成長倍化(攻撃スキル)
「貴様をこの勇者パーティーから追放する!!!」
・・・ほーん。
「はいさ。ではこの契約書にサインを」
「はぁ?契約書?何のことだ?」
「俺との契約だったろ。スキルレベルを上げきるまでの」
「覚えていないな、そんな契約」
「あんたが覚えてなくても契約書はあるんだよ。ほれ、名前書いて金寄越せ」
「貴様なんだそのもの言いは!俺は所持スキルすべてカンストしている最強の勇者だぞ!」
そのカンストも俺のスキルのおかげだけどな。
ユニークスキル“成長倍化”。レアではあるものの一般スキルである“成長増加”は成長率に+nの補正を加えるが俺のスキルは違う。n倍の補正をかけるのだ。要するに通常の数倍の速度で成長できる。係数nはこのスキルが所持するポイントで振り分け、複数人に同時にスキル効果を与えられる。
「ちっ・・・仕方ない、紙をよこせ。・・・魔術師!」
「ほらよっと」
パッ、と火が上がる。炭になる契約紙。
「はっはっは!!燃えてしまったな!!!・・・さっさと消えろよ」
こんなこともあろうかと、というかさっき渡したのは複製紙だ。契約用紙は魔道具であり、原本から複製しそれに書き込むことで原本にもサインが現れる。だから再度原本から複製すればいいのだが・・・。もういい。
「はぁ・・・。もういいや、じゃあスキル解除。じゃあな。契約書はちゃんと読んだ方がいいぜ」
“成長倍化”。デメリット・・・経験値に倍率はかけられない。それともう一つ。スキル解除時、すべての成長率が0となる。あいつらはもう成長することはない。カンストしたスキルは当然、まだ上がりきっていないレベルも、細胞さえも、そのすべての成長率は0となる。遠くない未来、あいつらは死ぬ。本来の契約では“成長倍化”スキル解除後に“成長増加”で+1し成長率を元に戻すはずだった。
しかし一方的な契約不履行により後処理は無し。人体にはあまり詳しくないが中学理科で習ったように血液は幹細胞が細胞分裂後成長し血小板や赤血球となる。つまり血液はもう増えない。体の細胞は入れ替わり続ける。当然これも細胞分裂後成長することで入れ替わる。しかしスキルによって成長しない。いつ頃か、どういう風に死ぬかは知らんがまあ多分まともな死に方じゃないだろうな。いや、老衰みたいな死に方なのかな?まあ俺にはもう関係のない奴らなのでどうでもいい。
一週間後。
「うおおおおめっちゃ光るなにこれ蛍?ゲーミング俺?どうすんだよこれじゃあ女の子隣で寝れないじゃん」
どうやらレベルアップ時の光だったらしく数秒で光は収まった。何?なんで?
・・・あ、勇者パーティが死んだのか。そんで俺に経験値が入ってきたと。
・・・え、デメリットで死んでも俺に経験値入ってくんの?キルアシスト?
ちょっと想定外すぎたがまあレベルアップはいいことだ、うん。
そしてどうやら“成長倍化”のスキルレベルも上がったらしい。うん、“成長倍化”に“成長倍化”かけてたしな。お、新しい項目が増えてる。経験値に影響するようにならねえかなぁ。
“成長倍化”
対象:成長倍化(14)
剣術(5)
火魔法(5)
危機察知(6)
新機能:exp()
おおおお、expって経験値だよな!!じゃあ一旦成長倍化の14を全部ぶち込むか!
exp選択、成長倍化から14ぶち込む。よし!OK!
“成長倍化”
対象:成長倍化(exp(14「よし、魔物狩りだ」
「うおおおおおおおおめっちゃ光るナニコレナニコレレベルアップパねえええ」
ん?光が青色?青ってスキルレベル上昇の時じゃなかったか?
“成長倍化”
対象:成長倍化(exp(14))
剣術(5)
火魔法(5)
危機察知(6)
新機能:経験値倍化
・・・。
成長倍化(exp(14))。
新機能に経験値倍化。
「まさかな、まさか流石にユニークだからって」
エクスペリエンスじゃなくて、エクスポネンシャル?
えーっと?計算が面倒だ、ネイピア数を2として計算してみよう。ゆとり世代でもやらないだろこの簡略化。10乗で1024、2048、4096、8192、16384?いや絶対それどころじゃない。いや一万六千倍でもおかしいんだが。
当然“成長倍化”はカンスト。
試しに新機能、“経験値倍化”を対象にしてレベルアップで増えた倍増ポイント、今使っているものをすべて回収し“経験値倍化(exp(100))”にしてみる。今の俺の経験値は・・・。累計823752。勇者パーティごちそうさま。
スライム(経験値1)を探し、攻撃。
金色(レベルアップ時)の光に包まれる俺。すごい、宇宙最強レベルの戦闘民族みたいだ。
経験値は・・・。
総経験値:2688E40
こわれちゃった・・・。
当然レベルはカンスト・・・と思いきやしていなかった。経験値が足りていないのではない。“上限突破”なるスキルが生えていた。本来のレベルキャップの99など通り過ぎていた。
仕方がない。勇者を殺したのは俺だ。ならば勇者の使命である魔王討伐を引き継ぐべきだろう。
魔王、倒しに行きますか。大丈夫、最悪逃げることはできる。そして逃げることができるなら俺は勝てる。
“成長倍化”を魔王に使って解除すればいつか死ぬ。死因は知らないが。健康的な血球欠乏?分裂するだけして成長しないことによる死亡?それなんて死因になるんだろうな。
まあ、少なくとも相打ちには持っていけるか。
やあ魔王、成長したくない?
思い付きで書いてみました。
書き溜め中の連載作品も納得出来たら投稿したいです。