愛馬 松風との再会
長政が連れてゆかれたのは豪奢な和洋折衷の屋敷でした。
「ここで、いいわ。降ろして」
「しかし、玄関まではかなり間がありますが」
「ええ、この男と話しながら行くから」
「かしこまりました」
そう、言って車を運転していた男は車庫に車を入れにいきました。
ずいぶんと大きな屋敷だな。下手をすると小谷城より広いのではないかなどと考えていると、馬が走ってきました。どうやら暴れ馬のようです。理沙に襲いかかろうとするのをとっさに長政は庇いました。そして、馬をなだめようと手綱を引こうとすると、馬がいきなり長政にじゃれてきたのです。
「な、なんだ?松風ではないか。なんでこんなところにいるのだ」
「ひ、ひーん。長政様ぁー」
なおも、馬は長政の顔を舐めたりしてじゃれついてきます。
「よせ、松風、くすぐったい」
「な、何?その馬、あんたの」
「ああ、松風はわしの愛馬だ。どうしてここに?」
「昨日、どこからともなく、迷い込んできたのよ。しかも、気性が荒くって、かろうじて触らせたのは下男の翔太ぐらいよ」
「ほう、松風が。その翔太とやらはなかなかのもののようだな」
「ただの下男よ」
「いや、松風の人をみる目は確かだぞ」
「お嬢様、申し訳ありません。その馬がいきなり暴れ出しまして」
「翔太、この馬の世話をちゃんとしなきゃだめじゃないの。人に危害をくわえたらどうするのよ」
「いや、松風は気性は荒いが人に危害を、加えたりわせぬ」
「何、言ってるのよ。さっき、私を襲ってきたじゃないの?」
「ふむ、松風、理沙殿の、何が気に入らなかったのだ」
「ああ、松風はわしを見つけて、それで、わしが理沙殿を嫌っているようだから襲いかかったのか」
「な、なんですって、あんた、私のこと、美しいとか言っていたくせに」
「確かに、美しいが市には及ばん」
「市、市って何よ」
「わしの妻だ」
「え、あんた、結婚していたの?」
「ああ、子供もいるぞ。今、市の腹にはもう一人いる」
「なんなのよ。もう。じゃあ、あなたの奥さん連れてきなさいよ」
「なぜ、市を連れて来ねばならんのだ。だいたい、わしはここで働くのではないのか」
「そうよ。あんたは私の婚約者候補なんだから」
「こ、婚約、そんな話はしらん。わしは市一筋じゃ」
「だから、その市さんとやらと話をつけてあげようと言ってるのよ。あんただって、私と結婚すれば私の家、財産すべてが入るのよ。地位も名誉も思いのままよ」
「そんなものはいらん」
松風も側でウンウンと頷いています。




