元の世界に戻りたい
「それで、お館様はこれからどうなさるおつもりで」
「早く元の世界に戻りたいが、その方法がわからぬ以上、その方法を見つけるまで、ここで生きていくしあるまい」
「しかし、この世界は我らの知っている世界とは違いすぎます」
「だから、まずは、この世界のことを学ぼうと思う」
「と、おっしゃいますと」
「昨日、我らに着物を持ってきた男がおろう」
「ああ、あの無礼な」
「葉子という娘、いや、あのような大きな子がいるのだから、娘というのはおかしいな。その葉子殿とあの男が話していたのだが、わしをあの男の店で雇ってもいいと申しておった」
「まさか、あの男に仕える気なのですか」
「ああ、この家でいつまでもやっかいになるのも気がひけるからな」
「では、某も一緒に」
「うむ。爺が一緒なら心強い」
「では、葉子殿が戻ってきたら、そのように話を。どのような仕事かは分かりませんが」
「ただいまー」
健太が帰ってきました。
「ああ、おじちゃんたち、まだいたんだ」
「すまぬ。たつきのめどが立ったら出ていくから。もうしばらくやっかいにならせてくれ」
「やだ、そんなつもりで言ったんじゃないよ。それよりこれを見てくれる。図書館で借りてきたんだ」
「と、しょ、、かん」
「ああ、おじちゃんたちの時代にはないのかあ」
そう言って健太が差し出したのは一冊の本でした。
「それは、、、」
「うん。歴史の本。僕が思うにおじちゃんたちは戦国時代から現在にきたんだと思うんだ。いわゆるタイムスリップってやつ」
「た、、いむ、、、、すりっぷ?」
「まあ、ここを見て」
健太が広げたのは歴史年表のページでした。
「ここが戦国時代、おじちゃんたちがいた時代。それから織田信長、豊臣秀吉の時代があって、結局、天下は徳川のものになって、徳川家の時代は200年以上続くんだけど」
「なんと、あの徳川殿だと」
長政は実直そうな家康の顔を浮かべました。そして、朝倉軍を打ち破ったかと思えば浅井軍に襲いかかってきた、その様を思い出しました。
「まあ、その徳川も外国からの圧力があったりして瓦解してしまうんだけどね」
「では、我らは400年以上も先の世にきたということか?」
「うん。多分、そうだと思うよ」
「400年も先の未来、、」
「で、もうひとつ考えられるのはパラレルワールドからおじちゃんたちがきたんじゃないかってこと」
「ぱ、ぱらぱら、、わーるど」
「うん、この世界では浅井家は滅びたということになっているけど、おじちゃんが昨日、言ったように織田信長がおじちゃんに殺される世界もあるってこと」
そこまで聞いて長政と直経は顔を、見合わせました。
「わしは死を覚悟しなければならぬと思っていたが、、そのぱらぱらなんとかいう世界からわしらがきたというのなら、やはり、早く元の世界に戻りたい」




