ、トランクスを用意するわ。それにクローゼットには何着か入っているから、今日はブリーフで我慢しなさい」
「とららんくす?くろうぜっと?」
「後でトランクスを買うように言っておくわ、ブリーフの代わりね」
「なら、ふんどしがいいのだが」
「わかったわよ。ふんどしね。そこを開けたら洋服が入っているから、サイズが合わないようなら直させるから」
理沙はクローゼットを指さしました、
ここに入っているのかと、長政は横に引こうとしましたが動きません。
「いい?ここをつまんで前に引っ張るのよ」
理沙が長政の近くにきた時、石鹸の香りがしました。
「いい匂いだ。昨日、風呂にあったせっ、けんとかいうものの匂いだな。昨日より、こっちの方がずっといい」
「な、何よ。早く着なさいよ」
「う、わかった。ところでてぃーしゃつとじーぱんはないのか?あれが軽くて動き安いのだが」
「だめよ。これからあんたには私の婚約者候補として帝王学を学んでもらうんだから。それなりの格好はしてよね」
「そのことなのだが、わしには市がいるし、理沙殿と結婚はできん」
「何言ってるのよ。あんたのこと、ちょっとぐぐったけど、奥様、市さんだったけ。ほかにも側室やら、愛妾もいて、子供も作ってんじゃない?何が市一筋よ。このむっつりスケベ」
「ぐぐるとは何だ?いや、それよりもわしは市以外の女を愛したことはないし、これからも愛するつもりなどない」




