長政 人拐いになる
長政が洋次の後をついて、店内に入ると、そこはあまりにもキラキラしたやかましい場所でした。
な、なんなんだ、ここは目がチカチカする。それにざわざわとやかましい。
「あ、洋次さん、理沙さんから指名が入ってますよ、3番テーブルです」
「おう」
そのまま、洋次は指名客のテーブルにむかい、長政もその後に続きました。
「いらっしゃいませ」
「あ、洋次、待ちかねたわよ。あら、後の人は?」
「あ、今夜から入った新人です」
「ふうん、なかなかいい男じゃない?いいわ。入店祝いに一番高いボトル入れてあげる」
「ありがとうございます。ほら、お前も早く礼を言って」
洋次に小突かれ、長政は頭を下げました。
「シャイなのね。気に入ったわ。となりに座って」
理沙を挟んで、洋次と長政は座りました。
な、なんなんだ。この女は?ケバケバしい。それにこの匂いは何だ。臭い。
それは理沙がつけていた高級な香水の匂いだったのですが、長政には臭くてたまりませんでした。
「ねえ、貴方、名前は?」
「臭い!」
「え?」
「おい、女、ちょっと来い」
言うが早いか長政は理沙を肩に担いで、店を出てしまいました。
それは洋次や回りの従業員も呆気にとられていた出来事でした。その様子は、葉子にも知らされました。
「な、なんですって?洋次の太客を拐っていったですって?何やってんのよ。あの男」
と、そこで葉子の携帯が鳴りました。
「あ、健太?なんなの?え?あの男、うちにいるの?」
葉子は龍二と、ともに家にむかいました。家につくと健太が教えてくれました。
「おじちゃんが女の人を連れて来て、洗えって言って風呂にほりこんだんだ」
葉子は頭をかかえてしまいました。
「それで」
「おじちゃんに、洗わせるわけにはいかないから、僕が女の人に謝ってお風呂に入ってもらったよ。今は母ちゃんの、ちょっとはマシな服着てもらってる」
そこへ理沙が出てきました。
「一体、なんなのよ。あの男?」
「申し訳ありません」
葉子と龍二は二人して頭を下げました。
「で、あの男はどこ?」
「あれ、どこだろう」
と、話してると長政もやってきました。
「貴方ねえ、一体、どういうつもりよ。お客様は神さまなのよ。神さまにこんな真似をして」
「神さま?この女がか?」
「いいから、さっさと謝って」
葉子は長政の頭を押さえて下げさせました。
「あの、神さま、一言よろしいでしょうか?」
また、何を言い出すのやらと龍二と葉子はハラハラしだしました。
「神さまはそんなに美しいのにどうしてあのようにケバケバしく飾りたてていたのですか?」
「な、何を言ってるのよ」
「だって、こっちのほうが断然よいではないか」
褒められて、理沙は満更でもなくなってきました。
「いいわ。もう、でも、貴方、名前は?」
「浅井長政だ」
「そう、昔の武士みたいな名前ね。貴方、私の家に仕えなさい」
「えー」
葉子と龍二は顔を見合わせました。
「何か問題でも?」
「いえ」
「ちょっと、待て。わしは」
長政が何か言おうとしましたが葉子にさえぎられました。
「貴方に、拒否権はないわ。それに龍二の店で働くつもりだったんでしょ。それなら理沙さんのところで働いてもいいでしょ」
「決まりね。じゃあこれから家の者に迎えに来てもらうから。えっと、ここの住所は」
「あ、住所は」
葉子に住所を、聞いた理沙は葉子から携帯を借りて家の者に迎えに来るよう告げました。
「龍二の店に置いてきた私のバッグは、、」
「あ、後で家に届けさせます」
間もなく、理沙の家のものが迎え来て、長政は連れて行かれました。




