元聖女、身の振りを考える
教会を出た私はそのまま街の方へとやって来た。
「うわぁ~、人でいっぱい……」
私は人の多さに驚きの声をあげた。
外に出るのは年に数回だけだし基本的に移動は馬車だったので自分の足で立つのは孤児時代以来である。
「とりあえずは腹ごしらえよね、お金は貰ったし」
司祭様から退職金を頂いている、当面の生活には困らないだろう。
私は屋台で串焼きとジュースを購入し公園のベンチで食べた。
「あぁ~、久しぶりのお肉〜!! めっちゃ美味しい〜!!」
聖女の時は肉は禁止だったので久しぶりのお肉の味を堪能する。
慰問先で密かに出されたのをこっそりと食べた以来である。
(私には食事制限をさせていたのに神官長とかは肉やら酒やら食べているから理不尽だとは思っていたのよね)
漸く堂々と肉を食べる事が出来たんだからそこはクビになった事を感謝しよう。
「さて、これからどうしようかしら? 再び路上生活に戻るのもなんだからなぁ……」
お腹が満腹になったので改めてこれからについて考えよう。
このまま街で生活するのもいいけど仕事があるかどうか不安だ。
そもそも私が『元聖女』だというのは国民は知らない、素顔を見せた事が無いので信用はしてもらえない。
だとしたら街で就職先を見つけるのは難しい。
それに教会のお膝元なので関係者と顔を合わせる可能性もある。
それもなんだか嫌なのでいっその事、私の事を知らない所で1から出直すというのも手である。
「別に縛られる訳では無いから国内に留まる理由も無いし……、思いきって国を出ようかしら。 あ、でもパスが無いわね」
隣国に行くには身元を確認する為のパスが必要である。
「まずはパスを作らないといけないわね、役所に行けば作れるかしら」
私はパスを作成する為に役所に行く事にした。